以下の文を英文にし,WHOに送りました(2000年8月29日)     

英文 
We hope for the conclusion of an international treaty to protect children's health from cigarette smoking.

子どもの健康をタバコから守るために,国際条約の締結を希望します

                 特定非営利活動法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
                 たばこれす  2000.8.29

 私たちの団体は,1988年に創設し,子どもたちがタバコの煙を吸わされないよう,また子どもたちがタバコを吸わない社会環境づくりを進めるための活動をしてきました。啓発ポスターを毎年20万枚作り,全国各所に送付し,掲示し,また子ども達の参加するポスターや標語のコンテストを行ってきました。この立場から,国際条約に賛成し,意見・提案をします。

1.未成年(20歳未満)の喫煙禁止法の制定を

日本では,未成年(20歳未満)の健康を守るために,1900年に「未成年者喫煙禁止法」が制定されました。今年で100年になります。
1899年に,この法律が提案されました。提案の理由は「近年,タバコを吸う子どもが増えている。このような神経をまひさせ,知覚をにぶくさせるものを小学生がたしなむのは良くない。喫煙者は体位が劣り,このままでは立派な軍人になれないではないか」というのが,その趣旨でした。
その後,この法律は,未成年者の健康をタバコから守り,日本人の健康づくりに大きな役割を果たしてきました。日本の長寿社会の一因は,この「未成年者喫煙禁止法」も大きく寄与していると指摘され,世界に誇る法律といわれる理由です。
タバコは特に成長盛りの身体と精神に悪く,未成年で吸い始めるほどニコチン依存
になって,精神発達も阻害しやすく,その理解が未成年ではまだ欠けています。この理由で,未成年(20歳未満)の喫煙禁止を国際条約に盛り込んでいただきたいと思います。特に,喫煙禁止年齢を,18歳に引き下げるのは絶対に反対です。21世紀の未成年の身体と精神の健康のために,薬物としてのタバコの喫煙禁止年齢は,20歳未満とするべきです。

2.子どもや未成年がタバコを買えない社会を(自動販売機の禁止,年齢証明提示,違反販売者の厳罰)

この法律がありながら,残念ながら,日本では,喫煙経験者は,中学1年男子で30%,女子で17%もあり,毎日喫煙者率は,高校3年男子で25%,女子で7%に達すると報告されています。
せっかく良い法律があるのに,守られていないのは,自動販売機をはじめ,コンビニエンスストア,タバコ店等で未成年者がタバコを簡単に入手できる社会環境に大きな原因があります。前記の調査でも,高校生(3年男子)は,タバコを自販機(74%),コンビニ(40%),タバコ店(26%)で入手していると報告されていて,自動販売機で購入するのが最も多いのです。
日本ではタバコの自動販売機は今50万台以上あります。国際条約で,未成年者がタバコを自由に買うことができる自動販売機は禁止されるべきです。また,コンビニやタバコ店等の店頭販売も,年齢証明で確認して販売すべきです。(日本では,アルコールの自動販売機は,今年の6月から,業界が自主的に撤廃しています。)
そして,未成年者にタバコを売った販売者は,未成年者の心身の発達を阻害した罪として,免許取り消し及び高額の罰金など,厳罰とすべきことを国際条約で決めてください。

3.タバコ税の引き上げを

タバコ税を引き上げ,価格を上げることも,未成年の喫煙防止にとても重要です。未成年者がタバコを入手できないよう,また喫煙人口を減らすためにも,税金を引き上げ,その増収分をタバコ対策費用に当てることを,国際条約で決めて下さい。

4.未成年者を対象とした広告禁止を

未成年者(と若い女性)を対象とした雑誌やイベントでのタバコ広告の禁止,及び未成年者も対象としたイベントのタバコ会社の主催や後援の禁止を,国際条約で決めてください。

5.タバコの銘柄名に厳しい制限を

タバコの銘柄名に,ライト,マイルド,ラッキー,スターなどを入れることは,未成年者を欺くものです。タバコは有害で依存性があるのですから,銘柄名を付けることを禁止し,JTタバコ1,JTタバコ2のように,メーカーと通し番号をつけるなど,厳しい制限をするよう国際条約で定めてください。

6.タバコの健康警告について国際共通表示を

未成年・子どもや,妊婦,赤ちゃんへのタバコの害を含め,タバコの健康警告表示を,国際的に共通の表現とするよう,国際条約で決めてください。国や国民によってタバコの害が違っているわけではないので,この表示を共通とすることは合理的です。

7.未成年者と若い女性の禁煙支援クリニックを

法律で未成年者の喫煙が禁止されていても,自由に買えるために,未成年者の多くが喫煙している現実があります。未成年で吸い始めるほど害も大きく,依存になりやすいのですから,未成年者の禁煙支援クリニックは極めて大切です。未成年者はもちろん,母性保護の立場から,特に未成年と若い女性については,無料で禁煙支援クリニックを受けることができる制度が必要で,この費用はタバコ税を当てることが合理的です。国際条約でこの取り決めをお願いします。

8.非喫煙者と未成年の健康を守る法律制定を

日本には,子どもや妊婦を含め,非喫煙者の健康をタバコから守る法律はありません。ホールや映画館,百貨店売場,ドーム球場,新幹線や電車内の禁煙は,消防法や鉄道営業法など,火災防止の観点からの規定です。本来健康とは関係のないこれらの法律のおかげで,非喫煙者の健康は,何とか少し守られています。非喫煙者の健康をタバコから守るためには,法律という社会的ルールが必要です。
公共的施設,公共の交通機関,教育施設,スポーツ施設,一定規模以上の飲食店,事業所,路上などでは,非喫煙者がタバコの煙を吸わされないよう,建物や敷地内を整備し,それらの場所での喫煙を禁ずるとともに,必要により喫煙指定場所を設けるようにする。国際的にも人の行き来が増えているのですから,そのような内容の法律を各国で作る条約が必要です。

9.タバコ産業の完全民営化が必要

日本では,大蔵省がJTの株式の3分の2を所有していて,今も,国が「たばこ事業法」で,JT,タバコ栽培農家,タバコ小売店を監督し,保護育成しています。「たばこ事業法」の第一条には,「タバコ産業の健全な発展をはかり,財政収入の安定的確保をはかる」という文が書き込まれています。
大蔵省は,税収をあげるために,タバコのために国民の健康が害されても知らぬ顔です。厚生省がタバコの健康対策のために予算要求をしても,はねつけてきた例は数知れません。タバコ産業は完全に民営化し,国は自由な立場で,タバコ対策を進めるよう国際条約を取り決めてください。

10.国会議員と政党のタバコ関連産業からの献金を禁止すべき

日本では,今年3月に,国民の健康づくりのために,「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21計画)」が作られ,タバコ対策が重点の一つとして取り上げられました。はじめの計画では,10年間で,喫煙率を半分に減らす目標でしたが,タバコ業界が自由民主党の国会議員に働きかけ,自由民主党は以下のような決議で,厚生省に圧力をかけ,タバコ対策を妨害しました。市民運動側は,これに対抗する署名運動を進め,妨害をくい止めようとしましたが,不十分な結果でした。
国会議員や党が,タバコ関連業界から献金を受け,国のタバコ対策を妨害することを国際条約で禁止することは,極めて重要です。

 【添付資料】

自由民主党政務調査会(たばこ・塩産業特別委員会,葉たばこ価格検討小委員会,
        総合農政調査会,農林部会)の
厚生省「健康日本21」及びWHO「たばこ対策枠組条約」に関する決議

 現在厚生省において策定作業が進められている「健康日本21」の決定実施、並びにWHOにおいて検討が開始された「たばこ対策枠組み条約」への対応について,下記の通り決議する。

                 記

たばこは長年にわたり生活に定着し,親しまれてきた大人の嗜好品であり,喫煙するかしないかは各人が判断すべきものである。また喫煙が心身の健康にどのような影響を与えるかについては,そのすべてが明らかにされていない。このような嗜好品に対して,行政として一方的に数値目標を設定し国民を誘導することは,憲法の趣旨に鑑みても問題である。
また,国により法制度,文化,歴史あるいは産業構造などの異なる中で,各国一律の規制を強制するような方法は取るべきではない。
本問題は,たばこ耕作者,たばこ小売人をはじめ我が国たばこ産業に極めて重大な影響を及ぼすことから,本決議の趣旨に沿って慎重に対処すること。

                                    平成111125
      厚生大臣 丹羽雄哉殿