えがおを まもろう
 

 

 

 


                         絵と文  福与 みちよ

                      (2010.3コンクール優秀作品)

 

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 表 表紙 (カバー)

 

 

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由美(ゆみ)ちゃんと、勇斗(ゆうと)君、大輔(だいすけ)君の三人は、とても仲良しです。

 

今日は、大輔君の家へ遊びに行く事になりました。

嬉しそうに、大輔君が話し出しました。

「今度の新しい家は、ぼくのお父さんが設計して、建てたんだよ。」

 大輔君のお父さんは、会社や住宅の設計の仕事をしています。

「とっても、楽しみだわ。」

 由美ちゃんが、明るくはずんだ声で、言いました。

−ぬ く−

 

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大輔君の家が見えて来ました。

 緑の中で、白い壁が、とてもきれいです。

 茶色の屋根や、窓が、おしゃれな造りになっています。

「ワアー、素敵なお家ねえー。」

由美ちゃんが、歓声を上げました。

「壁が、真っ白で、ピカピカだ。」

勇斗君も、びっくりです。

大輔君が、先に玄関に入って行きました。

 

        −ぬ く−

 

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 三人は、玄関を抜けて、部屋に入って行きました。

 由美ちゃんは、入った途端に、部屋の中の嫌な臭いに、鼻をつまみました。

 勇斗君は、ゴホゴホと咳込んでしまいました。

 大輔君は、毎日過ごしている家なので、慣れてしまったのでしょうか、平気な顔で入って行きました。

 「何なのかしら? この嫌な臭いは…。」

 由美ちゃんは、鼻をつまみながら、あたりを見まわしました。

 

         − ぬ く−

 

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部屋の中は、壁のあちこちに、すすけた汚れが付

いていました。

勇斗君は、不思議に思いました。

外の壁は、あんなにきれいに見えたのに、部屋の

壁は、なんでこんなに薄汚れて家いるのだろう…。

机に向かって、大輔君のお父さんが仕事をして

いました。その手元から、モクモクと、ケムリが

上がっていました。

 タバコです。

 部屋中のいやなニオイは、タバコだったのです。

 

         −ぬ く−

 

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「やぁ、いらっしゃい。」

 大輔君のお父さんが、笑顔で近づいて来ました。

 部屋の角に置かれた、ベビーベットからは、

隼人君が、ほほえんでいます。

 隼人君は、大輔君の弟で、まだ赤ちゃんです。

 大輔君のお父さんの手に持っているタバコからは、モクモクと灰色のケムリが上がっています。ケムリは、天井めがけて、広がっていっています。

 部屋の壁が薄汚れていたのは、タバコのヤニのせいでした。

 

−ぬ く−

 

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大輔君のお母さんも、困り顔です。

「いつも、タバコを止めてと言っているのに、なかなか止めてくれないのよ。」

「いやぁ、仕事をし始めると、ついつい、タバコに手が伸びちゃうんだよ。でも、離れて、吸っているから、そんなに心配はいらないんだよ。」

 大輔君のお父さんは、そう言いましたが、由美ちゃんは、隼人君や、みんなの身体が心配になりました。

 

ぬ く−

 

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家へ戻った由美ちゃんは、なんだか元気がありません。

 喉の奥も、痛くなっていました。

 由美ちゃんのお父さんは、街のお医者さんです。

お父さんは、病院の出口まで患者さんを見送っていました。

 「先生、お陰様で良くなりました。ありがとうございました。」

 おばあさんは、笑顔であいさつをして、帰って行きました。

 「お帰り、由美。どうした? 元気がないね。」

 由美ちゃんに気付いたお父さんが、聞いて来ました。

 

ぬ く−

 

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 「由美、喉を見せてごらん。」

 由美ちゃんは、大きく口を開けて、喉の痛みを見てもらいました。

 由美ちゃんは、今日の大輔君の家の事を、話しました。

 タバコの好きな大輔君のお父さんや、同じ部屋で過ごす、赤ちゃんの隼人君の話しを、じっと聞いていたお父さんは、由美ちゃんに大切な事を話し出しました。

 

−ぬ く−

 

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 「タバコは、身体にとっても害があるんだよ。肺ガンという病気へのリスクもあるし、お腹の大きなお母さんが、タバコを吸うと、お腹の中の赤ちゃんにも、悪い影響があるんだ。吸っている人は、もちろんだけど、(そば)でそのケムリを吸い込んでしまっても、身体にとても悪いんだよ。

 お父さんも心配だ。明日、二人で大輔君のお父さんに会いに行こう。」

 

−ぬ く−

 

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 次の日、由美ちゃんとお父さんは、大輔君の家へ出掛けました。

 大輔君のお父さんは、ちょうど家で仕事をしていました。

 由美ちゃんのお父さんは、お医者さんの立場から、タバコを止める事を(すす)めました。

 「ご自分の健康の事もありますが、ご家族の皆さんにも、悪い影響があるんですよ。

 大切な家族のために、タバコを止めてください。私も医者として協力しますから。」

 

ぬ く−

 

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 大輔君のお父さんは、なかなか決心がつきません。

 大輔君や、大輔君のお母さんが、止める様に頼んでも、ずっと考え込んだままです。

 大輔君のお父さんも、悪いのは判っているのです。

 でも、長い年月の習慣があるので、止めるという気持ちには、なかなか、なれませんでした。

 

− ぬ く−

            

 

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 由美ちゃんは、悲しくなりました。

 こらえきれずに、大粒の涙を流しながら、大輔君のお父さんに頼みました。

 「おじさん、おじさんにとって、おばさんや、大輔君や、隼人ちゃんは、大切な家族じゃないんですか?!。おじさんは、家族の笑顔を守っていますか?

 お部屋の壁みたいに、隼人ちゃんの肺の中も汚れていっちゃうのは、とってもとっても悲しいです。」

 

−ぬ く−

 

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由美ちゃんの涙に、大輔君のお父さんの心は、動きました。

 自分は、大人なのだ。

 大人なのに、こんな小さな由美ちゃんから、大切な事を教わった。

 家族を守らなければいけない自分が、家族を危険にさらしていたんだ。

 今なら、タバコを止められそうです。

 いえ、止めなくてはいけません。

大輔君のお父さんは、そう決心しました。

 

ぬ く−

 

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 「私も、医者として、アドバイスして行きますからね。」

 由美ちゃんのお父さんも、笑顔で見守っています。

 大輔君のお父さんは、隼人ちゃんを抱き上げると、こう言いました。

 「これからは、タバコを止めて、健康第一で頑張るぞ。隼人の笑顔を守っていくからね。」

 隼人ちゃんが、嬉しそうに笑い声を上げました。

 

− 完

制作・発刊 NPO法人「子どもに煙環境を」推進協議会 201212月発刊)