第14回コンクール入選者名簿

「子どもに無煙環境を」第14回コンクールの審査講評(2002.2)
1.絵本・紙芝居 部門
 今年の絵本・紙芝居の応募は例年より少な目でしたが、ユニークな作品が寄せられました。これまでだと絵本か紙芝居かよくわからない作品もあったのですが、今年の応募者の方々はよく勉強されていると思いました。 
 絵本に比べると紙芝居の絵は繊細さに欠けるように見えますが、距離をとって観賞するものですから、審査員の先生方も安易に絵本と対比しないように審査されていました。それでも敢えて紙芝居作品で応募して下さった方々には、色の濁りや画面の汚れのない美しい作品を望みたいと思います。
 絵本に関しては、絵のテクニックは専門の学校からの応募者の方も多くて、すばらしいものが多かったですが、ストーリーという点からみると展開が不充分のようでした。紙芝居とは違って、ダイナミックなストーリー展開は必ずしも必要でなく、画面設定や細部で遊ぶことなど、さまざまな方法があります。アイデアを得たら、それをしっかりと検討することで、単なる思いつきだけの作品から客観的にすぐれた作品に成長させるのです。
 文部科学大臣賞は高校生の作品ですが、絵も文も簡潔ながら、子どもと非喫煙者にタバコの煙を吸わせないで!というアピール力に優れた絵本となっていました。紙芝居については、絵の表現力と文の展開・ユニークさに今一つ弱いものがあり、最優秀の該当なしとなりました。(中川健蔵、堀田 穣)
2.ポスター 部門
 今回の全国から多くの作品が寄せられました。美術コンクールとは少し違って、テーマが「子どもと非喫煙者をタバコから守る、タバコの害・迷惑、未成年の喫煙防止」に限定されていて、しかも啓発活動に活用しますので、その観点から審査を進めました。
 わかりやすさ、訴えの強さと優しさなどの表現が大切です。絵が上手でも余りに強すぎる表現は評価が下がりますし、タバコの煙を嫌がる迷惑の表情が、目を×や>・<にする描き方ではなく、表情の豊かさの工夫が望まれる作品が少なくありませんでした。
 いずれの作品も、ひとつひとつに込められた熱い思いが伝わってきますが、ポスター部門の入選数が90〜100という限定があるために、選定作業には審査員としてつらいものがあります。各部門の絵を机の上に並べ、三〜四次審査まで審査員の投票方式で選定を進めました。絵が必ずしも上手でなくても、体験と実感に基づくユニークさやアピール力のある作品が上位となりました。投票による相対評価で選ばれた作品は、やはり訴えかける表現の優れたものが残り、最終的には上位の作品を協議して最優秀作品を選定しましたが、甲乙つけがたい出来映えの作品が多くありました。
 これら入賞した作品が、次回の啓発ポスターやカレンダーのデザインに活用され、また多くの人の目に触れ、社会的改善に役立てられることを楽しみにしています(新谷隆夫、瓜生隆子) 
3.マーク 部門
 プロと思われる方やデザインを習得されていると思われる方から、完成度の高い作品がいくつも寄せられました。また、高校生など勉学中の方からは、デザイン処理がやや荒削りながらも新しい感覚の作品がたくさん集まりました。
 それらの中から厚生労働大臣賞に選ばれたのは、妊婦の禁煙をアピールするマークです。お母さんのお腹の中にいる胎児の描き方にもう少し工夫がほしい気がしましたが、作者はデザインの心得がある方なのでしょうか、明快な表現がなされていてマークとしての安定感があり、また妊
婦への警告というモチーフの新規性も評価されました。
 一方、文部科学大臣賞は高校生の作品で、たばこの煙に苦しむ人を表現したものです。NOを形づくった煙に挟まれてムンクの「叫び」を思い起こすような人物が(もう少し大きめの方がアピール力はあると思いますが)描かれた誇張表現に面白さがあり、これまでのマークにない斬新な発想が光っていました。
 小中学生からの応募も多くありましたが、マークのシンプルさ・アピール力・アイデアに秀でた作品がなかったために、入賞に至らず、残念に思っています。(高部遵子)
4.標語・川柳・ネーミング 部門
 五七調や七五調など耳に調子よく響くオーソドックスな標語表現を中心に、語調にとらわれず自由に語りかけた表現、広告コピー風の表現、そして言葉遊びによる面白ネーミングなど多彩な表現スタイルの作品をいただきました。
 比喩や同音異義語を生かし、言語表現として工夫のあるものになっていても、平易さや一般性に欠けるなどで、残念ながら選にもれた作品もあります。
 厚生労働大臣賞は高校生、文部科学大臣賞は小学生の作品です。ともにだれにでもわかりやすく、心にすっと届く率直さが感じられるのが特徴です。自分を大事にするとともに他者を思いやる心があって、禁煙の大切さに気づくもの。厚生労働大臣賞はその思いやりを訴えるもので、「けむりゼロ」という直截表現も効いています。
 文部科学大臣賞は禁煙による爽快感を「ピッカピカ」というわかりやすくユーモラスな擬態語で表現していて、言葉の勢いが感じられ、インパクトのある表現になっています。(高部遵子)