たばこ規制枠組条約 Q&A     2005.6.28  「子どもに無煙環境を」推進協議会 作成
                        
(公用的な箇所以外は たばこ は タバコ とカタカナ表記しました) 

Q1  たばこ規制枠組条約が,2005年2月27日に発効 したとのことですが,条約の発効
        とは,どういうことで,発効するとどうなりますか?

Q2  
たばこ規制枠組条約は,なぜ作られることになったのでしょうか?
Q3  
日本政府は,この条約に,どのように対応したのでしょうか?
Q4  
受動喫煙防止は,条約発効でどう進むのでしょうか?
Q5  
パッケージの健康警告表示は,どうなっていくのでしょうか?
Q6  
広告・販売促進・スポンサーシップは,どうなるのでしょうか?
Q7  
未成年者の喫煙禁止対策は,どう進むのでしょうか?
Q8  
タバコ税率を引き上げる対策は,どうなるのでしょうか?
Q9  
禁煙支援サポートは,どうなりますか?
Q10 
たばこ対策センターが必要なのではないでしょうか?
Q11 
その他,条約に盛り込まれている内容はありますか? 今後はどう進みますか?
Q12 
条約は,国内法より上位(優位)の法規範なのでしょうか?


Q1  たばこ規制枠組条約
(条文リンクが,2005年2月27日に発効 したとのことですが,
    条約の発効とは,どういうことで,発効するとどうなりますか?

  A1   この条約は多数国間条約で,現在までに168の国が署名しています。このうち,40カ国
       が批准(ひじゅん)すれば,90日後に条約は有効になります。日本政府は,2004年3月
       9日に国連本部で条約に署名しました。96カ国目でした。
       署名後,国会の承認手続きが必要ですが,衆議院で,次いで参議院で,全会一致で承
       認され,同年6月8日に日本政府は,条約の受諾書を国連事務総長
に寄託しました
       19カ国目でした。これで批准したことになります。
       その後,同年11月29日に批准国は40となったので,90日後の2005年2月27日に発効
       することに決まったものです。
  参考:外務省広報
2005.2.25
              条約が発効すると,
条約に沿って,国内のタバコに関する法整備を進めていく必要があ
              ります。
Q3Q12を参照してください)


Q2  たばこ規制枠組条約は,なぜ作られることになったのでしょうか?

  A2   タバコは,吸う人だけでなく,周りで吸わされる人にも,さまざまに有害で,健康に悪いも
       のです。国や人が違っても,有害なことに変わりはありません。国際化が進み,多くの人
       が国
を行き来するようになり,タバコの害から人々の健康を守るためには,共通した対
       策が必要ですし,各国の内部事情で対策が遅れている国は,国際的な対策水準に引き
       あげることが国民の健康増進のために必要でもあります。

      ・特に,タバコが原因で死亡する人が,全世界で1年で四百万人にものぼり,このままでは
       30年後には1年で一千万人にもなるだろうと見積もられています。そしてタバコ産業が,
       国を越えて,各国(主に開発途上国)の,特に子どもや若い女性を標的にタバコを売り込
       み,タバコ消費量を増やしていこうとする動きがあるためです。

      ・条約第3条に,目的として「たばこの消費,及びたばこの煙にさらされることが,健康や社
       会に及ぼす破壊的な影響から,現在および将来の世代を保護すること」とあります。

      ・1998年に世界保健機関(WHO)の事務局長に選出されたグロ・ブルントラントさん(医師)
       が,Tobacco Free Initiative (TFI,たばこのない世界構想)を発表し,翌年1999年には
       WHOでは初めての画期的な国際保健条約として,本条約を提案しました。
       その後2000年5月の世界保健総会で,加盟国192カ国の全会一致でこの提案が採択さ
       れました。同年10月には,この条約づくりのための「公聴会」があり,日本からも,本会
       をはじめ,十数団体が賛同意見を述べました。

      ・その後,政府間交渉会議が6回にわたり開催されました。タバコ産業の反対や,タバコ生
       産国などの反対があったりで,交渉は難航し,当初の案からは後退した内容もありました
       が,2003年3月に条約内容は合意に至りました。そして同年5月の世界保健総会で全会
       一致で採択されました。
      ・たばこ規制枠組条約の英語は,
Framework Convention  on Tobacco Control 
    
    FCTC と略されています。(本会では,国際煙除条約 と呼ぶ提案をしています)


Q3  日本政府は,この条約に,どのように対応したのでしょうか?

  A3   日本は,タバコの健康への注意表示や広告規制は,タバコの製造・販売などとともに,財
       務省が「たばこ事業法」で所管(管理監督)しています。タバコ税も自動販売機の設置も財
       務省の所管です。一方,タバコの健康対策は,厚生労働省が所管しています。

      ・条約の所管は外務省です。外務省は,国民世論,タバコ業界,国会議員,財務省,厚生
       労働省など,健康と利害の複雑にからむこの条約の合意のために,調整に動かざるを得
       ませんでした。条約が発効すれば,タバコ対策のさまざまの整備,例えば,パッケージの
       健康注意(警告)表示,広告規制,自動販売機規制などを進めざるを得ません。
       (A12を参照ください

      ・日本政府は,条約発効の前に,少なくともこの3点は対策の手を打っておきたいと考えた
       ようです。警告表示,及び広告規制についての案をまとめ,パブリックコメントを募集し,
       聞き置くだけでしたが,原案のまま,広告規制の指針を,2004年3月8日に官報に掲載し,
       この翌日に,日本政府は条約に署名しました。自動販売機についても,2004年12月より
       新規自販機の設置許可基準を強める(店員が購入者を視認できる場所に自販機の設置
       を限定する)として,パブリックコメントを募集し,やはり聞き置くだけでしたが,条約発効
       を前に,一応のタバコ対策の国内整備はめどをつけたと,条約発効のためのWHO政府
       間作業部会で少し誇りにしているようです。
                                                        たばこ規制枠組条約の発効に至る経緯の年表 

      ・しかし,いずれ財務省所管の「たばこ事業法」の改廃は,避けられない課題ですし,包括
       的な「タバコ規制法」の制定も,喫緊の課題となっています。
       (A12を参照ください


Q4  受動喫煙防止は,条約発効でどう進むのでしょうか?

  A4   条約第4条の基本原則2(a)で,「たばこの煙にさらされることからすべての者を保護す
       るための措置をとる必要性」が掲げられ,
       条約第8条で,「受動喫煙が,死亡,疾病,及び障害を引き起こすことが,科学的証拠に
       より明白に証明されており……,屋内の職場,公共交通機関,屋内の公共の場所及び適
       当な場合には他の公共の場所における受動喫煙防止対策が必要である」とされています。

      ・日本では,健康増進法第25条で「受動喫煙防止」が努力義務として施行されました(2003
       年5月1日)。官公庁・学校・病院や公共の場の禁煙が急速に広がりつつあります。

      ・健康増進法(2003年5月1日施行)

         第五章 第二節 受動喫煙の防止
         
第二十五条
       学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官
       公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これら
       を利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他
       人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を
       講ずるように努めなければならない。

      ・今後は,
        (1)公道も含めることが必要(健康局長通知に含めることでも可能。交通機関は上記に
          入っていないが,局長通知には入っていて,ほぼ遵守されている)
        (2)職場は分煙でなく禁煙遵守が必要(職場のタバコ対策ガイドラインの改廃が必要)
        (3)レストラン等の不徹底の抜本是正が必要
        (4)保健所などに,レストランや理美容店,浴場などの受動喫煙防止の改善権限の付与
         (健康増進法には,所管する出先機関がない。都道府県・市の保健所の活用が有効)
        (5)努力規定でなく,義務規定にすることが必要
        (6)家庭の児童等(妊婦・胎児を含め)の受動喫煙防止の周知・啓発
       が至急に必要,などが課題と思われます。


Q5  パッケージの健康警告表示は,どうなっていくのでしょうか?

  A5   条約第11条で,「条約発効3年以内に,
        (1)複数の文言をローテーションで,大きく読みやすく,主たる表面の50%以上を占める
         べきであり30%以下では不可
        (2)絵・写真を含めることができる
        (3)虚偽・誤認させる表示等で販売を促進しないこと(規制としてライト・マイルドなど含め
         ることができる)
        (4)権限のある国内当局が承認する」
       となっています。

      ・日本では,2005年6月末までに,健康警告表示を新設し,8種類(2グループ各4種)の文
       を,各1種ずつを,両面の各30%の面積で入れる(たばこ事業法第39条による財務省
       令,2003.11.13),ことになりました。

      ・今後は,早い時期に,
        (1)両面の50%以上を占めるべきで
        (2)絵・写真を含める(ビジュアル化の義務づけ)
        (3)文言をより効果的な内容にすべき
        (4)禁止銘柄名にライト・マイルドなどを含める
       などが必要です。
             → 諸外国の警告表示例
(「タバコは美容の大敵!」サイト http://www.pat.hi-ho.ne.jp/ten250/biyou/tobacco.html 内)
                        タイ国の警告表示

                たばこに関する警告表示等各国別比較(健康ネットHPより)
            
  →  http://www.health-net.or.jp/tobacco/oversea/ov951000.html


Q6  広告・販売促進・スポンサーシップは,どうなるのでしょうか?

  A6   条約13条で,「条約発効5年以内に,憲法上の原則に従い,包括的な広告の禁止を行う。
       その状況にない国は,制限を課する。」となっています。(日本は後者)

      ・日本では,
        (1)電波媒体・インターネット,駅・公共交通機関,公共施設,屋外・ビルボード等,公共性
         の高い場所では行わない。
(たばこ店及び喫煙所におけるたばこ広告を除く)
        (2)新聞・雑誌は成人対象に限定し,日刊紙は各社1紙あたり年12回までかつ月3回まで
         とする。1面,最終面,テレビ番組面,スポーツ 面,家庭面,及び児童面には掲載して
         はならないこととされた。

        (3)スポンサーシップも成人対象に限定し放送はしない。
        (4)広告の中に注意文言3種類を表示する(15%の面積)。
        (5)ニコチン・タール量,及びライト・マイルド銘柄の場合その釈明説明を明記する。(たば
         こ事業法第40条による指針,及び日本たばこ協会の自主規準,2004.10.1より,一部時
         期例外あり)
       となっています。

      ・今後は,早い時期に
        (1)業界の自主規制では不十分。
        (2)新聞・雑誌も行わないようにすべき。
        (3)注意表示が15%では目立たない,50%以上とすべき。
        (4)絵や写真も義務づける。
        (5)自販機面と店頭の広告を禁止・制限すべき。
        (6)メディア番組(特にニュース・報道番組)のタバコ関連会社のスポンサーによるタバコ
         の健康報道自制をなくす。
        (7)NPO・法人などへのタバコ関連会社のスポンサーシップ(助成金)をなくす。
       などが必要です。      全面禁止の要請書


Q7  未成年者の喫煙禁止対策は,どう進むのでしょうか?

  A7-1  条約では,第16条で「未成年者喫煙禁止の措置を実施する。年齢証明の提示を求めるこ
       とができる。」とされています。

      ・日本では,未成年者喫煙禁止法の2000〜01年の改正で,
        (1)年齢の確認其の他の必要なる措置を講ずるものとす(四条)
        (2)未成年者への販売者には50万円以下の罰金(五条)
       が盛り込まれました。 → 未成年者喫煙禁止法の成立経過

      ・今後は,
        (1)第四条の「其の他」は,ステッカーなどの貼付でも可,とされているので,「其の他の
         必要なる措置」を削除し,年齢証明の提示を義務づける
         (成人識別機能付自販機[成人識別という呼称は間違いで,正確にはICカード式自
         販機]は,効果が疑われ,数百億円の浪費となる可能性が高いので,早期に中断す
         べき)  → 参考資料:第9回たばこ事業等分科会
(2005.3.29)
        
     導入中止の進言要請書
          (2)かつ未成年者が買える自販機は禁止すべき → 警察への告発例  財務省への要請例
          (3)段階的に,次項A7-2の自販機対策
          (4)ネットや通販によるタバコの販売は禁止徹底をすべき(年齢確認が出来ないので)
      が必要です。

     ・警察庁自身が,「自動販売機については,その成人識別その他の装置の性能にかかわら
      ず,将来的には,国民的な合意の下,撤去されることが望ましいと考えております。」と発
      言しています。

  A7-2 また,条約の同じく第16条では,自動販売機について,
        (1)未成年者に利用されない措置をとることができる
        (2)拘束力のある書面宣言により禁止を約束することを明らかにすることができる
       とされていますが,

      ・日本では,
        (1)全国に62万台余が稼働している
        (2)新設自販機は店員が視認できる場所に限定する(2004.12.1より)
        (3)既設自販機も,店員が視認できる場所に限定するよう改善指導する(2005.4月以降)
          (指導に従わないケースは,2006年度をめどに自販機の設置許可を取り消す方針)
       ので,今後は,

        (1)店舗の営業時間外の自販機の全面停止
        (2)上記の条約Aのように「書面宣言により,未成年者が買える自販機は全て禁止と
         すべき」です。
    停止・禁止の要請書

  A7-3 また,条約の同じく第16条で,未成年者への無料サンプル配布の禁止について,「未成
       年者への無料サンプル配布の禁止又は禁止を促進する」とされていて,

       ・日本では,成人に限定し,公共性の高い場所では行わない,との自主規制がありますが,
       今後は,成人への配布も禁止すべきです。

  A7-4  また,条約の同じく第16条では,「たばこ製品の形をした菓子,玩具等の製造・販売を禁止
      することができる」とされていますが,現在,タバコの形をしたチョコレートなど販売されてい
      るので,条約どおりとすべきです。
     ・同じく第16条で,「店の棚への陳列等たばこ製品に直接触れることのできる方法での販売
      を禁止すること」とされています。


Q8  タバコ税率を引き上げる対策は,どうなるのでしょうか?

  A8   条約第6条では,「価格及び課税措置が,特に年少者のたばこ消費を減少させるのに効
       果的,及び重要な手段である」とされています。

      ・現行のタバコ税率は約60%ですが,今後は,諸外国なみに税率を更に高くし
        (1)消費を減らすとともに(特に未成年者対策に有効)
        (2)税収の一部をタバコ対策費やタバコ耕作小売業の転作・転業支援に充当すべき
       です。 
    段階的大幅値上げの要請書    参考:タバコ値上げ賛成署名


Q9  禁煙支援サポートは,どうなりますか?

  A9   条約第14条では,「効果的なプログラムを立案・実施し,カウンセリングサービスを含め
       る」とされていますが,日本の現状は,禁煙支援外来・クリニック,プログラムなど行われ
       ていますので,

       ・今後は禁煙治療の健康保険が適用されるようにし,禁煙サポートを強化すべきです。


Q10  たばこ対策センターが必要なのではないでしょうか?

  A10   条約第5条では,「たばこ規制のプログラムと調整のための仕組み又は中央連絡先を
       確立・強化すべき」とされています。

      ・日本では,たばこ対策関係省庁連絡会議が2004年6月15日設置(厚生労働省,財務省
       が協力)され,2005年度には,タバコ対策専門官が配置され,また国立保健医療科学院
       にタバコ政策情報室の設置などが予定されています。

      ・より効果的な対策を進めるために,
        (1)内閣府に対策室を設け,警告表示や広告禁止権限等の移管,自販機禁止等を調整
         すべき
        (2)調査研究広報のナショナルセンターが必要
       です。


Q11  その他,条約に盛り込まれている内容はありますか? 今後はどう進みますか?

  A11   その他,全般的なことを含め,以下の内容が盛り込まれています。
         (1)免税タバコの販売の禁止または制限(第6条)
         (2)転業支援として(第17条),タバコの労働者,耕作者,販売業者のために,経済的
          に実行可能な,代替活動を促進する
         (3)タバコの密輸阻止のための協力(第15条)(別途議定書を作ることになる)
         (4)締約国は,この条約を越える措置をとることが奨励される(第2条)
         (5)市民社会の参加はこの条約の目的の達成に不可欠である(第4条)
         (6)定期的な報告を締約国会議に提出する(第21条)
          ・締約国会議の第1回会合は,条約発効後,1年以内にWHOが招集する。(第23条)
         (7)締約国は条約の改正を提案できる(第28条)
         (8)条約未署名等の国も,条約発効後,本条約に加盟できる(第36条)

       ・今後,日本政府に望まれることとして,以下が期待されます。
         (1)主要先進国の中で,日本は最初に批准したことは高く評価されるので,本条約を越
          える最大限の措置をとり,国際的にタバコの健康対策の最先端の見本となるべきで
          ある
         (2)国会・委員会や健康関係団体等での論議と意見交換を深めるべき


Q12  条約は,国内法より上位(優位)の法規範なのでしょうか?

  A12    日本国憲法では,第98条第2項で「日本国が締結した条約及び確立された国際法規 は,
           これを誠実に遵守することを必要とする。」と定めていて,一般的には,憲 法に次いで,
        条約は法律より優位とされているようですので,条約に沿って,国内
の タバコに関する法
           体系を整備していく必要があります。

       ・この条約優位の点からも,A3でも述べた,財務省所管の「たばこ事業法」を改廃し,包括
        的な「タバコ規制法」の制定は,いずれ避けられず,喫緊の課題となることは間違いありま
        せん。

       ・A3でお答えしたように,日本政府は,条約の発効を見越して,また2002年8月健康増
        進法が公布されたこともあって,2002年頃より,条約に合致するようタバコ対策の法整備
               を進めたようです。財務省が2002年10月に,財政制度等審議会たば
こ事業等分科会で,
               「喫煙と健康の問題等に関する中間報告(部会報告)」を承認し,それまではタバコの害
               に否定的だったものを方向転換し,タバコの害を認めたのは,この動きの一環であったと
        思われます。A3で述べた,パッケージの健康警告表示,広告 規制,自動販売機規制
        などを進めざるを得なかったのも,条約の優位性,条約との整合性を,日本政府は判断し
        た結果だと思われます。
     

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 たばこ規制枠組条約の資料関係リンク

  たばこ規制枠組条約・発効にあたっての本会メッセージ 2005.2.27  重点要請 2005.2.27

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