ひろめよう禁煙

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(禁煙音楽隊)

上林 友理
上林 陽子

 
何年も前のお話しです。

「お母さーん。ゆりちゃんが、また苦しそうよ。」

妹のようこちゃんが、ぜん息のおねえちゃんを心配して、発作をおしえてくれました。

「さあ、病院に行きますよ。」

ゆりちゃんは、発作になったら、赤ちゃんの時からずっと見てくださっている主治医の先生の所へ、すぐ行きます。

妹のようこちゃんも、心配していつも病院へついて来てくれます。

「さあ、行きましょう。」
 


病院は、車で五分の所にあります。

「はい、つきましたよ。」

ゆりちゃんは、発作になるといつも苦しくて歩けないので、お母さんがおんぶします。
 小児科へ急いで行こうとしてびっくり。

「ウァー!! すごい煙。」
待合所の中はタバコの煙だらけです。

「ゆりちゃん、大丈夫?」

「これはひどいわ。ゆりの発作がもっとひどくなるー。」

本当にすごい煙です。
 

 

 
さて、吸入をしてすっかり発作もおちつき、病院の帰り道でのことです。

「お母さん、タバコの煙は、病気の人じゃなくても良くないんでしょう?」

「そうよ。タバコは大人でも子どもでも絶対ダメです。特に子どもやお腹の中の赤ちゃん、そしてゆりのようなぜん息の人。だから、人間の体にとっては大変な悪者なのよ。」

お母さんは、少し怒りながら言いました。「でも、どうしてダメなの?」

「とにかくダメなの。」

すると、ゆりちゃんは「そうだ、お母さんは先に帰ってて。」

と言うと、ようこの手をひっぱって、急いでどこやら行ってしまいました。
 


二人は病院の先生の所へ行ったのでした。

そして、先生にさっそく、さっきの待合所での「けむり事件」を話したのです。

「先生、どうしてタバコってダメなの。もし、ゆりが煙を吸ったらどうなるの?」

と聞いたのです。 先生は
「もし、ゆりちゃんが煙を吸うと、まず心臓が苦しくなって、手足が冷たくなり、震えたり、めまいがしたり、ぜん息の発作が起こったりします。からだに絶対良くないのですよ。」

「タバコって悪者なの?」
「タバコを吸う人にはもっと悪いのですよ。」
「なるほど、なっとく。」
 

 

 
家へ帰った二人は、先生のお話を全部、お母さんにも教えてあげました。

今までも、タバコの煙で迷惑をしたことはたくさんあります。

たとえば、お食事に行った所でタバコを吸っている人がいたり、タクシーの運転手さんが吸っていたり…。

家のお父さんだって、タバコを吸うので夫婦げんかになったりもします。それは、ゆりちゃんの前でタバコを吸わない約束を破った時です。

でも、ゆりちゃんだけでなく、皆に悪いのに…。

お父さんは、どうして禁煙できないのかしら。

 


その夜のこと。
「キャー!! おひげのないサンタクロースがいっぱい。いったいあなた達は誰?」
二人は、びっくりしました。

「私たちはサンタクロースではありません。 禁煙音楽隊です。」
「禁煙音楽隊?」
よく見ると、なにかマークがついています。

「そうです。禁煙王国から、はるばるこの日本へやって来ました。今の日本の国は煙だらけになっているのです。このままでは、人間の体の中まで煙でくもってしまいます。」

「禁煙っていうくらいなら、あなた達の国はタバコのない国なの?」

       すると…
 

 


へんてこりんな音楽隊は口をそろえて
「そうです。私達の国には、タバコを吸う人はいません。だから、タバコも煙もありません。すがすがしくて、人々はのんびりして、イライラせず、皆思いやりがあって…。 えーと、それから…。」

まだまだ、いっぱい言いたそうです。またまた口をそろえて言いました。
「病気もありません。」
「じゃ、ぜん息の人にもいいのね。」

妹のようこがすぐ言いました。
「禁煙を皆に教えるために、タバコの煙がなぜいけないのか、もっと国中に広めるのです。」
と、言うやいなや、大きな声で大合唱がはじまりました。

二人は驚くばかりです。 へんてこりんな楽しい歌のはじまりー。


うた
「きんえん。きんえん。きんえん。きんえん。きんえんしましょーー。
    悪い煙が入ってきたぁーー。
   人の体に入って来たぁーー。
    大切なーー肺の中ーー。
    次は心臓までーー。
    モク、モク、モク、ワオーー。
   たりない、たりない酸素がーー。
   心臓にも、血液にも届かないー。
   困ったなあーー。困ったよーー。
   呼吸ができないーー。 
    助けてえーー。」
二人も、いつのまにかいっしょに唄っていました。大合唱です。
隊長が言いました。緊張した声で言いました。
「ゆりちゃん、ようこちゃんは選ばれたのです。禁煙王国の使者として、この歌を広めて、今の日本をタバコの煙から救うのです。ガンバッテください。」
皆から拍手がわきました。
 

 


「ゆりちゃん、ようこちゃん、いつまで寝ているの? 学校に遅れますよ。」

お母さんに、おこされてびっくりの二人。
「えー!! 夢だったの?」
二人は顔を見合わせました。 でも二人いっしょの夢を見るなんて…。
さっそく二人はサンタクロースにそっくりの、禁煙音楽隊の話をお母さんに教えました。
でも、お母さんは、ちっとも信じてくれません。

「あなた達は、いつもサンタクロースからのプレゼントを待っているので、そんな夢を見るのよ。」

でも、夢ではありませんでした。ピアノの上には、禁煙王国のあの楽しい、歌の楽譜がおいてあったのです。
二人は決めました。この歌を日本中に広めて、日本を禁煙王国にすることを…。さア、いっしょに、唄いましょう。
 


うた「きんえん。きんえん。きんえん。きんえん。きんえんしましょうーー。

   きれいな空気を吸いました。
   体中に酸素が運ばれてーー
   心もーーあたまもーー
   すっきり、すっきりーー。
   酸素さーん、ありがとうーー。
   タバコは絶対いけないよーー。
   人は酸素がないと生きられないーー。
   幸福のためー。
   タバコはーこの世からなくしてしまおうーー。

     ガンバロウ、禁煙日本。
    健康日本。ガンバロウ!!

おわり

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