平成11年(1999年)5月21日
大蔵大臣 様
総務庁青少年対策本部長 様
警察庁長官 様
青少年育成国民会議 御中
全国禁煙・分煙推進協議会
JT他との未成年喫煙防止広告ポスター等の連名中止の要請
謹啓,来年に制定100周年を迎える「未成年者喫煙禁止法」の実効性強化に関する要望を,昨年
7月,11月,及び今年3月に関係機関に提出し,未成年者の喫煙流行の大きな要因として,自動販
売機,及びコンビニ等で未成年者がタバコを極めて自由に入手できる環境に問題があり,この抜本
的改善を要望いたしました。
このことに関係することとして,毎年11月に,日本たばこ産業(株)と全国たばこ販売協同組合連
合会は,大蔵省,総務庁青少年対策本部,警察庁,青少年育成国民会議と連名で「11月は全国青少
年健全育成強化月間−ハタチまで,たばこはぜったい吸わせない。」というポスターを制作し,新
聞・雑誌・テレビ等で広告する他,タバコ自販機やタバコ販売店に貼っています。また,「たばこ
は20才になってから」のステッカーをJTではなく日本たばこ協会と上記機関が連名で制作し自販機
に貼っています。
これらはもしかしたらブラックジョークなのでしょうか。青少年の健全育成というのであれば,
下記の理由により,「未成年者喫煙禁止法」制定100周年を前に,今後は連名によるポスター等の
制作は,断じて中止していただくよう強く要請いたします。(なおご回答を1月以内にいただけれ
ば幸甚です)
記
1.「ハタチまで,たばこはぜったい吸わせない。」と呼びかけても,その理由を示していないの
ですから,説得力は全くありません。成長する身体に悪影響があるからこそ吸ってはいけない,
吸わせてはいけない訳で,また20才を過ぎれば悪影響がないという訳ではありません。このこ
とがこのコピーには基本的に欠落し,次代を担う青少年の心身をタバコの害から守ろうという
大切な優しい思いが全く抜け落ちています。
2.自動販売機,及びコンビニ等で未成年者がタバコを極めて自由に入手できる環境を抜本的に改
善せずに,このようなコピーのポスターを作っても,いったい誰が耳を貸すでしょうか。この
ような主張をするのなら,未成年者が自販機でタバコを買えないようにし,コンビニや販売店
でも買えないようにするのが先決であり,かつ社会的責務ではないでしょうか。
3.自動販売機やコンビニ等で未成年者がタバコを極めて自由に入手できる環境こそが,青少年の
健全育成を損ねている大きな一因になっています。であるのに,総務庁青少年対策本部,警察
庁,青少年育成国民会議という,全国レベルで青少年の健全育成の推進に責務をもつ公的機関
が,タバコ販売促進を進める私的営利のJT(あるいはたばこ協会)及び販売店組合と名を並
べてこのような内容のポスター等を制作するのは,節操がなく,癒着と言えないでしょうか。
4.自販機そのものが未成年喫煙を助長する最たる要因であるのに,連名のこのポスター及びステ
ッカーを自販機に貼って,これら青少年育成機関は結果的に,未成年者がタバコを自由に買え
る自販機の存在にお墨付きを与えている矛盾・荷担に,思い至らないのでしょうか。
5.それにこのポスター及びコピーは,青少年の健全育成に名を借りた体の良いタバコ広告になっ
ているに気づかないふりをしているのでしょうか。タバコは20才になっても吸わないに越した
ことはありません。一度吸い始めればその依存性のために,止めることが難しい商品です。初
めから吸わなければどうってことないのですから,「ハタチまで,たばこはぜったい吸わせな
い。」,「たばこは20才になってから」と,あたかも20才になったら吸うことを勧めかねない
コピーは一種のタバコ広告です。このようなポスター及びコピーに,青少年の健全育成の推進
に責務をもつ公的機関が名を連ねるのは恥ずかしいことではないでしょうか。効果が全くない
だけでなく,タバコ販売に手を貸しているとの誤解を生じかねません。
6.大蔵省も,JTや販売店組合との癒着を断ち切って,けじめを示し,行政的中立を保持し,か
つ青少年・国民の健康をタバコの害から守るために,連名を下りていただきたい思います。
7.それでもどうしてもポスター等を制作するというのであれば,JTや販売店組合とは縁を切っ
て,純粋に青少年の健全育成のためのタバコ防止ポスターを制作していただきたいと思います。
敬 具