2000年2月8日(木) 北海道新聞 生活面 「暮らし・意見 16」

非喫煙者の健康を守るため,今こそ法律制定が必要

 「未成年者喫煙禁止法」(以下 禁止法)が,1900年(明治33年)に
制定されて,今年は100周年になる。帝国議会衆議院で「このよう
な神経をまひさせ,知覚を鈍くさせるものを小学生がたしなむのは
良くない。喫煙者は体位が劣り,このままでは立派な軍人になれな
いではないか」という主旨でこの禁止法が提案され,制定された。

  背景には,たばこ販売の加熱があった。明治の中ごろには,自転
車が当たるくじ付きまで販売され,小学生も買ったという。
"強兵"のためとは時代錯誤な感があるが,結果的に未成年者をた
ばこの害から守る防波堤となってきた。世界に誇れる法律といわれ
るゆえんだ。

 だが,これで未成年者の喫煙は根絶されただろうか。最近のある
調査では,喫煙経験者は,中学1年生男子で30%,女子で17%もあり,
毎日喫煙者率は,高校3年生男子で25%,女子で7%に達すると報告さ
れている。

 大きな問題点は,自動販売機などで,未成年者でも自由にたばこ
を買えることだ。たばこ自販機は,50万台を超えて増え続けている。
「未成年者がたばこを買えない社会」をつくることが,今こそ必要
だ。

 また,いたる所にたばこの煙が漂い,受動喫煙を強いている。実
はわが国には,子どもや妊婦を含め,非喫煙者の健康をたばこから
守る法律はない。映画館やデパートの売り場,電車内などの禁煙も,
消防法や鉄道営業法など,火災防止の観点からの規程である。これ
らの援用で,かろうじて非喫煙者の健康が少し守られているにすぎ
ない。「健康づくり」が叫ばれて久しいのに,何か間違っているのでは
ないだろうか。

 子どもの前では吸わない,非喫煙者のいる場所では吸わない,歩
きたばこはしないなど,個々人の自覚も大切ではあるが,社会的な
ルールがなくては,実効性は望めない。

 公共施設や一定規模以上の飲食店,事業所などでは,非喫煙者が
たばこの煙を吸わされないよう,建物や敷地内を整備し,それらの
場所での喫煙を禁ずるとともに,必要により喫煙指定場所を設ける
ような「非喫煙者健康保護法」の制定が,わが国でも必要とされて
いる。

 また,依存性の点からも憂慮される。早く喫煙を始めるほど害が
大きく,成人後のリスクも高くなる。
とりわけ女性にとっては,妊娠した時,赤ちゃんにも悪影響を与
え,また美容上も良いことは一つとしてない。

 たばこの煙がなければ,この世はもっと住みやすく,楽しいの
に。..子どもも大人も,吸わない人はそう願っているのだ。

野上浩志
(特定非営利活動法人「子どもに無煙環境を」推進協議会事務局理事)