小児期からの喫煙予防に関する提言
(社)日本小児科学会
1999年6月最近,日本人成人の喫煙率は低下しているが,先進国の中ではまだ高く,特に青少年と
女性の喫煙の増加を指摘する報告が数多く見られる。さらに喫煙者の低年齢化が起こり,
小学1年生の喫煙例の報告もある。喫煙は喫煙者本人ばかりでなく,周囲の人の健康に悪
影響を及ぼすことは周知のことである。疾病予防の観点以外に環境汚染,火災防止など社
会的,経済的観点からも喫煙予防は重要である。喫煙予防教育は成人になってからでは遅く,小児期から喫煙の害を教育し,喫煙を防止
することが重要である。子どもの喫煙予防は,小児科医の活動や努力のみでは不十分であ
り,家庭・学校・地域など社会全体で取り組む必要がある。そこで,小児の健康を守る為
に(社)日本小児科学会は小児科医および社会に対して以下の提言を行う。提言1:小児科医の喫煙予防活動
妊婦の喫煙が未熟児の出産の原因となったり,保護者の喫煙と乳児突然死症候群をはじ
め子どものさまざまな疾患との関連性が報告されている。さらに,乳幼児の誤飲事故はた
ばこが最も多い。そこで,小児科医は小児科外来を禁煙にし,日常診療や小児保健活動の
中で,積極的に保護者と子どもに喫煙の有害性と危険性を教育し,保護者・その家族の禁
煙と子どもの喫煙予防を勧める必要がある。提言2:喫煙予防教育の実施
喫煙予防の教育は幼児期から始めることが望ましく,家族への喫煙予防の教育も合わせ
て行うことが望ましい。
学校における喫煙予防の教育は,学習要綱では小学3年生で実施するようになっている
が,喫煙予防の教育は小学1年生から実施し,学年に応じて健康教育の一環として毎年,
繰り返し行うことが望ましい。同時に教職員など学校関係者自身も禁煙に努める必要があ
る。提言3:たばこの自動販売機の規制
子どもは,たばこを自動販売機から購入することが多い。たばこが手に入り難い環境を
作ることは,子どもの喫煙防止の一助となり,子どもに健全な社会環境を提供する観点か
ら,たばこの自動販売機を設置することを規制する必要がある。提言4:たばこの広告の禁止
広告の理解の出来ない子どもにとって,たばこのテレビコマーシャルなどの広告は喫煙
を促すこととなり,子どもの目が届くたばこの広告は禁止する必要がある。提言5:テレビ放送中などの喫煙場面の規制
ドラマ,スポーツ中継などのテレビ放映中に,しばしば喫煙場面がみられる。テレビの
喫煙場面は喫煙を促すこととなり,子どもが見るテレビ放送などのマスメディアでの喫煙
画面を規制する必要がある。