本会は以下の要望を警察庁,厚生省,文部省,大蔵省などに提出しました(厚生省等あてはこの文の後半に記載)

同趣旨を,国会の関連委員会の議員の方々にも要請しました。

                          平成12年8月28日

警察庁長官 様

         特定非営利活動法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 
たばこれす 

未成年者がタバコを買えない法整備など社会環境対策を

 謹啓,本会は,本年の「未成年者喫煙禁止法」制定100周年にあたり,未成年の喫煙の抜本的対策をこれまで数度にわたり要望し,また提案してきました。しかし喫煙少年の補導が強化された以外は,抜本的対策は取られているとは言えないように思われます。

 今年7月に警察庁より「少年の問題行動を助長する社会環境対策の在り方に関する調査研究会報告書」が公表されました。この報告を踏まえ,今後「未成年者喫煙禁止法」の強化等がはかられるようですので,これまでの要望・提案に重複する点もありますが,以下の意見・要望をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

1.大人の黙認について

 17ページ他に,「路上等公の場所での問題行動の増加は,少年自身の問題だけではなく,少年の喫煙・飲酒を目にしても,何も言わない大人自身の責任の問題でもある…」とありますが,この認識は正しいとは言えないと思います。

 注意する大人は少なからずいます。しかし注意がもとで傷害事件にならないとも限りません。傷害事件になりうることを考えて多くの大人が注意しないからと言って,それは大人の責任に帰することはできないはずです。それに少年なのか,成人なのか区別がつきにくい場合も多々あります。未成年者が自由に買える状況が放置されながら,一般の大人の方に注意を期待し課するような表現は,責任転嫁となりかねないのではないでしょうか。

 むしろ,その現場を交番や警察署に通報し,補導をお願いすることを広報することが現実的で,巻き込まれる危険性をなくすることになるのではないでしょうか。また,駅構内などであれば,通報により駅員が注意するよう徹底することなどが望まれます。

2.少年の典型的な問題行動としての喫煙,というより,「精神発達を阻害する喫煙」の観点が必要

 8ページに「重大な非行に至るまでには,喫煙などの問題行動がある…」という点について,単に非行の前兆としての喫煙だけではなく,少年(未成年者)の喫煙が,薬物として精神医学的に発達と成長を損なっているとの理解と対策が必要と思います。精神医学に携わる医学者の間では,このニコチン依存と発達阻害の指摘が少なからずあります。少年にとっては,タバコは,たかがタバコ,ではなく,強いニコチン依存と精神発達を阻害する薬物として,厳しい禁止の徹底が必要とされる理由です。

3.少年の心身の健康と成長を阻害する喫煙の害の強調が必要

 この報告書全体が,問題行動からの研究調査で,2項を含め,少年の心身の健康と成長の阻害要因としての喫煙(タバコ)の観点からの言及がほとんどないのは残念です。「未成年者喫煙禁止法」は未成年者の健康と体位の点から制定されたものですが,その原点に立ち返って,その後明らかにされた医学的知見(少年期に吸うほど依存性が強く,心身の発達を阻害し,早死にしやすいなど)も加味して,「未成年者喫煙禁止法」の存在意義の高い評価と,その厳しい運用が必要です。

4.未成年者がタバコを買えない法整備が必要(自動販売機の禁止,年齢証明提示,違法販売者の厳罰)

 「未成年者喫煙禁止法」がありながら,残念ながら,日本では,喫煙経験者は,中学1年男子で30%,女子で17%もあり,毎日喫煙者率は,高校3年男子で25%,女子で7%に達すると報告されています。せっかく良い法律があるのに,守られていないのは,自動販売機をはじめ,コンビニエンスストア,タバコ店等で未成年者がタバコを簡単に入手できる社会環境に大きな原因があります。高校生(3年男子)は,タバコを自販機(74%),コンビニ(40%),タバコ店(26%)で入手していると報告されていて,自動販売機で購入するのが最も多いのが現実です(上記報告書にはこの調査結果は引用紹介されていませんが…)。

 次代を担う少年の心身の健全育成のために,少年をタバコ中毒に陥れる現状を以下のような対策で抜本的に是正する必要があります

(1)未成年者がタバコを自由に買うことができる自動販売機は撤廃されるべきです。アルコールの自動販売機は,今年6月から,業界が自主的に撤廃を進めています。もしタバコ業界が自主的に撤廃しないのであれば,法的に禁止とすべきです。

(2)コンビニやタバコ店等の店頭販売も,年齢証明で確認して販売すべきです。

(3)未成年者にタバコを売った販売者は,未成年者の心身の発達を阻害した罪として,免許取り消し及び高額の罰金など,厳罰とすべきです。

(4)以上3点を「未成年者喫煙禁止法」に盛り込んでください。

5.未成年者の禁煙支援クリニックの整備が必要です

 法律で未成年者の喫煙が禁止されていても,自由に買えるために,未成年者の多くが喫煙している現実があります。未成年で吸い始めるほど害も大きく,依存になりやすいのですから,未成年者の禁煙支援クリニックは極めて大切です。
 現在,成人の禁煙支援クリニックは,徐々に広がってきていますが,未成年喫煙者については,未成年者喫煙禁止の点から,放置されている現状のようです。未成年喫煙者が,早期に喫煙から脱却できるよう,無料で禁煙支援クリニックを受けることができる制度が是非必要です。そしてこの費用はタバコ税を当てることが合理的です。厚生省や文部省,大蔵省など関係省庁と協議の上,早急に対処をお願いします。

6.未成年の喫煙防止のために,以上の他に,下記のような総合的な社会環境対策が必要です。厚生省,文部省,大蔵省など関係省庁と協議し,早急な対策を進めてください。

(1)タバコ税を引き上げ,価格を上げることも,未成年の喫煙防止にとても重要です。未成年者がタバコを入手できないよう,また喫煙人口を減らすためにも,税金を引き上げ,その増収分をタバコ対策費用に当てる。

(2)未成年者を対象とした雑誌やイベントでのタバコ広告の禁止,及び未成年者も対象としたイベントのタバコ会社の主催や後援を禁止する。

(3)タバコの銘柄名に,「ライト」,「マイルド」,「ラッキー」,「スター」などを入れることは,未成年者を欺くものです。タバコは有害で依存性があるのですから,銘柄名を付けることを禁止し,○○タバコ1,○○タバコ2のように,メーカーと通し番号をつけるなど,厳しい制限をすることが必要です。

(4)未成年・子どもや,妊婦,赤ちゃんへのタバコの害を含め,タバコの健康警告表示を,先進国なみに,正しい警告表示とすることが必要です。(例えば,「未成年の喫煙はニコチン依存性となり心身の成長を妨げます」「未成年女子の喫煙は母性にとって有害です」「未成年の喫煙は禁煙を困難にします」など)

(5)特に「健康日本21」で,国は10年で「未成年の喫煙をなくす」目標を掲げているのですから,以上の対策を含め,関係省庁が力を合わせた総合的対策の推進をお願いします。

7.社会が青少年を守る在り方が青少年問題の改善・対策の基本では

 未成年者がタバコを自由に買うことができる自動販売機に例を見るように,未成年者が社会環境的に守られていないことが,未成年者の遵法精神を損ない,社会に対する信頼を損なっていることは,青少年の問題行動の一因と決して無関係ではありません。タバコを未成年者が入手できない在り方によって,社会が未成年者を守ることが,喫煙を含め青少年の問題行動を改善していく一歩になるはずです。
 この,社会が青少年を守る在り方が青少年問題の改善・対策の基本であるとの観点から,以上の抜本的な対策推進をお願いします。

                  敬 具

 

                         平成12年8月28日

内閣総理大臣 様
厚生大臣 様
文部大臣 様
大蔵大臣 様
総務庁青少年対策本部 御中

           特定非営利活動法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
たばこれす


未成年者がタバコを買えない法整備など社会環境対策を

 謹啓,本会は,本年の「未成年者喫煙禁止法」制定100周年にあたり,未成年の喫煙の抜本的対策をこれまで数度にわたり要望し,また提案してきました。

 今年7月に警察庁より「少年の問題行動を助長する社会環境対策の在り方に関する調査研究会報告書」が公表されました。この報告を踏まえ,今後「未成年者喫煙禁止法」の強化等がはかられるようですが,本会は別添の要望書を警察庁に提出いたしました。

 貴省・庁におかれましても,未成年者喫煙防止について,関係省庁でご協議いただき,早急な抜本的な対策を進めていただけますよう,お願い申し上げます。

                         敬 具