和解覚書・弁護団声明

 

希望していた禁煙の職場環境が実現

  和 解 覚  

 仁志健一(以下、甲という)と多坂市電車部(以下、乙という)とは甲が提起した 多坂地
方裁判所平成3年(ワ)第6784号のいわゆる分煙訴訟事件の処理につき次の通り覚書を取り交わ
す。

1.甲は乙が行った平成5年4月28日付の人事異動に伴い、甲の新職場となった多坂市電車部
  建設技術本部電力課第二電力係の中津技術事務所が、従前甲の希望していた分煙の職場
  環境を実現したものであることを確認する。

2.乙は今後も右職場環境を維持する。

3.甲は今回の新しい職場の分煙措置が、職場の喫煙者の協力の結果である事を確認し、今
  後共職場の同僚と協調するものとする。

4.乙は、甲の今回の分煙措置の要求が、職場環境の改善という目的に基づくものである事
  を了解し、この事ゆえに甲の処遇に関し、不平等な取り扱いはしない。

5.乙は、喫煙に対する社会の意識が変化しつつある現状及び労働安全衛生法第7章の2
  「快適な職場環境の形成のための措置」の趣旨を十分認識し、今後共喫煙にかかわる職
  場環境の改善に努力する。

6.甲は本覚書締結後直ちに前記訴訟を取下げ、乙はこれに同意する。

7.甲は本覚書により、乙との関係における現在の職場の禁煙に関する紛争は解決したもの
  と認め、現職場の職場環境が維持される限り、乙に対し異議を申し立てない。

  平成5年(1993年)7月30日

     甲       仁 志 健 一
     右代理人
      弁護士   吉田   肇

   乙          多坂市電車部
    右代理人
     弁護士   
高 ○ 敬 ○          

 

原告弁護団声明 

 多坂市電車部職員の仁志健一さんが多坂市に対して職場の分煙を求めていた訴訟に関連し
て、原告の仁志さんと多坂市電車部は、本日、仁志さんの職場の分煙を確認した覚書を結
び、仁志さんはこれに基づいて訴訟を取り下げました。

 原告の仁志さんは、職場の同僚の喫煙するたばこの煙が原因とみられるアトピー性皮膚
炎に罹患し、1991年8月、職場の分煙などを求めて多坂地裁に訴えを提起しました。その
後2年近くにわたって審理が進められてきましたが、この間、本年4月には、多坂西労働
基準監督署が多坂市電車部に対して職場の喫煙環境について改善を指導し、同月多坂市交
通局は
仁志さんを別の職場に配転するとともに、新しい職場を分煙にする措置をとりま
した。
  本日締結した覚書は、この新しい職場の分煙措置を確認するとともに、多坂市電車部は今
後ともこの職場環境を維持し、さらに喫煙にかかわる職場環境の改善に努力することを定め
たものです。
 仁志さんとしては、今後も継続して勤務を続けていくためには、職場の分煙が不可欠です
が、本覚書によってその実現が確認されたこと、および、今後とも喫煙にかかわる職場環境
の改善に努力することが規定されたことによって、訴訟の目的が達成されたものと判断し、
本日の覚書を締結しました。 仁志さんにとっては十分に満足できる勝利的な解決です。

 本件でこうした形で解決をすることができたのは、職場の分煙を求める世論の高まりとと
もに、多くのみなさんの大きなご支援をいただいたこと、そしてまた多坂市電車部がこうし
た社会的な意識の高まりを誠実に受けとめ、自ら主体的に分煙措置をとるという誠意ある行
動をとったことによるものと考えます。

 あらためて、関係者と、ご支援をいただいた多くの方々に感謝を申し上げます。これが、
職場の分煙を求める多くの方々とその運動になにがしかのお役に立てればこれほどの喜びは
ありません。

 多坂市電車部は、この覚書に定められた喫煙にかかわる職場環境の改善に努め、分煙とな
っているのは仁志さんの職場だけであるという現状を早急に改めて、全職場での分煙をすみ
やかに実現できるよう努力されたいと思います。

 さらに、電車部のみならず多坂市全体においても、職場の分煙が社会の流れであることを
真撃に受けとめ、また職場の分煙を定めた労働省の指針にもしたがって、喫煙にかかわる職
場環境の改善に努めることを強く要求します。

    1993年7月30日

      仁志分煙訴訟原告弁護団