2016年11月30日 17時41分 読売 http://www.yomiuri.co.jp/national/20161130-OYT1T50028.html
原則、全館禁煙となっている堺市本庁舎(本館、高層館)で本館11階の市議会フロアに例外的に設けられている「喫煙所」の存廃が注目されている。
「たばこを吸うのも権利の一つ」などとする市議の声に押され、市が特別に認めてきたが、28日に開会した11月定例議会で、市民から喫煙所廃止を求める請願が出され、市民らも傍聴できる公の舞台で論戦が交わされることになった。
喫煙所は約20平方メートル。イス8席と2台の空気清浄機、灰皿があり、天井では2台の換気扇が回り、煙を吸引する機能がついている。ただ、喫煙所の扉は完全密閉式の形状ではない。
今回、請願を出したのは、同市南区在住で、一般社団法人・日本禁煙学会大阪支部理事を務める野上浩志さん。議会への請願は議員の紹介が必要で、長谷川俊英市議が仲立ちした。
請願書では▽扉を開閉する際にたばこの煙が漏れ、非喫煙者の健康リスクになっている▽庁舎内は原則禁煙なのに議員だけ例外なのは公平性を欠く――などとし、喫煙所の廃止を求める。
市によると、市議会フロアを含む12階建ての本庁舎本館は2004年に完成。先立つ03年5月、官公庁などに対し、受動喫煙の防止措置を求めた健康増進法が施行され、市役所も原則、全館禁煙とされた。しかし、当時、愛煙家の市議が多かった議会側から新しい本館に喫煙所を1か所設けてほしいとの強い要望があり、市は約210万円を確保し、部屋を設置。この時も大勢の市民から批判を受けた。
市は11年には条例で市役所周辺や南海堺東駅前などを路上喫煙禁止区域に指定。違反者には1000円の過料を課すなど、禁煙徹底の動きを進めるが、市議会の喫煙所は「聖域」のように守られ、現在に至っている。
今回、請願に協力した長谷川市議は「(喫煙所は)議員のわがままに過ぎない。いいかげん決着をつけたい」と廃止を主張する。だが、市議の間からは「たばこを買うことで税収増に貢献している」「直接、市民に迷惑を掛けているわけではない」などという声が漏れ聞こえ、現時点では請願が採択されるかどうかは流動的な情勢だ。
請願を巡る議論は定例議会の本会議や委員会などで論議される。
府内の他自治体を見ると、市役所庁舎自体は健康増進法などに伴い、原則禁煙となっているが、箕面、高槻、東大阪、泉大津の各市議会フロアなどでは例外的に喫煙室や喫煙スペースが設けられている。これら各市の議会事務局によると、市民から廃止を求める請願などは近年出ていないという。
存廃を巡り、市議会で論戦が行われる堺市本庁舎本館の市議会フロアにある喫煙所(堺市で) 市議会が入っている堺市本庁舎本館(右側。左に立つのは高層館) 新聞写しpdf