第12回コンクールの審査講評
1.絵本・紙芝居 2.ポスター
 絵本・紙芝居コンクールは8回目ですが,良い作品が集まりました。「タバコの害や迷惑」をなくす啓発趣旨や,ユニークさ,アピール力などの審査基準で審査しました。最終審査のポイントになったのは,ユニークさです。厚生大臣賞となった作品は,動物たちが登場するストーリーで,タバコの迷惑をうまく表現して選ばれました。文部大臣賞は,残念ながら該当なしでしたが,候補作品はタバコを吸ってしまう場面があって惜しくも見送らざるを得ませんでした。他の作品もユニークで工夫をこらし,いずれも面白く読めました。今回コミックも募集しましたが,中学生の合作で楽しい内容のものが入選しました。これらの作品は何らかの形で発刊したいと考えていて,楽しみにしています。  前回はポスター部門のコンクールは見送ったため,今回の応募は例年より少なくはありましたが,全国から水準の高い多くの力作が寄せられました。「タバコは20歳から」や「吸いすぎに注意」のコピーは,「タバコを吸わない・吸わされない健康生活」をめざす本啓発趣旨からはずれています。ポスターだけではありませんが,最終審査のポイントになったのは,ユニークさです。テーマが限定されていますので,表現やコピーの切り口の新鮮さが評価を分けました。タバコの煙を嫌がったり,迷惑の表情が,目を×や>・<にする描き方が多く見られますが,マンネリ化して一律的な表現ですので,もう少し工夫した表情の豊かさが望まれます。今回は,厚生大臣賞以外に,文部大臣賞の授与がありますので,上位の作品の中から,厚生省と文部省の審査員が,各々の観点から協議し,他の審査員の意見や上記を参考に,最優秀を決めました。素晴らしい作品が上位を占め,次回の啓発ポスターやカレンダーのデザインに活用するのが楽しみです。
3.マーク 4.標語・川柳
 マークは象徴性が高くデザイン処理のテクニックが要求される分野だけに、作品差が大きいのが実情です。しかし、デザインの完成度にとらわれず、アイデアにもポイントをおいて審査しています。デザイン処理は未熟ながら自由な発想がひかる微笑ましい作品もありましたし、説得力ある制作コンセプトを添えた、プロのグラフィックデザイナーによるレベルの高い作品には、思わず唸ってしまいました。結果として、文部大臣賞・厚生大臣賞ともに、NOやSTOPをイメージする“立てた手の平”をモチーフにしたもので、そこに新しい感覚がうかがえる作品が選ばれました。文部大臣賞は中学1年生らしい躍動感とユーモラスな味わいがあり、厚生大臣賞は赤ちゃんの泣き叫ぶ顔と相まって強烈にNOが伝わってきます。動物のうさぎをモチーフに、その耳と顔の表情でNOを表現した作品も素晴らしく、高得点を獲得したのですが、アピール力がやや弱く次位となりました。   気持ちをストレートに表わしたインパクトのある子どもたちの作品をはじめ、日ごろの生活や個人的体験など背景が彷彿とする説得力ある作品、レトリックに凝った面白くてユニークな作品など、数多くの素晴らしい作品が寄せられました。最終選考に残った作品はどれも甲乙つけがたかったのですが、文部大臣賞は、未成年の喫煙を誘う社会環境がなかなか改善されない状況にあって、環境に染まらない自らの主体性と意志の大切さを訴えた中学1年生の力強い作品に決定。厚生大臣賞の作品は、禁煙イコール優しさというオーソドックスな視点から訴えたものですが、分かりやすく、また口だけの見せかけではなく、“行動で示す”“行動を伴う”優しさの大切さがきっぱりと表現されている清々しさが高く評価されました。コンクールも回を重ねるたびに、印象的な作品が集まっています。今後も、ただ耳に調子よく響くのではなく、心の中にじっくり浸透していく標語・川柳を期待しています。