訴訟和解10年後の近況   仁 志 健 一   2003.8.17

 私の時の場合、具体的な健康被害(アトピー性皮膚炎)から逃れるためできるだけ
早く禁煙環境を得ることが目的であり、数年間あらゆる交渉をしましたが、やむ終え
ず裁判に持ち込みました。
 よって元々裁判で判決を求めるのは目的ではなく、和解は念頭にありました。
和解ででもできるだけ早く禁煙環境を得て確定させてしまう必要があったのです。
 先人が築いてきたように今後の人のためにも自分の時代のうちに自分の時代の悪
い点はできる限り直したいという思いはありましたが、2次的に発生した思いです。

 裁判で全面勝訴の判決を得られればもちろん最もうれしいのですが、私の時は法も
社会環境も不十分だったので、勝てる見込みは高くありませんでした。
 また裁判途中で求める禁煙職場が実現すると、後は損害賠償のみとなり、日本のこ
の手の裁判ではコストパフォーマンスが落ちることは当初から想定していました。
和解も、裁判上の和解と裁判外の和解があります。裁判上の和解であれば、判決とほ
ぼ同じ効力があります。
 私の時は残念ながら裁判外の和解でしたが、禁煙運動の上でもできるだけ早い時期
の実績を築き社会に公表することが、結局は早い法整備に繋がると考えました。
このような階段は1歩ずつしか登れないので、私は私のできる1段を確定させて、後は
次の機会、次の人に任せるしかないと考えました。

和解して幸せになったかどうか

 裁判和解後も白い目で見る人が4年ほどはいましたが、禁煙も少しずつですが増えて
きて、その後はそのような人もいなくなりました。
 和解条文に書かなくとも当然のことですが、人事的差別はしないと条文に明記してい
ましたが、昇進は5年ほど遅れています。明白な差別とならない程度のことであれば仕
方がないこととは判っていました。
 これは和解したH5年から10年間、禁煙職場が限定されていたことが最大の原因で、
今年H15の健康増進法施行の影響で私の多坂市も劇的に禁煙が進みそうです。

 これで昇進を挽回できるかどうか判りませんが、人生設計上の幸せとして仕事上の成
功は失業しなければ 健康、家族の次以下でしょう。
禁煙になって健康を取り戻せたこと、禁煙が保証されていることが劇的に幸せです。
その後も禁煙が広がっていくことも幸せです。
 現在進行中の他の方の職場の禁煙訴訟では、法環境も社会的環境も私の時より有利
であること、健康上の緊急性が私の場合とは多少は異なっているかも知れないことを考
えると、和解せず判決を求めるのも選択肢としてはあるのかも知れませんが、日本の裁
判ではどうでしょうか?