動物村の大事件
 

 

 


                         

      絵と文 柴田彩芳 広瀬有沙 内藤優里 大島麻利亜 斎藤 綾

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表表紙 (カバー)

 

 

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(1)

 

動物村のもくもく大事件

はじまり、はじまりー

− ぬく − 

 

 

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(2)

 

あるところに動物村がありました。


その村は、とても栄えていて、平和な村でした。


村中では、いつも笑顔がたえず、みんなが仲良く、幸せに暮らしていました。

− ぬく −

 

 

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 その村のはずれに、静かに暮らしている犬のおじいちゃん、お

ばあちゃんがおりました。

 この夫婦は、とてもかわいい子猫を子どものようにかわいがっ

ていました。
「ゲン太よ、今日も元気じゃのう。いつまでも、元気でいておくれよ。」
おじいちゃんは、ゲン太の頭をなでて、言いました。

 

− ぬく −

 

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そんなある日、動物村に、ある家族が引っ越してきました。
 この家族の親は、頭からもくもくと煙を出す、とても変わった

家族でした。
村の人たちと顔をあわせても、あいさつもしないし、村の住人とおつき合いするのをさけているようでした。

 

− ぬく −

 

 

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この家からは、いつも灰色の煙がもくもくと出ていました。

 

住人たちは、なぜかその煙に近づくと、せきが出て、子どもた

ちも、昔のように、外で遊ぶことができなくなりました。

 

− ぬく −

 

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数日後、犬の老夫婦の家で、事件が起きました。


あんなに元気だったゲン太が、いつものように外で遊んで帰ってくると、せきが止まらずに苦しんで、病気になってしまったのです。

 

おじいちゃんとおばあちゃんは大あわてで、病院に電話しまし

た。

「もしもし、大変です。家のかわいいゲン太が病気になってし

まったんです。急いできてください。」

 

− さっと ぬく −

 

 

 

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しばらくして、病院からドクター犬が到着しました。


ドクター犬は急いでゲン太のようすを見ましたが、原因がわかりません。ひとまずせきが止まる薬を4日分渡して、安静にするように言いました。
おじいちゃん、おばあちゃんは心配で、ずっと泣いていました。

 

ドクター犬は、つぶやきました。

「おかしいなぁ。最近、原因不明でせきが止まらない患者さん

が増えている。なんとか原因をみつけなければ…」

 

− ぬく −

 

 

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一方、村長も頭を悩ませていました。

最近,引っ越してきたあの家から出る煙について、村の住人た

ちから苦情がたくさん来ていたからです。

村長は、村の平和を守るために、村一番の長老である、クスノ

キ博士に相談に行きました。

 

村長の話を聞いて、ゆっくりとクスノキ博士は答えました。

「村をおおう煙を出している家は『もくもく家族』じゃ。はる

か遠くにある『たばこの国』の住人で、今までいろいろな村を

転々としては、煙を出して村を滅ぼしてきたということじゃ。

 

あの煙を吸い続けると、目やノドが痛くなり、ぜん息になった

り、やがて肺や心臓や脳までも病気になってしまうことがある

んじゃ。

 

何せあの煙の中には、中毒をおこすニコチンだけでなく、酸素

のじゃまをする一酸化炭素や、がんをおこすタールがたくさん

含まれているんじゃ。

 

そんなわけで村人がみんな逃げてしまい、そのうち誰もいなく

なってしまうそうじゃ。」 とゆっくり話しました。

 

− ゆっくり ぬく −

 

 

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それを聞いた村長は考えこんでしまいました。
「こんなに平和だった村が滅んでしまうなんて…」

 そんな村長のもとに、ドクター犬があわててやってきました。
 「探しましたよ、村長さん。 
 村中の病気の原因は、あの煙だったんですよ近くの人ほど病

気になる人が多く、隣村に行くと病状が軽くなることがわかっ

たんです。」

 

− さっと ぬく −

 

 

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それを聞いた村長は、

ガーン!! とショックを受けて、ヘナヘナと座りこんでしまいま

した。

「やはり病気はの原因は、あの煙だったとは…もうだめだぁー」

 

ドクター犬は、そんな村長に

「村長さん、村の一大事なんです!

しっかりしてください!」と叫びました。

 

− ぬく −

 

 

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 村が滅びるといううわさが、一晩のうちに、村中に流れていま

した。
このうわさで村を出て行ってしまう人々もたくさんいました。


村はしだいにさびしくなっていきました。

 

− ゆっくり ぬく −

 

 

 

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村長は、このままでは村が滅びるのも、時間の問題だと思い

村に残った住人をクスノキ博士のもとに集め、村始まって以来

の一大事を、どうやって乗り切ろうか、話し合うことにしまし

た。

犬のおじいちゃん、おばあちゃんも、ゲン太を助けるためならと参加しました。

− ゆっくりとぬく −

 

 

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村の住人たちは、まず、どうしたらもくもく家族の煙を止める

ことができるか、クスノキ博士の意見を聞くことにしました。


クスノキ博士は思い出すように、ゆっくりと話し始めました。
「遠い昔、昆虫村で、もくもく家族の被害に苦しむ住人たちが、

力を合わせて、もくもく家族を追い出したという話があった。
この時は、大きなうちわでもくもく家族を吹っ飛ばしたそうだ。

しかし、わしは、それだけではまだまだ甘かったと思っている。

そこで、皆で力を合わせて、もくもく家族にホースで水をかけ

て、巨大なせんぷうきで、遠くまで吹っ飛ばす、という方法は

どうじゃろうか・・・」

 

− ぬく −

 

 

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それを聞いた犬のおじいちゃんは、「吹っ飛ばしただけでは、ま

た違う村が、わしらと同じように悲しい思いをしてしまう。

もう、誰もこんな思いをしないように、もくもく家族の煙が完全になくなるように考えなくてはダメじゃ。

− 間 −

 私たちがゲン太をかわいく思うように、あの家族にも子どもが

おった。 追い出す方法ではなくて、お互いにとって、よい方法を考えられんだろうか…」と村人たちに訴えました。

 

− ぬく −

 

 

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 ドクター犬は、おじいちゃんの肩に手をかけて、

「村長さん、おじいさんの意見にわたしも賛成です。無理に追

い出しても、また、どこかにたどりついたもくもく家族は、同

じことを繰り返し、苦しむ村が出てしまうでしょう。

 皆でもくもく家族と話し合って、私たちの気持ちを伝えてはど

うでしょうか?

 うまくいくかどうかわかりませんが、村人が一つになって心を

こめて話せば、きっとうまくいくはずです!!

 

村長は

「よし、ドクター君。皆で協力してがんばろう!」と言って、

村人たちといっしょに、もくもく家族の家に向かいました。

 

− さっと ぬく −

 

 

 

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もくもく家族の家に着いた村人たちは、皆、余りの煙たさにマ

スクをしていました。

そして、皆の訪問に迷惑そうなもくもく家族に、皆の気持ちを

伝えました。

 

犬のおじいちゃんは、涙を浮かべていっしょ懸命に話し始めま

した。

「あんたたちには悪いが、あんたたちが出す煙を吸った者たち

が、皆、次々とせきが止まらなくなり、気分が悪くなったり、

病気になってしまうんじゃ。

家のかわいいゲン太も、かわいそうに、この前からせきが止ま

らず、夜も眠れず、御飯も食べられない…」

と大きな声で泣きました。

 

それに続いてドクター犬が話し始めました。

「あなたたちにも、かわいい子どもがいるなら、私たちの気持

ちもわかっていただけると思います。皆、大切な家族を病気か

ら守るために、必死なんですよ。」

 

村の住人たちは、皆で心からお願いしました。

「どうか、

煙を出すのを止めて下さい

− ゆっくり ぬく −

 

 

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すると、驚いたことに、さっきまで恐い顔をしていたもくもく

家族のお父さんが、突然泣き出しました。

「そうだったんですか。

今まで、どこの村に行っても、突 然村人に追い出されたり、私

たちをさけるように、村から出て行ってしまったりしたので、

私たちは自分たちに原因があると知らずに、勝手に村の人たち

を憎んできました。

でも、皆さんの話を聞いて、私たちの出す煙が、皆さんにとっ

て、身体に良くないものだということがわかりました。

これ以上、皆さんに迷惑をかけるわけにはいきません。  私た

ちは、自分たちの国に帰り、誰にも迷惑をかけないように暮ら

していきます。」  

と言いながら、ポロポロと涙を出しました。

 

これには、村人たちもビックリしました。

 

− ゆっくり ぬく −

 

 

 

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そして、もくもく家族は、早速荷作りをして、村人に手を振っ

て旅立ちました。

 

犬のおじいちゃんも、ドクター犬も村長も、ホッとしていました。

 

「やれやれ、村始まって以来の大事件も、おかげで、どうやら無事に解決できた。これで、また平和な村にもどることができる。」

 

村人たちは、だんだんと小さくなっていくもくもく家族を、い

つまで も見送っていました。

 

− ゆっくり ぬく − 

 

    

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動物村には、また前のような平和がもどって来ました。
村中に笑顔があふれ、村人も、前よりももっとなか良く、幸せに暮らしていました。

 

村長も、その様子をながめながら、いつまでもこの平和が続く

ことを願っていました。

 

− ぬく −

 

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犬のおじいちゃん、おばあちゃんも、元気になったゲン太と以前

のように、幸せに暮らしていました。

「ゲン太や、元気になって良かったのう。

あれから、もくもく家族のうわさはどこからも聞かないし、無事に自分たちの国に着いて暮らしているのじゃろう。

わしらも、いつまでも元気でなか良く暮らしていこうなぁ。」

といつものように、ゲン太の頭をなでながら言いました。

 
                     (おわり)

制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 (200111月発刊