2006年7月1日からのタバコ税と値上げにあたっての声明
−タバコ税と価格を段階的に大幅に引き上げるべき−
2006年6月28日
NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
会長 若林 明
〒540-0004 大阪市中央区玉造1-21-1-702
7月1日より,3年ぶりにタバコが値上げされますが,本会はこれを歓迎し,今後さらに
タバコ税と価格が段階的に大幅に引き上げられていくよう,関係機関に強く要請します。
1.たばこ税及び価格を大幅に引き上げていくことは,
(1)国民の疾病予防と健康増進のための喫煙抑制と受動喫煙防止
(2)未成年者の喫煙防止効果と健康生活の育成,思春期と子育て支援
(3)医療費抑制と,寿命及び健康寿命の延伸
など,国民の健康福祉上,効果と見返りの極めて大きな優れた施策です。
2.今回のタバコ値上げで特記すべきことは,税上げに上乗せして,売れ筋の40銘柄が増
税分を上回る値上げとなったことです(1箱10円の上乗せ)。
タバコ業界は,これまでタバコ税の引き上げには強く反対してきました。
しかし,タバコ各社ともに,2008年導入予定のICカード式タバコ自動販売機にかかる
投資負担増などを理由に,初めて,増税分を上回る値上げをしましたが,
これは,タバコ税をもっと大幅に引き上げても,タバコ会社の収益が増える場合には
(タバコ対策費に充当する場合を含め),タバコ会社は税上げを受け入れることが実績と
して示された訳で,タバコ業界が今後タバコ増税に反対する論拠を自ら放棄したと言え
ます。
3.今回の値上げに当たって,当初,フィリップ・モリスは主力銘柄である「マールボロ」
など全銘柄の3分の2で,30円の値上げを財務省に申請しましたが,財務大臣は「上
げ幅が自販機の投資負担増を上回る」と,値上げ幅を縮小するよう異例かつ不当な圧縮
介入を行いました。
値上げとその経営リスクは,企業経営の根幹であり,経営責任を取れない財務大臣(財
務省)の口出しをする問題ではありません。越権行為であり,不当介入と言わざるを得
ません。
4.増税幅を超える値上げは,消費者(喫煙者)にとっても,非喫煙者にとっても利益にな
ります。増税幅を超える値上げは,消費者(喫煙者)を減らす動機づけになるし,非喫
煙者も広くは国民の健康増進の大いなる利益となることであり,財務大臣は,喫煙者及
び広くは国民の健康をタバコから守るためにタバコ規制枠組条約に則り,喫煙者を減ず
ることになる値上げに,不当に介入すべきではなく,もっと大幅な段階的税上げと値上
げをこそ,進めるべきです。
5.今後,タバコ税を段階的に引き上げることにより,その財源を,タバコ栽培農家の転業・
転作,小売店の転業支援,タバコ対策基金,徹底した未成年の喫煙防止費用(ICカー
ド式自販機に合わせ指紋識別機能の付加を義務づけるなどを含め),健康推進やがん対
策費用への充当などに充てる政策を進めるべきです。
2005年2月に発効したタバコ規制枠組条約は,その早期の実現を求めています。
6.先の通常国会で成立した「がん対策基本法」(2007年4月1日施行)は,
「第十二条 国及び地方公共団体は,喫煙,食生活,運動その他の生活習慣及び生活
環境が健康に及ぼす影響に関する啓発及び知識の普及その他のがんの予防の推進のた
めに必要な施策を講ずるものとする。」
としており,附帯決議においても,
十九,がんをはじめとする生活習慣病の予防を推進するため… 喫煙が健康に及ぼす
影響に関する啓発及び知識の普及を図るほか,喫煙者数の減少に向け,たばこに関す
るあらゆる健康増進策を総合的に実施すること。
と唱っており,本法の実効的運用は,タバコ増税・値上げと不可分とされるべきです。
7.また,2005.12.1に,政府・与党医療改革協議会で決定した医療制度改革大綱によれば,
以下が盛り込まれました。これを至急に実現すべきです。
U安心・信頼の医療の確保と予防の重視 (2)予防の重視
▽生活習慣病予防のための取り組み体制
「喫煙等に関する目標を設定し,国民の生活習慣改善に向けた普及啓発を積極的
に進め,効果的・効率的な健診・保健指導を義務づける」
▽がん予防の推進
「禁煙支援などの生活習慣の改善を進める。たばこ税を引き上げるべきだとの意
見は,税制改正全体の中で論議していく」
8.平成18年度税制改正大綱・予算重要政策(2005/12/15)…自民党HP掲載
の4ページに「現下の極めて厳しい財政事情に鑑み,公債発行を極力圧縮するとの観点
から,たばこ税の税率を引き上げる。」とあり,
63ページの検討事項3に
「近年,国際条約の発効や国民の健康増進の観点から,たばこ消費を積極的に抑制す
べきとの指摘も出てくるなど,たばこをめぐる環境は変化しつつある。
このような指摘は,財政物資というたばこの基本的性格に係わるものであることか
ら,たばこに関するあらゆる健康増進策を総合的に検討した結果を受けて,たばこ
税等のあり方について,必要に応じ,検討する。」
とあります。6〜7項ともあわせ,これを至急に実現すべきです。
9.また,2005.11.25の平成18年度の税制改正に関する答申で
政府税調の答申に盛り込まれていない主な意見
(最後の行) その他
イ たばこの税金は低すぎる。大幅な税率引上げを検討すべき。
が,今後の検討課題として,昨年度頭出しをされたのですから,答申へ向け,政府税調
においても,至急に進めていただくべきです。
(なお,2006.6.16の税制調査会第47回総会・第56回基礎問題小委員会合同会議(6月
16日開催)後の石会長記者会見の模様
http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/kaiken/b47kaiken.htm で,石会長は
以下のように述べています。
「それから,酒・たばこについては,今日はたばこだけ出てきましたが,やっぱり
これから高齢化になり健康維持といった点からの提言が色々出てくるのだと思い
ます。たばこ・酒あたりについて,そういう視点から,単に税源確保というので
はなくて,新しい考え方といったような,そういう切り口も今後必要になってこ
ようかなと考えております。」
10.本年(2006年)4月より,禁煙治療(ニコチン依存症管理料)の保険適用が実施され,
6月からはニコチンパッチの診療報酬算定が認められました。この算定医療機関も急速
喫煙者をニコチン依存症から解放するためには,禁煙治療だけでなく,受動喫煙防止の
徹底(禁煙場所の拡大)と並んで,タバコ税と価格を上げることが,社会的禁煙支援(サ
ポート)として不可欠です。
今後さらにタバコ税と価格が段階的に大幅に引き上げられていくよう,関係機関に
強く要請いたします。
以 上
参考:日本禁煙学会の声明