23 回「タバコはやめよう(201011年)コンクールの審査講評

1.紙芝居・絵本の部

 今回、31点の作品が寄せられ、ほぼ全ての作品に審査員で目を通し、審査を進めましたが、絵がきれいに描かれている作品が少なくなかったものの、ストーリーの展開が、オリジナルでない、ユニークさに欠ける、「タバコはやめよう、吸わないで」のコンクールの趣旨に添っていない、などで、誠に残念ではありますが、入選(優秀賞)としては1点のみにならざるを得ませんでした。またストーリーはそれなりに面白いものの、デザイン・絵柄が紙芝居・絵本は一定水準の仕上がりが必要ですが、達していない作品は入選に至りませんでした。作品をお寄せいただいた方々には誠に申し訳ないのですが…

 優秀賞に選定された作品(おばあちゃんの願い)は色彩や絵の構図もしっかりとし丁寧で人目を引きつけるものの、ストーリー展開にダイナミックさ、オリジナル性がもう少しあれば、などで、優秀賞とさせていただきました。(野上浩志)

 

2.ポスターの部

 公共的施設や病院、学校、交通機関など多くの所で、禁煙が実施され、無煙環境が広がり、社会的改善が進んでいます。この推進活動の一端を担うために企画された第23回「子どもの周りに無煙環境を」ポスターコンクールには、3,000点近くの作品が寄せられました。

審査会では、「タバコはやめよう、吸わないで」をテーマに、「タバコの害・迷惑を表現している、タバコを吸わないことを訴える、明るく、シンプルでわかりやすい、ユニークでアピール力がある」などの観点から、高校生〜一般、中学生、小学生、幼児に分けて審査しました。審査員6人による投票方式で、一次、二次、三次審査を行いました。

最終審査では、各年齢層の上位作品を並べ、訴える力や色・形の明快さ、ユニークで、優しさのある作品として、最優秀賞作品は、埼玉県朝霞市の高校二年生の「吸わないで(吸う大人の前で子ども・赤ちゃん・お母さんがいるデザイン)」の作品が選ばれ、この他に入選作品二十点余を選定しました。

 審査で感じたことは、今回も、個性的でユニーク、表情豊かで動きあふれたもの、あるいは、優しい表現の作品が数多くあり、審査に少々の時間を要しました。ただ、ポスターとしては人々の目を引き、心に訴える力が大切で、そのために明確な字体や色調がとても必要です。学校や画塾などで制作される場合は、そういった面で少々の“指導“あれば…と思われました。

 これら入賞した作品が、啓発ポスターなどのデザインに活用され、あるいは展示され、ネットでも広報活用され、多くの人の目に触れ、無煙環境の輪が広がり、社会的改善に役立てられることを期待しています。(丹羽善二、薮田修一)

 

3.マークの部

毎回見られることですが、今回もコピー(文字による説明や標語)に頼らず、図柄だけのひと目でアピールした作品が極めて数少なかったのは残念です。大半の作品に“NO”や「ダメ」といった禁止を意味する言葉や、喫煙が原因の疾病名が書き添えられていました。

応募総数は295点で、一次選定、二次選定で18点の中から審査員が投票を行い、神奈川県相模原市の男性の作品(NO、タバコを煙の手で上から折っているデザイン)を最優秀賞に選びました。この作品にもタバコの煙に“NO”の文字が添えられていました。図柄だけで無煙環境を描くために、一旦頭の中から文字による思考を追い出して、夢を見ているように、あるいは無心に映像だけを思い描く訓練をしてみてはいかがでしょうか。(山田 彬)

 

4.標語・川柳・漢字熟語の部

今回の応募総数8,348点には家族を思う標語が目立ちました。東日本大震災後、巷間様々な面でいわれてきた「人との絆」への意識が強くなった表れかもしれません。それは親、伴侶、孫、祖父母のみならず、未だ見ぬ将来の伴侶への喫煙拒否にまで及んでいました。

選考経緯は、応募総数のうち、まず一次選定された48作品を審査員が第二次審査で15点に絞り、それらを審査員全員で慎重に検討した結果、最優秀賞に和歌山市の女性の作品「禁煙で 家族と体が 嬉しそう」が選ばれました。ともすればストレートに教訓的・道徳的な臭いのしがちな標語にあって、冷静かつ客観的で、従来にない新鮮な表現「嬉しそう」が好感を持たれたものです。

欲を言えば、社会の無煙環境づくりを目指すコンクールだけに、喫煙を社会的な視点で厳しく断罪する作品があっても良いかと思います。大事には到らなかったものの、審査会の数日前には、大阪地下鉄の駅でタバコから小火騒ぎがありました。喫煙は周囲の人に対する健康面の配慮はもちろん大切なことですが、間違えば犯罪にすらなり得る行為なのです。(山田 彬)