International Consultation on Tobacco and Youth ?  What in the World Works?
Singapore, 28 to 30 September 1999

http://www.who.int/toh/youth/singapore/address.html

「タバコと若者」に「一体何が効果的であるのか」に関する国際会議 講演

日時 199992830
シンガポール

講演者 Dr Derek Yach, Project Manager

 「タバコと若者」に関するこの国際協議会に、みなさんをお招きできたことは、大変光栄なことです。一年前、私とJudith Mackay氏は、「タバコと若者」の重要な拠点であるシンガポールで、さらなる運動の進め方について、議論を交わしておりました。シンガポールにおける、とりわけシンガポール健康省やシンガポールガン連盟の方々の熱心さ、リーダーシップ、そして関心には、感謝の気持ちでいっぱいです。タバコから子どもたちや若者を守るには“一体どんなことが効果的であるのか”ということを考えるために、私たちは今ここにいます。それは、確かにいい問いかけなのです。実際、私たちは知れば知るほど、知るべきことは沢山あるのです。

 皆さんの多くは、たばこの基本的な事柄についてはご存知でしょう。[例えば]毎年タバコで400万人の人が死んでいることなど。この数字は、2030年までには、約1000万まで増加し、そのうちの70%は、発展途上国で発生しうるとされています。タバコ会社が生き残るためには、これらの死者や多数のタバコを止めた人々が、新たな喫煙者、すなわち今日の、また将来の子どもたちや若者に取って代わらねばなりません。このことは、中国、インド、エジプト、タイなどの若者の間で、かつてないほどに増加しています。私たちは、タバコの消費量を減らすのに、効果的なコスト政策や介入(intervention)があることを承知しています。つまり、何が求められているかは、政治的な判断と協力的な行動なのです。

 WHO事務局長である、Harlem Brundland(ブルントラント)氏のリーダーシップの下、「たばこのない世界構想」(TFI)は、タバコが公衆衛生に対する重大かつ地球規模的な脅威であるという一面を引き出すために設立されました。タバコ使用に目をむけるために、国連内で、とりわけユニセフや世界銀行との強力なパートナーシップを築くのは大変な作業でした。さらに大事なことに、タバコに対する新たな国の取組みが毎週報告されています;多岐に渡る活動をする様々な非政府組織(NGO)は、この問題を重要な関心事として取上げ、そうしたNGOWHOが始めたの新たな取組み方法(renewed WHO approach)の強力なサポーターとなっています。

 タバコは、健康にとって間違いなく脅威であります。なぜなら、タバコはどこでも入手でき、使用しようとすれば死をもたらし、タバコを製造し販売する人々は、タバコによる殺戮と死亡者数をわからぬまに捻じ曲げようと組織的に働いているからです。

 これに関連すると、タバコから子どもを守ることは疑いなく重要です。成人喫煙者のおおよそ90%は、18歳前に喫煙を開始しています。つまり、それは若者の喫煙を防止することは、大人の喫煙を防止することを意味し、その違いが健康に表れてきます。さらに、重度のヘビースモーカーは、そうでない人よりも、若い時に喫煙を開始していがちなのです。つまり、それは喫煙を開始する年齢を先延ばした結果が健康への負荷を、―ニコチン中毒になった人や大人になって喫煙をし始めた人でさえも―潜在的に低くすることを意味するのです。

 喫煙予防の効能が明らかなのにも拘わらず、多くの国々で若い人たちの喫煙率は高く、その率は上昇傾向にあります。[それには、]タバコ産業によるいくつもの“努力(efforts)”があったこで説明がつきます。ただ、その努力がタバコ訴訟の結果で明らかになった裁判記録に、はっきりと叙述されています。では、この点に話を戻しましょう。

 私たちは、現存する資料や手法だけでなく、新たな証拠、手段及び洞察力も利用する必要があります。タバコから若者を守ろうとすることの大きな利点は、教師としてであろうと、青少年クラブ活動などを通してであろうとも、若い人々を対象にして働く人材と途方もないそのエネルギーであります。私たちの挑戦とは、証拠やコミュニティ機構に強く根差した各種の政策やプログラムを実効性のあるものにするために、さらなる効果的なパートナーシップを築くことです。非効果的なプログラムは、乏しい人材などを無駄にするでしょう。[また、]コミュニティにあまり支持されないプログラムは、維持することができないでしょう。

 国連基金は、「若者とタバコ」運動に関しての証拠固めの重要性を認識しており、WHOUNICEFのジョイントプログラムに、そうした証拠固めが強化できるように資金提供をしました。IDRC国際タバコ規制に関するカナダの調査とCDC(米国疾病予防センター) Atlantaは、国連基金プロジェクトの旗印の下で、若者への幅広いタバコ規制政策の先頭に立つために、力を合わせたました。この後で皆さんは、調査プロジェクトの第一段階として、世界中のあらゆる国々でタバコによる有害な結果が子どもたちに大きな影響を与えているという疑いようのない事実を、調査団より耳にすることができる思います。

 どの地域においても、国連基金プロジェクトによって研究者らは、それぞれの地域における国々から証拠を批判的に検討することができました。その結果は、驚くほど反復的なものになっています。次の二つの例は、私たちの議論に刺激を与えるものです。一つ目は、子どもたちは、もう相当に喫煙をしており、しかも若い時から喫煙をし始めていることです。二つ目は、妊娠中に喫煙をする女性は、幼児時に死亡するか病気になる確率が高くなるような低体重児を産んでいるということです。このことは、田舎であれ都市であれ、また先進国であれ発展途上国であれ関係なく起こっています。事実、同じ質問を受けた多くケースの中の誰においても、その答えは同じで、起こっているのです。つまり、妊娠中の喫煙は体重を減らし、母子双方に不幸な結果を引き起こすのです。

 更なる証拠が「世界青少年タバコ調査(GYTS)」から出てきます。この調査は、CDC(米国疾病予防センター)と共同で近い将来調査を実行する計画のある11の国々とで協力して行われました。ここ数日中に、私たちは、学校をもとにした最初の調査結果を聞くことができるでしょう。それらの調査で、多くの国々で、どれだけの若者が喫煙をしているのか、またタバコ商品やタバコによって引き起こされる害に関しての知識や感じ方の正確な統計が初めて提供されてくるのです。GYTSは、タバコ規制において決定的な結果をもたらします。つまり、タバコの消費量を減らすのに強力な手段ともなり得ましょう。

 また、別の重要な方法が国連基金プロジェクトにおけるユニセフとの活動から得られるでしょう。つまり、それは「子どもの権利条約」の潜在的な力のことです。この国際人権条約は、二つの国を除いた世界中の国々によって批准されています。働き(work)は若者に影響するようタバコ病を監視し、包括的タバコ規制措置の実行するための効果的なステップを踏むよう批准国の政府に対して要求するために、子どもの権利条約を活用することで、それら潜在力を発揮しています。タバコ規制と子どもの権利条約との活動を結び付けることで、活動の支援者の幅広い団体は発展するでしょう。

 被害がおそらく相当甚大である場や我々の知識ベースを更に広げる必要のある場があります。私が言いたいのは、とりわけ発展途上国で学校に行っていないけれど、タバコの犠牲者である何百万という子どもたちについてです。彼らには、病気への二重の負担がのしかかっているのです。それは、貧困と健康被害です。タバコ業界は、金持ちと貧困者を区別しません。彼らにとっては、あらゆる人が潜在的な消費者なのです。

 ここで、タバコ産業界の話に移らせて下さい。子どもたちや若者をタバコから守ることは、“懐が暖かく、非常によく組織された敵”との戦いなのです。何十年間もの間、タバコ業界は、政府やWHOを含む国連の機関や研究団体の政策に影響を与える戦略を練ってきました。仮に、タバコ製品の販売促進に充てられるタバコ業界の何百万という莫大な資金を目前にして、何がしかの影響力を持とうするなら、タバコ業界の行動を理解することが重要です。例えば、マラリア蚊に取り組む誰もが、マラリアという蚊の行動、性質そして、蚊の影響力を減らすための最適な方法という“マラリアの「動き(vector)」”を理解することなしに、政策や介入を進展させることは考えないでしょう。ただ、何十年間もタバコ規制者は、その“「動き(vector)」”すなわちタバコ産業についてつかんでいませんでした。私は、タバコ産業の昔のから最近のまでの記録を含んだいくつかのホームページ(Websites)を調べるよう参加者の方々にお願いしたい。

 訴訟で入手できるようになった大量の記録は、タバコ産業について考えるたくさんの理由を提供してくれています。この情報は、先週タバコ製造業者に対して訴えを起こした連邦政府訴訟の根拠と今やなっています。3500万ページにわたるメモと計画書には、タバコや喫煙に対する子どもたちの態度についての詳細な研究と未成年者においてブランド作りを確立しようとした様々なプロジェクトがありました。Judith Mackay氏は、その記録から明らかになった最新の新事実のについていくつか批評しています。

 タバコ産業による未成年喫煙の活動に関しての最も包括的な批評の一つは、たった10日前に「小児および青少年医学記録保管所」から出されたものです。著者であるCheryl Perry氏は、次のような詳細な証拠を示しています、すなわちタバコ産業の活動は、未成年者の喫煙を増加させるのに強固な要因である、と。その例として米国における彼らの“努力”が医学雑誌JAMAに載っています。アニメキャラクターがキャメル社のタバコの販売を促進しているジョー・キャメルのついての認識度(recognition)は、90%以上と報告されています。その数字は実に、ミッキーマウスより高いのです。

 アメリカにおいてフィリップ・モリスによる「若者の喫煙習慣」という研究の中で、ブランド好みは、性、年齢、人種と大きく関係しています。フィリップ・モリスの関心は、15歳から18歳までの特定のグループは、それらのブランドに左右されていなかったということです。研究者達は、こう述べています、「もし、若者の間で誰かが行動を開始したのであれば、“集団行動(exodus)”を引き止めるのに、何がなされうるのか分りません。この年代のグループは周りに従い、リーダーを求めそれに従います。つまり、流行に乗るグループなのです」と。

 では、もしリーダーが吸わなかったらどうなるでしょう。また、周りが吸わなかったらどうでしょう。必要とされる喫煙新参者は、次々と消えるでしょう。 それが、最大手の多国籍タバコ企業の見通しです。私たちは、それを現実のものとする必要があるのです。

 ここシンガポールに来訪する前に、私は、フィリップ・モリスのホームページで入手可能な資料を見ていました。すると、シンガポールに触れている1000もの記録を見つけました。その記録の多くには、10年間に及ぶ販売戦略ついての情報と、何10年間にも渡りシンガポール政府によって成功を収めてきたタバコ規制に対するタバコ産業の高まる不満が含まれていました。しかし、そこには、若い人向けの新商品を展開しようとする心配になる例もありました。1987年のある記録では、カリフォルニア産のタバコがシンガポールで発売が延期になったことを示しています。二つのタイプの商品が“若い喫煙者”によってテストされました。一つは、甘味料入りで、もう一つは、匂いのついたタバコでありました。若い喫煙者を使ってテストされたということは、おそらくタバコ会社が聴衆をターゲットにしていたということを意味しているのでしょう。これらのことや他の発見は若者のリーダーや政治家の間で、激怒を買うことでしょう。そうした激怒は、喫煙をし始めてしまった子どもたちを止めさせ、喫煙する若者がタバコを止めるのを支援するための注目される政策的戦略へと変わられる必要があります。

 これから3日間に渡って、我々には、タバコ産業によって用いられた戦略について、批評する機会が豊富にあります。ですが、次のポイントをおさらいのため押えておきたいと思います。

 第一に、タバコ業界は、愚かではありません、そして若い人々へ“モノ”を売る方法を理解するために彼らのことを研究し続けています。モノであるタバコは、初めての一本は、多くの人をせき込ませ、かつ早口にし、そして大抵むかむかとさせるのです。もし、我々が「若い人々とタバコ」について心配するのであれば、大人として、子どもたちを守るという大人の利益とは、彼ら話を聞き、彼らとともに活動をするということから逃れること、と単に考えるよりも、むしろ彼らをさらに理解しようと努めることが必要です。この会議の期間中に、若者に目標を絞るだけでなく、積極的に彼ら若者にプログラムを理解させ、実行させようとする「タバコと若者」に取り組む戦略についての話を聞くことができるでしょう。タバコ業界は、このことを世界市場を築くためにやってのけました。我々もまた、タバコのない世界を築くためにやる必要あります。そして、それを世界中の子どもたちや若者達とともに手をつなぎ、実践しましょう。

 二番目に、私たちは、「タバコ規制と若者」とは、単に若い人々を教育すればいいという考えに陥ってはいけません。若者の喫煙防止には有効なのは、タバコ価格の引上げ、広告の禁止、そして公共の無煙空間の構築などの包括的なタバコ規制を含んだ効果的な介入でしょう。もし我々が、マトを学校や地域教育活動に限定したり、若者とのアクセスを制限すれば、二つの重大なミスを引き起こすことになりましょう。一つは、我々が無煙世代のための戦いで最も効果的な手段を利用できなくなってしまうことです。もう一つは、タバコ産業によって仕掛けられた罠に引き込まれていしまうことでしょう。

 若者の喫煙を防止するプロジェクトを発展させるのに最も効果的な方法は、タバコ産業自身によって示されています。米国ではウエストバージニア州においてのみ、若者の喫煙を防止するために、業界によって展開されたキャンペーンを実行するために、4500万ドルが提供されました。フィリップ・モリスとBATはスイスからジンバブエに到るまでの政府に自分達のお金とやり方を受け取るように積極的に誘おうとしています。産業側のプログラムには、不当に高い増税を認めることや広告やプロモーションの全面禁止もしくはプログラムをやめることなどは含まれていません。私たちは、若者間のタバコ使用を減らそうとする時に、“どんなことが効果あるか”についてのこの会議で、議論を教育キャンペーンに制限してはなりません。

 三番目に、何人かの方々は、これらのプログラムを受け入れることが、なぜそれほど悪いのかとお尋ねになるかもしれない。とくに、タバコ産業の見せ掛けだけの気前の良さが子どもたちにとってアートプログラムや以前はなかった学校健康プログラムと転換してしまうような資源の乏しい環境においては。我々の答えは、明快で証拠に根差したものである必要があります。もし我々みなが、子どもの時に、ニワトリを守るのにキツネがあてにされていないということを学んでいるのであれば、自分が大人になった時、子どもたちにタバコを売りつけるタバコ産業により展開されたプログラムに、子どもの将来の健康を委ねますか?[否であります]

 タバコ産業と未成年者の喫煙に対するCheryl Perry氏の記事を結論づけると、彼女は「タバコ産業の約束と活動は……厳密に吟味され、監視されるべきです。というのはタバコ産業の生き残りは未成年喫煙者にかかっているからです。」と主張していました。事実の証拠に基づけば、タバコ産業の行動は、「彼ら自身の約束に矛盾し続けるかもしれません。」としています。最低ライン:教育者は若者に“タバコを拒否せよ”と示す時、タバコ産業マネーの潜在的な受領者は、子どもの健康のため、その申し出に拒否する必要があります。

 「「タバコと若者」に一体何が効果的であるのか」に関するこの会議は、重要なステップです。つまり、子どもたちや若者に的を絞ったプログラムを導くのに、最善の実践の範囲を定める方向での重要なステップなのです。我々は、タバコ産業によるプログラムを論理的に非難する前に、若者のタバコ使用を減少させるのにどんなタバコ政策やプログラムが効果的であるのかに関するコンセンサスを得る必要があります。このことは、 多くの現在の政策やプログラムを厳格な評価に晒すことを意味します。つまり、「我々には学校があり健康教育もある」だけは、若者のタバコ使用を減らすのに、学校に基づいた健康教育が問答なく効果的活動の特徴であるとは、言えないのです。意図するのは、我々は、政策やプログラムを発展させることです。それらは、無煙世代の若者でてくる環境を作りながら、家や学校や遊び場や仕事場での若者の生活、友人、大人とが互いに影響しうるものであります。

 最後の考えとして、もし、我々がこの会議「「タバコと若者」において“一体何が効果的であるのか”」に我々を招き導いた質問に答えるならば、私は、あなたがたに幅広い思考の必要性を強調したいです。もし、我々が、若者がタバコの使用に抵抗することを期待するのであれば、大事なのは、タバコ産業によって展開されたキャンペーンの状況を通して、タバコ販売にとってのアクセサリーとなることに代わりうるような意義のある、効果的な選択肢を政府に供給することです。

 私たちは、タバコはカッコイイもの、正しいことをすること、仲間であるということ、として若者をだまし、信じ続けさせるタバコ産業の目論見に対抗するためにも、若者グループのクリエイティブなタレントを世に出す方法を見つけなければらない。ブランド力をなくした時、集団のパワーと非制御性(unstoppability)についてのことを言ったのはフィリップ・モリスの研究者であっただったことを思い出して下さい。全タバコブランドに対し、このことがいかにして現実となりうるのを考えてみましょう。そうするためには、私たちは、Brundtland博士のアドバイスに従う必要があります、彼女が今年の三月にワシントンでの若者とタバコについての国際政策会議(International Policy Conference)に発言したアドバイスについてです。

 「私たちの闘争の場は青少年にある」という彼女の言葉を再び思い起こさせます。「私たちはディスコに、学校に、スポーツエリアにと踏み込んでいかねばならならないのです。というのも、多くの国々で、タバコはダンスフロアにおいて、ただでタバコが配られていますから。私たちはこういったスペースを取り戻さねばなりません。」と彼女は言います。

  WHOの歴史において初めて、国連加盟国は条約を作成する要求(mandate)を出しました。来月、タバコ規制に関する枠組み条約の協議と採決を第一義とする相互政府プロセスが開かれます。ポリオ撲滅のように、枠組み条約は、子どもたちを取り巻き、共有する公衆衛生問題に取り掛かるために地球規模での団結を結びます。WHOと加盟国によるこの大事なステップは、公衆衛生の向上に対して長期的で展望でもって取組み、タバコ枠組み条約の発効は21世紀の子どもたちにとって世界をより安全な場にすることでしょう。

 大人として、子どもの味方として、タバコ規制の支持者として、私たちは世界中からここシンガポールこの会議のために来ています。「一体何が効果的であるのか」を明確化する方向を本当の進歩とする時は未だ来ておらず、今がその時でしょう。

   御静聴 ありがとうございました。(訳:小松良太)