本会は,「たばこ規制枠組み条約」の国会批准を控え,政府と衆参議長,
政党に以下の要請書を提出しました。
                                       平成16年(2004年)3月17日
内閣総理大臣  小泉 純一郎 様
外務大臣    川口 順子  様
厚生労働大臣  坂口  力 様
財務大臣    谷垣 禎一 様
                        特定非営利活動法人 子どもに無煙環境を推進協議会
                          会長  竹村 喬
                         事務局 〒540-0004 大阪市中央区玉造1-21-1-702
たばこ規制枠組み条約の国会批准に関連し
国民の健康を守るためのたばこ対策行政推進のお願い
謹啓 3月10日に国連本部で「たばこ規制枠組み条約」に日本政府が署名し,
今国会での批准にあたり,以下の点を政府として明確にされるよう重点要請し
ますので,ご高配をお願い申しあげます。
                                     

1.外務省説明書の「この条約の実施のためには、新たな立法措置
    および予算措置を必要としない。」の記述は禍根を残します。
    削除を求めます。
(1)外務省が公表した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の説明書」の11
   ページの最後に「三 条約の実施のための国内措置 この条約の実施のためには、
   新たな立法措置および予算措置を必要としない。」との記述がありますが,この記
   述は,条約本文(外務省訳,及び英文本文)にはどこを探してもありませんし,
   最後になって,それまでの文の脈絡とは無関係に突然出てきます。
   これは日本政府の勝手な記述で,何の記述根拠も論理もありません。
(2)日本政府は,たばこの健康警告表示を改訂し,広告規制の強化をしましたが,こ
   れらの内容は中途半端で(パブリックコメントは聞き置いただけで,寄せられた意
   見は全て無視されました),国民の健康を喫煙と受動喫煙から守るためには余りに
   不十分な内容ですし,4項の自動販売機対策は全く手つかずの状態です。
(3)この記述を明記することにより,今後の日本国内での対策に枠をはめようとする
   意図があるように受け取れます。これは「たばこ規制枠組み条約」の条文と趣旨
   から大きく外れ,国際的にもこのような勝手な記述は国際信義に反し,到底許さ
   れるものではありません。
(4)今後たばこの健康対策のためには,下記の項2〜6や,健康増進法第25条の受動
   喫煙防止の実効性強化などを含め,様々の法的・予算的・行政的措置が欠かせま
   せん。説明書のこの一文によって,これらの措置を封じ込めることになり,長期
   的な日本国民の健康づくりにも禍根を招来することになりますので,この削除を
   強く求めます。
2.たばこ規制枠組み条約に沿って,包括的な対策プログラムを策
    定し,全国的なたばこ対策の調整のために(第5条),内閣直
    属の中核的な対策室を設け,以下の項の内容も含め,対策を進
    めてください。
(1)本会が先の衆議院議員選挙の候補者に行ったアンケート調査でも,回答いただい
   た当選議員のうち37%がこれに賛同しています。
   http://www3.ocn.ne.jp/~muen/syuinsenkyo03/syuintoikekka031109.html
3.「たばこ事業法」を改正し,包括的な「たばこ規制法」を制定
     し,健康に関する内容は厚生労働省の所管とすべきです
(1)健康注意表示や広告,自動販売機など,たばこと健康に関連する内容が,財務省
   所管の「たばこ事業法」に盛り込まれていますが,たばこ事業法を改正し,これ
   らを盛り込んだ健康に関する包括的な「たばこ規制法」を制定し,厚生労働省の
   所管とするのが「たばこ規制枠組み条約」に沿った長期的施策として不可欠です。
(2)私たちが昨年11月の衆議院議員選挙の候補者に行ったアンケート調査でも,回答
   いただいた当選議員のうち66%が「たばこの健康警告表示や広告規制の権限の
   厚生労働省への所管替えと,たばこ事業法の改正が必要」と答えています。
4.未成年者が自由にたばこを買える自動販売機を禁止する措置を
    早急に採ってください(第16条)
(1)2000年3月に策定された「健康日本21計画」で,国は,2010年までに「未成
   年の喫煙をなくす」目標を掲げています。この目標は絵空事の現状で,この目標
   達成にたばこ自販機は大きな阻害要因になっています。
(2)たばこ業界は2008年までに年齢識別機能付き自販機を設置する方針とのことで
   すが,2010年の「未成年の喫煙をなくす」目標からして余りに遅いし,機能付き
   自販機で未成年者が買える状況が改善されるとは思われません。不正使用はいく
   らでもあり得ます。店頭販売を義務づけるべきです。
(3)現行のたばこ自販機は,以下の点からも「たばこ事業法」に違反しています。違
   法状態が長年にわたって放置されています。
  【たばこ事業法(許可の基準)第23条】 財務大臣は,前条第1項(製
    造たばこの小売販売)の許可の申請があった場合において,次の
    各号のいずれかに該当するときは,許可をしないことができる。
    三 営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不
    適当である場合として財務省令(下記の施行規則)で定める場合
    であるとき。
  【たばこ事業法施行規則】(営業所の位置が不適当な場合は次に掲げ
    る場合とする)
    第20条三 自動販売機の設置場所が,店舗に併設されていない場
     所等製造たばこの販売について未成年者喫煙防止の観点から十
     分な管理,監督が期し難いと認められる場所
(4)本会が先の衆議院議員選挙の候補者に行ったアンケート調査でも,回答いただい
   た当選議員のうち84%が「未成年者がたばこを自由に入手できる自販機の至急
   の規制が必要」と答えています。
5.未成年喫煙対策の観点からも,たばこ税率を大幅に引き上げ
   (第6条),
   その税収の一部を,たばこ関連産業(耕作や販売を含め)の転業支援(第17条),
   及び国・地方自治体・保健医療機関・NPO団体等の,喫煙と受動喫煙の害の対策
   費や広告・広報に支出するようにすべきです。
6.たばこ会社に,喫煙と受動喫煙の害の広告・広報を義務づける
    べきです
   アメリカなどで義務づけられているように,たばこ会社に,喫煙と受動喫煙の害
   の広告・広報を義務づけ,消費者にたばこの害について周知をはかるべきです。

                                 敬 具