タバコ規制枠組み条約(FCTC)    スライド(リンク)

6回政府間交渉会議(INB-6

報  告

全国禁煙・分煙推進協議会

事務局長 宮ア恭一

2003年3月5日

はじめに

全国協議会の市来英雄会長はじめ日本禁煙推進医師歯科医師連盟の有志の方々、ならびに「子どもに無煙環境を」推進協議会の皆様方のご支援を受け、ジュネーブで217日〜28日まで開催されておりますFCTC6回政府間交渉会議に前半に参加してまいりましたので、ご報告いたします。

216日にFCA(タバコ規制枠組み条約支援NGO連合)のワークショップからはじめ、17日は開会式と各国の議長検討記録書に対する意見発表が行われ、18日には各テーマに分かれて検討が続けられました。報告は16日〜18日までの状況です。

FCAワークショップ

前情報によるとNGO によるFCAFramework Convention Alliance=枠組み条約連盟)は16日の夕方に集まることになっていましたが、15日の夕方ちょうどホテルのロビーでNational Center for Tobacco-Free Kidsのロス・ハモンド氏とアメリカがん協会のジョン・ブルーム氏、アメリカ政府民間活動支援機関のマイク・パーチュック氏らと会い、途上国のNGO参加者のためのワークショップがあるから、興味があるなら覗いてみたらとの勧めで、時差ぼけを乗り越えて、16日に早起きして、ロスに着いてくと、まず着いたのがホテル・モンタナで、そこからうようよ各国のNGOメンバーが出てきたのです。コーディネーターのベリンダ嬢とも会えて、皆でバスに乗りWHOに向かいました。

登録はWHOの職員が受付をしてくれて、私はUICC(国際がん予防協会)のメンバーとして登録されました。黄色のカードが与えられ、ピンクは政府の代表、青はWHO関連者だと説明がありました。INBに対してNGOグループはオブザーバーとなるわけです。

ワークショップ

まず参加者の自己紹介から始まりました。司会はニュージーランドのシェーン・ブラブルック氏でした。約30名が集まりました。

1)ロビー活動の豆知識

ロス・ハモンド氏とメアリー・アスンタ女史(マレーシア消費者連盟)から、FCTCの今までの経過が説明され、38項目について討議、交渉がなされているのです。実際の交渉は「インフォーマル」とよばれピンクのカードと青のカードをつけた者が入ることができます。INBNGOに対して80%の時間と90%の資料が除外されるということになります。(英国ASHのクライブ・ベイツ氏による)

INB10月にINB7が開催される可能性があり、各国への適用が注目されます。現実には多くの国で、FCTCでの討議内容が公表されていません。

2)議長検討記録書に対する質問と応答

クライブ・ベイツ氏(英国ASH)と上記のハモンド氏によって、FCTCの実演をしました。

ロールプレイでベイツ氏が議長となり、グループは質問を想定して議長にぶつけました。

話題となったのは:

@広告の全面禁止に関してはヨーロッパの25カ国は賛成していて、多くの他の国も賛成しているのに紛争しています。新聞もこのことに対して取り上げていません。論争の鍵は「全面禁止」(Total ban)と言う表現で、むしろ「総括的な禁止」(Comprehensive ban)という表現に変えた方が各国での対応がしやすいのではという提案もでています。

もうひとつの問題は法律で禁止されていない物品に対する宣伝・広告をどこまで規制できるのかということです。

さらに、国境での規制はどのように対応できるのかという問題です。

AFCTCはコンセンサスを建前としていて多数決はしない。

BNGOを除外して決議されることが問題。

C副流煙、受動喫煙の問題が薄まっている。

DINB7もありか?

E議長提案(テキスト)の前文と各文との表現に格差がありすぎる。

F健康をとるのか、経済優先なのか?

G枠組み条約から議定書を作成する上で、どのようなチェックができるのか?

3)交渉項目に対する検討

FCTC38項目の中から8項目選び、グループを8組作り、項目をそれぞれの組に与えFCTCを支持する意見を述べ、次のグループの項目に対して批判する方式をとりました。

私のグループは13条の広告とスポンサーシップの全面禁止をあてがわれ、前面支持をするよう訴えました。世界銀行の調査では広告をなくすことがタバコ消費を減少させる効果があることがはっきりしています。

各国の憲法という観点からの「表現の自由」が討議され、「スポーツ振興に不安」といった意見がぶつけられました。広告費用の公開も提案されました。宣伝は青少年を目標としているので問題であるという意見と、広告で潤っている業界の今後について、スポーツや文化行事への支援がなくなることへの懸念が争点となりました。

ラベルの件では「Smoking causes 〜」という表現が使われているが、「喫煙者」が悪いわけではないので、「タバコは〜」にするべきだという意見もでました。

表面の50%を占める警告表示が提案されています。FCTCでも争点となり30%〜50%の攻防となっています。

Light」「Mild」の表現も禁止すべきだとの意見が検討されました。

税金も65%〜85%が現状だがさらに上げるよう要望されています。

貿易は禁止すべきという意見と自由だという意見が論じられました。

きれいな空気を守ろうという「副流煙」の問題も検討されました。

税金や価格の上昇が密輸を助長するかという点も検討されました。

タバコ耕作農家、タバコ生産国家に対する保障と援助が大きな問題となっています。資金源やどこまで助けるのかということです。

実際の交渉論争と同じような形式で仮想討議をしたわけです。

4)効果的なメディア対策

次のクラスはアメリカ政府民間活動支援機関のマイク・パーチュック氏が司会をして、効果的な市民活動、効果的なロビー活動の方法論について学びました。

以上がワークショップの概要です。その後ジュネーブ駅近くのレストランで会食となりました。小雪の舞う寒い夜ですが、特に日本より厳しいという気候ではありませんでした。

死の時計開幕式

217日の朝9時から「Death Clock」の除幕式がブルントラント事務総長によってなされました。「1999年にFCTCの会議が始まったときには1分間に8人がタバコによって死んでいきましたが、現在1分間に9人の割合になっています。」とスピーチが始まりました。過去4年間で1,300万人以上が死んでいることになります。各国のNGO代表がシーツで作った棺桶に自国のタバコを投げ入れました。死亡者数を知らせる電光掲示板の前に、会議の期間中置いてありました。

公式会議

930分より公式な会議、INB-6が始まりました。192カ国のWHO加盟国のうち、61カ国が意見表明をしました。日本や米国の代表は規制を厳しく盛り込んだINB-5から妥協案が随所に見られるINB-6の議長案に対して、歓迎する旨を述べていました。日本としては、タバコ会社の責任、広告の規制、警告表示、転作支援などに関して注文をつけていました。一方、ニュージーランド、オーストラリア、アイスランド、カナダをはじめ多くの国々は広告規制が後退している点、税金値上げ、警告表示についてなまぬるい議長案に対して、抗議の意見を述べていました。特にオーストラリアは加盟国の間に大小はないはずだということを強調していました。コンセンサスという方式をとらなければ完全に多数がFCTCに賛成しています。またカナダは自国の規制がFCTCをはるかに先取りしている点を強調していました。

非公式交渉会議(非公開)

午後からは各テーマにわかれて、非公開の非公式会議に入りました。NGOは誰も入ることはできませんが、WHOの職員や関係者から具体的な意見の交換情報が入ってきます。米国や日本は公開会議では議長の意見を尊重するといいながら、非公開会議に入るとかなり厳しい口調で、規制撤回を主張していたようです。

2日目のセッション

18日の午前中は非公開会議が引き続き行われ、FCAに属しているNGOメンバーはニュースレターを各国の代表者に配り、タバコ規制に強い態度で臨むよう要請しました。

午後にはWHO主催で今年の「世界禁煙デー」について説明があり、テーマは「tobacco free film, tobacco free fashion, Action!」です。訳せば「映画とファッションからタバコを無くそう。本番!」または「映画とファッションはタバコと無縁。ハイ本番!」という感じです。カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授のスタントン・グランツ博士が「ハリウッド作戦」と名づけてすべての映画から喫煙シーンをなくそうと訴えています。またインドでもWHO の指導の下に「Bollywood禁煙作戦」を展開しています。

同時開催となりましたが、FCAとしてINB-6の議長案に対する反論する会が開催されました。アメリカがん協会のジョン・ブルーム氏をはじめ何人かが評論しました。

事務総長レセプション

18日の夕方5時より、WHO事務総長のブルントラント博士主催のレセプションがあり、各国の代理人、NGOの代表者、WHOのタバコ関連者たちがホールに集まり、レセプションが始まりました。軽食と飲み物といったシンプルなものでしたが、ロス・ハモンド氏は日本の厚生労働省の正林、後課長補佐らと意見交換をしていました。

追記

NGO代表者の参加数は54人。日本政府として、外務省、財務省、農林水産省、厚生労働省から合計18名が参加。日本からのNGOとしてもっと多くの人が参加できればと思わされました。ロビー活動として日本の医師会はじめ多くの学会、医療関係組織が禁煙宣言している旨を発表しました。

以上