本会は,以下の要請を政府税制調査会に提出し,同じ趣旨を,
総理官邸,与党税制調査会にも送りました。

                                      2005年12月19日

税制調査会 会長  石 弘光 様

 
                     NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
                             会長  若林 明

税制調査会で,タバコ消費とタバコ病をなくすための
タバコ増税のあり方の論議・答申をお願いします

  以下の点につき,税制調査会で論議し,答申を出していただくようお願い申し上
げます。


1.
 タバコ増税はタバコ消費とタバコ病をなくすために,ということが国民の健康
増進のために大切かと思います。タバコ税がないと困るような施策にタバコ増
税分を充てることは,タバコ依存の政策なので,タバコ振興になりかねず,今
年2月に発効した「たばこ規制枠組条約」の普及と浸透に相容れないことにな
ります。
 政府税制調査会として,中長期的にタバコ規制を進める施策に,タバコ増税
をきっちり位置づけて,タバコ増税のあり方を進めていただくようお願いします。

2.
 今回12/15の与党の税制大綱でのタバコ増税には,以下5項のように,主要
新聞各紙とも,社説等で批判的ですし,
世論も賛同しないのではと思います。
タバコ増税による国民の健康増進施策に,お力をよろしくお願いします。

タバコ税を引き上げることは,
(1)国民の疾病予防と健康増進のための喫煙抑制,医療費抑制と健康寿命の
  延伸 
(2)未成年者の喫煙防止効果
など,国家財政と国民の健康福祉からも,効果と見返りの極めて大きな優れた
施策です。


 中長期的な視点から,段階的に引き上げていくことが有効なことは,例えば英
国などでも成果を上げていて,これを日本に当てはめたシミュレーションの一例
を以下にお示しします。
   http://muen2.cool.ne.jp/zeiagesimul0512.pdf

3.
平成18年度税制改正大綱・予算重要政策(12/15)…自民党HP掲載

http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2005/seisaku-018.html
4ページに「現下の極めて厳しい財政事情に鑑み,公債発行を極力圧縮する
との観点から,たばこ税の税率を引き上げる。」

63ページの検討事項3に
「近年,国際条約の発効や国民の健康増進の観点から,たばこ消費を積極的
に抑制すべきとの指摘も出てくるなど,たばこをめぐる環境は変化しつつある。
このような指摘は,財政物資というたばこの基本的性格に係わるものであるこ
とから,たばこに関するあらゆる健康増進策を総合的に検討した結果を受けて,
たばこ税等のあり方について,必要に応じ,検討する。」

とあります。

上記記載の検討事項3は,厚生労働省が事務局をしている「たばこ対策関係
省庁連絡会議」及び「政府税制調査会」で,中長期的なあり方を打ち出してい
ただくべきことかと思います。

4.
平成18年度の税制改正に関する答申
政府税調の答申に盛り込まれていない主な意見11/25

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/171125ik.htm
(最後の行) その他
イ  たばこの税金は低すぎる。大幅な税率引上げを検討すべき。

が,今後の検討課題として,今年度頭出しをされたのですから,答申へ向け,
ご尽力をお願いいたします。
http://www3.ocn.ne.jp/~muen/yobo/seihuzeicho2005.htm

5.
2項で触れた,今回のタバコ増税については,主要新聞各紙とも,社説等で,
以下のように批判的です。今後このようなことが繰り返されないよう,政府税制
調査会として,4項のように,今後のご検討と答申をお願いいたします。


(1)朝日新聞2005年12月17日(土曜日)
【社説】税制大綱 改革の道筋が見えない
 
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
 「まだ、なんとかなるさ」。そんな本音が透けて見えるようだ。与党がまとめた
06年度の税制改正大綱は、抜本的な改革論議をそっちのけにして、目先の問
題に終始した。
 それでも負担増の規模は2兆円に達する。財政が抜き差しならぬところにある
ことを物語っている。
 与党の姿勢を象徴するのが、たばこ増税だ。引き上げ幅は1本1円で、増税分
は児童手当を拡充する財源に充てる。
 日本のたばこの値段は英米よりもはるかに安い。周囲の人の健康も損なうこと
もあり、私たちは「ひと箱千円だっていい」とすら主張した。少子化対策として児
童手当の拡充は必要だとも考える。
 だからといって、今度のようなやり方は支持できない。
 税制は経済や社会全体を踏まえて設計されるべきであり、公平、公正である
のが基本だからだ。取りやすい所から取るという安易な考えでは、この先に控え
る大がかりな税制の見直しなど望めない。
 児童手当の財源についても、まずは高齢者に向けられていた分を回すなど、
社会保障費の枠の中でのやりくりを考えるべきではないか。
(略) その一方で、06年度予算での新規国債発行額は30兆円に抑え込む、
という目標を小泉首相は掲げている。これを達成するには、新たな増収策が欠
かせない。
 たばこ増税は、そうしたなかでの妥協の産物というほかない。(略)

(2)12月16日付・読売新聞
社説(1)[税制改正]「抜本改革へ環境は整備された」

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20051215ig90.htm
 デフレ脱却のため続けられていた臨時異例の減税措置が、大幅に整理合理化
されることになった。消費税率引き上げを柱とする抜本的税制改革に踏み出す環
境が整った、と言えよう。
 自民・公明両党が、来年度の税制改正大綱をまとめた。(略)
 酒、たばこの税制も見直される。酒税はビール、清酒など10種類に細分化され
ていた分類を、発泡性酒、醸造酒、蒸留酒、リキュールなど混成酒の4分類に再
編し、各分類内の税率格差を縮める。
 その一環として、ビールや清酒は減税し、「第3のビール」やワインは増税する。
新たな酒類には分類内の最高税率を適用する。合理化で、節税を狙った不毛な
開発競争に歯止めがかかるだろう。
 たばこ税は、1本当たり約85銭増税する。日本は先進各国に比べ、税額が少な
く、小売価格も圧倒的に安い。未成年喫煙防止のためにも引き上げが必要だ。
 この税収について、公明党は児童手当拡大との関連を明示するよう主張していた。
使途の特定は財政を硬直させるので好ましくない。一般財源とすることで落着させ
たのは妥当な判断だ。(略)

(3)日経新聞
社説1(12/16) 2兆円増税で迫られる歳出の徹底削減
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20051215MS3M1500K15122005.html
 (略)たばこ税を増税して価格を1本につき1円引き上げ、児童手当の拡充に充て
る。マイルドセブンは290円となるが、英国の約1000円(20本入り)など欧米と比べ
日本のたばこは安い。医療費抑制のためにもさらに増税してよいのではないか。
(略)

(4)産経新聞12/16
【主張】与党税制大綱 正念場に向け規律確立を

http://www.sankei.co.jp/news/051216/morning/editoria.htm
 自民、公明の与党税調が来年度税制改正大綱をまとめた。再来年の定率減税
全廃を決める一方で、児童手当拡充の財源としてたばこ税を引き上げるちぐはぐさ
も見せた。来年が正念場となる歳出・歳入一体改革に向け、改めて税財政規律の
確立を求めたい。
 今回の最大の焦点は再来年の定率減税の全廃だったが、意外なほど円滑に決
まった。景気対策として導入された減税は景気が回復した以上、廃止するのが筋
であり、すでに政府税調も全廃を求めていた。
 これを増税とみる一部世論の批判に流されなかったのは、自民党税調の議論が
真っ当になってきた証しとみたい。企業向けのIT(情報技術)投資と上乗せ分の研
究開発投資減税を、一部新減税に衣替えしはしたが、原則廃止したのも同じ流れ
である。
 これは小泉構造改革への圧倒的支持の効果が、「政治の道具」として批判され
てきた税の分野にも広がってきた結果とみることもできる。とくに政治介入が強かっ
た酒税が、「第三のビール」問題をきっかけに四つの課税区分に簡素化されるのは
前進だろう。
 その一方で、中小企業向け投資減税の二年延長など既得権益を引きずっている
ような措置もある。とりわけ、一本一円のたばこ税の増税理由には納得しがたい。
 与党税調の説明は、児童手当支給対象を小学校三年生から六年生へ拡充する
ための財源だという。公明党の強い要求を自民党が受け入れたためだが、たばこ
と児童手当の「負担と給付」の関係は極めて希薄である。
 しかも、児童手当拡充の政策的意味もあいまいだ。少子化対策が理由らしいが、
一人五千−一万円程度の手当で効果が期待できるとは思えない。総合的対策の
一環としてならまだしも、単なるばらまきに終わろう。
 政府は二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支黒字化を目指し、来年半ばに歳出
・歳入一体改革の工程表をまとめる。不可避となった増税規模を圧縮するには、限
られた財源をいかに有効に使うかという規律が求められる。
 たばこ税を増税するなら財政再建に寄与させるべきである。ばらまきを容認してい
るようでは、消費税引き上げへ国民の理解も得られない。

(5)東京新聞12/16 
社説 与党税制大綱 増税するなら身を削れ

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20051216/col_____sha_____002.shtml
 (略)たばこ税も児童手当拡大の事実上の財源として、一本当たり約一円引き上
げられる。たばこ増税には抵抗は少ないだろうが、たばこ税と児童手当との関係が
薄いことや、児童手当がうたい文句通り少子化対策に効果があるかなど、疑問点
はある。(略)

連絡先
NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
〒540-0004 大阪市中央区玉造1-21-1-702
Tel・Fax 06-6765-5020  http://www3.ocn.ne.jp/~muen

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