13 号 平成14年5月17日(金曜日)
衆議院 厚生労働委員会議録

 

水島委員 今の教育の問題については、非常に重要なテーマですので、今後も取り上げさせていただきたいと思います。
 また、健康保険法関連でお伺いしたいことがほかにもたくさんございますけれども、時間の関係で次に回させていただくことにいたしまして、最後に、健康増進法案に関連いたしまして、一つ質問をさせていただきたいと思います。
 健康増進法案そのものについては、その成り立ちや思想、効果等について私自身多々の疑問を持っておりますけれども、その中でも唯一評価できる点は、たばこの問題でございます。今回、健康増進法案で受動喫煙の防止が初めて法律上位置づけられたのは、遅きに失したとはいえ、大変意義深いことであると思っております。
 ところが、その内容を見ますと、多数の者が利用する施設を管理する者の受動喫煙防止が努力義務にとどまっているわけでございます。諸外国の法制度を見ましても、公共の場での分煙は努力義務ではなくて義務とすることが必要なのではないかと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
坂口国務大臣 喫煙の問題につきまして、初めてそこで法律上取り上げさせていただいたわけでございますが、この喫煙の問題というのは、人によりましてさまざまな意見が実はございまして、だからこの委員会の中でお決めいただきましてもいろいろ御意見が出るんだろうというふうに思いますけれども、各立場立場によりまして本当にたくさんの意見が出て、我々が思っておりますように一律にこれをやっていくということがなかなか難しいというのが率直なところでございます。
 しかし、そういうことを言っておりましては進んでいきませんから、ここで努力義務ではございますけれどもまず取り上げさせていただきました。そして、ここをもう少し私たちも積極的に進めていきたいというふうに思っています。我々がいろいろ調査をいたしました喫煙に関しますことにつきましても、できるだけ情報公開をしていきたいというふうに思っておるところです。
 先日も、日本の中で、非常にタールが少ないとかいろいろの数値が出ておりましたけれども、いろいろの検査方法によってはそれが二倍にも五倍にもなっているというような数字を先日出させていただきましたけれども、これすらなかなか発表することに対する抵抗というのがございまして、厚生労働省もかなり苦労をしながら、しかし決断をしたということでございます。
 こうしたことは、これからも勇気を持って取り組んでいきたいと思いますし、喫煙問題につきましては、私たちもさらに進めていきたいと思っているところでございます。
水島委員 大臣の御苦労もとてもよく理解できるところがございますけれども、やはりこれだけ喫煙あるいは受動喫煙による害についてのデータがたくさん出てきているわけでございますので、これは勇気を持って進めていくのが厚生労働大臣としての本当に大きなお仕事になるのではないかと思っておりますので、ぜひ、五年後の見直しというものがこの健康増進法案の中に入っておりますけれども、そのときには当然義務化することも視野に入れていらっしゃると思いますけれども、この点について一言だけ御答弁いただけますでしょうか。
坂口国務大臣 努力をいたします。
水島委員 また、この法案の規定について少しお伺いしたいと思いますけれども、受動喫煙の防止対象となる施設は、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設」となっておりまして、ここに交通機関というものが書かれていないんですけれども、交通機関も含まれますでしょうか。
下田政府参考人 健康増進法案の二十五条に規定しております受動喫煙防止に関する努力義務規定の中に、「多数の者が利用する施設」というのがございますけれども、その範囲のお尋ねだと考えております。
 この範囲につきましては、受動喫煙の防止を通じた健康の増進という本規定の趣旨を考えてまいりますと、社会通念上「多数の者が利用する施設」に該当するものであれば、広くこれに含まれると考えております。
 したがいまして、タクシーを含む公共交通機関も、本規定に基づいて受動喫煙を防止するために必要な措置に取り組むよう努めなければならないというふうに解しておるところでございます。
水島委員 今のタクシーなんですけれども、含まれるのは当然だと思いますが、具体的にはどのような対応になるんでしょうか。
下田政府参考人 タクシーにつきましては、現行におきましても道路運送法におきまして、乗客がいる場合の乗務員による車内での喫煙禁止が規定されておる、また、事業者が禁煙車両とした車内におきましては乗客に対して禁煙の要請ができるというふうな定めがあるところでございます。
 こういった現状もございますけれども、さらに適切な受動喫煙対策がとられますよう、関係省庁と連携しながら、関係業界と相談をし、協力を得ながら実施をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
水島委員 ちなみに、この「多数の者が利用する施設」には国会も含まれるんでしょうか。
下田政府参考人 含まれるものと考えております。
水島委員 そうしますと、私も入っております禁煙議連では、国会内の禁煙、分煙を目標の一つに掲げているわけでございますけれども、今回のこの法案が成立いたしますと、この禁煙議連の目標は一つ達成されたというふうに考えてよろしいんでしょうか。
下田政府参考人 受動喫煙につきましてはあくまでも努力義務規定ということでございますけれども、たばこを吸わない方、吸う方、それぞれおられるわけでございますが、お互いに迷惑のかからないような形での分煙対策をそれぞれの施設ごとに実情に応じて実施していくべきものというふうに考えております。
水島委員 ぜひこれは、私は立法府が率先して範を示すべきものではないかと思っておりますので、国会内での議論も議員の皆様に率先してやっていただければとお願いを申し上げたいと思います。
 また、ここで書かれております「学校」なんですけれども、これは学校という建物だけを意味するのでしょうか、それとも機能を意味するのでしょうか。修学旅行や移動教室など、学校に関連する活動についても含まれるものなのでしょうか。
下田政府参考人 厳密に考えておりますのは、学校の施設の中ということで考えておりますが、学校教育の一環として当然その活動をおやりになるわけでありますから、そういった教育上の観点から種々の御配慮がなされるべきもの、このように考えておるところでございます。
水島委員 健康増進法案は、受動喫煙の防止義務が、努力義務とはいえ初めて法律上位置づけられるものでございまして、受動喫煙の害を初めて政府が公的に認めたものであるとも言えると思います。そして、これを機に、さまざまな環境について見直す必要があると思います。
 本日は時間がありませんので、一つだけお伺いして終わりにしたいと思いますけれども、例えば労働安全衛生法に基づいて出されている指針では、必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずることとなっておりますが、必要性の判断をだれがするかということを考えましても、この規定は実際には何も定めていないとも言えるものだと思います。労働者は一日の大半を職場で過ごしているわけですから、職場における分煙は本当に重要なものだと思います。
 健康増進法の制定を機に、改めて労働環境について取り組まれる予定はございますでしょうか。受動喫煙に特定した通知を出したり、特別な義務を事業主に課したりするような予定があるかどうか、具体的にお答えいただきたいと思います。
日比政府参考人 職場における受動喫煙の問題でございますが、かねて、職場における健康問題ということもございまして、一定のガイドライン等は今委員御指摘のように出しておるところでございます。今般、健康増進法案ということ、こういう機会でございますので、この成立を見ましたら、私ども、さらに対策を強化しなければならぬと思っております。
 今、具体的にということでございますが、これは精神論だけというわけにまいりませんで、現実に、分煙の手法につきましてどういうことが効果的なのかなどについても、実は今検討会ということで一部やっておりまして、そういうことの成果も見つつ、具体的な内容については今後考えさせていただきたい。いずれにいたしましても、これを機会にやはりやっていくべきものであろうと思っております。
水島委員 たばこについてはまた今後の委員会でさらに質問させていただきたいことがございますけれども、最後に大臣にお伺いしたいと思います。
 冒頭に大臣は、このたばこの問題は本当に難しいとおっしゃいました。ただ、今回この健康増進法案の目的を達成するためには、厚生労働省が各省庁を束ねられるようでなければ、内容が骨抜きになってしまうと思っております。今までのたばこの議論を見てまいりますと、今回一歩踏み出そうとされているのは大いに評価できるんですけれども、どうも、そんなことが本当に厚生労働省にできるのかということには大いに疑問を持っているところでございます。縦割り行政の中で他の省庁を束ねられないのであれば、例えば内閣府に健康増進本部を置いて、環境政策も含めて根本から健康問題を考えるなど、法律の組み立てを変えなければならないのではないかと思っております。
 たばこ対策において大臣がリーダーシップを発揮できるかどうかが健康増進法案の成否を占うことにもつながると思いますけれども、最後に大臣の決意表明をお聞かせいただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 たばこに関します問題といたしましては、喫煙に対します問題のほかに、たばこを生産する生産者の問題でありますとか、税制の問題でありますとか、さまざまな問題がございまして、そうした問題も込みになっていろいろ意見というものが複雑になっているというふうに思います。
 しかし、単に健康上の問題ということだけに絞り込んでいえば、これは厚生労働省が積極的に働きかけをしなければならないわけでございますので。そして、これはもう科学的なデータとしましても、たばこの与える害というものは明確になっているわけでありますから、明確になっております以上、ここは厚生労働省が中心になりましてしっかりと対応しなければならないというふうに決意をしているところでございます。
水島委員 ありがとうございました。