たばこ規制枠組条約の発効
(
2005.2.27)にあたってのメッセージ
 

紙巻タバコが,肺がんをはじめとする多くのがんや虚血性心疾患,慢性閉塞性肺疾患などの原因
であることは,多くの科学的証拠によって明らかです。しかし,日本では,たばこ規制の取り組みが
遅れたため,成人男性の喫煙率はいまだに欧米の約2倍の高さにとどまっており,2000年には 日
本全国で11.4万人が喫煙によって死亡したと推定されています。

 

最近になって,ようやく日本においても変化が見られ始めました。2003年5月の健康増進法の施行
以降, 第25条の受動喫煙防止の規定を受けて,公共の場所や職場の禁煙が進みつつあります。
また,衆議院, 参議院での全会一致の承認を得て,2004年6月,日本政府は「たばこ規制枠組条
約」を19カ国目として批准しました。
条約は40カ国が批准して90日で発効しますので,2005年2月27日に発効することとなりました。
これに合わせ,政府は2004年6月に「たばこ対策関係省庁連絡会議」を設置し,本年1月に関係省
庁 による正式会議を開催し,対策を推進しようとしています。

 

「たばこ規制枠組条約」の目的は,「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康,社会,経
済に及ぼす破壊的な影響から現在および将来の世代を保護する」ため,各国が国内外で実施すべき
規制の枠組みを提供することにあります。条約には,タバコ価格・税の引き上げ(第6条),タバコの煙
にさ らされることからの保護(第8条),タバコ製品の包装及びラベルでの警告表示の強化(第11条),
たば この広告,販売促進及び後援の包括的禁止(第13条),禁煙治療の普及(第14条),未成年者へ
の販 売の禁止(第16条),経済的に実行可能な転業への政府による支援の提供(第17条)などの規
定がありますが,これらの対策を誠実に実行することは「現在と将来の世代をたばこの害から守るた
めに」必須 の要件であり,国際的な約束でもあります。

 

現在,わが国の成人男性の喫煙率が2002年に49.1%となって以降50%を割り,2004年には男女合わ
せての成人の喫煙率が初めて30%以下の29.4%となりました。i今や,「タバコを吸わないのが当たり
前の 社
会」へと人々の意識が変わる節目にあ ります。
本条約の発効を機に,日本政府は,タバコの健康対策 をよ
一層進める ことを期待するものです。

 

以上の認識に立ち,本会は,たばこ規制枠組条約の発効にあたって,以下のメッセージを公表します。
 

  1.枠組条約に盛り込まれたタバコ規制の諸対策の一日も早い実現を日本政府は進めるべきであ
    り,
特に,以下の3点について,早急な対策推進を要請し ます。

 
   (1)受動喫煙防止について,健康増進法第25条で,以下を改正すること
    (a)公道も含めることが必要(健康局長通知に含めることでも可能)
    (b)職場は分煙でなく禁煙遵守を進めること(職場のたばこ対策ガイドラインの改廃が必要)
    (c)レストラン等の不徹底の抜本是正が必要
    (d)保健所などに,レストランや理美容店,浴場などの受動喫煙防止の改善権限を付与する
      (健康増進法には,所管する出先機関がない。都道府県・市の保健所の活用が有効)
    (e)努力規定でなく,義務規定にすることが必要
    (f)家庭の児童等(妊婦・胎児を含め)の受動喫煙防止の周知・啓発


   (2)未成年者喫煙禁止法に関連して,以下を改正・実施すること
     (a)第四条の「其の他」は,ステッカーなどの貼付でも可,とされているので,「其の他の
     必要なる措置」を削除し,年齢証明の提示を義務づける
      (b)かつ未成年者が買える自販機は禁止すべき(また条約第16条により,「書面宣言により,
     未成年者が買える自販機は全て禁止とすべき」)
     (c)タバコ税率を大幅に引き上げることは,未成年者喫煙対策に極めて有効なので,早急に
     対処をすること

 

   (3)今後のタバコの健康対策にネックとなり,条約との整合を欠く,財務省所管の「たばこ事業
    法」の改廃を早急に進めること      

 

  2.タバコと健康に関わるNGO・NPOは,多くの人々や関係組織と協力して,枠組条約の各種の法
  的規制や環境整備を最大限に実現し,タバコ消費を減らすために,それぞれの専門性を生か
  し,連携していっそうの力を尽すことをアピールしたいと思います。
 

  3.本会としても,今後さらに相互の連携を深め,政府や議会,報道機関をはじめ,関係組織に対し,
  タバコの害のない社会の実現に向けて積極的な提言や働きかけを行いたいと思います。

 

                                2005年(平成17年)2月27日

 

                                NPO法人 子どもに無煙環境を推進協議会
                                     会長   若林  明
 たばこ規制枠組条約Q&A

 ホームページに戻る