絵と文 福与 みちよ (2010.3コンクール優秀作品) |
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表 表紙 (カバー) |
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(1) 由美ちゃんと、勇斗君、大輔君の三人は、とても仲良しです。 今日は、大輔君の家へ遊びに行く事になりました。 嬉しそうに、大輔君が話し出しました。 「今度の新しい家は、ぼくのお父さんが設計して、建てたんだよ。」 大輔君のお父さんは、会社や住宅の設計の仕事をしています。 「とっても、楽しみだわ。」 由美ちゃんが、明るくはずんだ声で、言いました。 −ぬ く− |
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(2) 大輔君の家が見えて来ました。 緑の中で、白い壁が、とてもきれいです。 茶色の屋根や、窓が、おしゃれな造りになっています。 「ワアー、素敵なお家ねえー。」 由美ちゃんが、歓声を上げました。 「壁が、真っ白で、ピカピカだ!。」 勇斗君も、びっくりです。 大輔君が、先に玄関に入って行きました。 −ぬ く− |
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(3) 三人は、玄関を抜けて、部屋に入って行きました。 由美ちゃんは、入った途端に、部屋の中の嫌な臭いに、鼻をつまみました。 勇斗君は、ゴホゴホと咳込んでしまいました。 大輔君は、毎日過ごしている家なので、慣れてしまったのでしょうか、平気な顔で入って行きました。 「何なのかしら? この嫌な臭いは…。」 由美ちゃんは、鼻をつまみながら、あたりを見まわしました。 − ぬ く− |
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(4) 部屋の中は、壁のあちこちに、すすけた汚れが付 いていました。 勇斗君は、不思議に思いました。 外の壁は、あんなにきれいに見えたのに、部屋の 壁は、なんでこんなに薄汚れて家いるのだろう…。 机に向かって、大輔君のお父さんが仕事をして いました。その手元から、モクモクと、ケムリが 上がっていました。 タバコです。 部屋中のいやなニオイは、タバコだったのです。 −ぬ く− |
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(5) 「やぁ、いらっしゃい。」 大輔君のお父さんが、笑顔で近づいて来ました。 部屋の角に置かれた、ベビーベットからは、 隼人君が、ほほえんでいます。 隼人君は、大輔君の弟で、まだ赤ちゃんです。 大輔君のお父さんの手に持っているタバコからは、モクモクと灰色のケムリが上がっています。ケムリは、天井めがけて、広がっていっています。 部屋の壁が薄汚れていたのは、タバコのヤニのせいでした。 −ぬ く− |
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スライド7 |
(6) 大輔君のお母さんも、困り顔です。 「いつも、タバコを止めてと言っているのに、なかなか止めてくれないのよ。」 「いやぁ、仕事をし始めると、ついつい、タバコに手が伸びちゃうんだよ。でも、離れて、吸っているから、そんなに心配はいらないんだよ。」 大輔君のお父さんは、そう言いましたが、由美ちゃんは、隼人君や、みんなの身体が心配になりました。 −
ぬ く− |
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(7) 家へ戻った由美ちゃんは、なんだか元気がありません。 喉の奥も、痛くなっていました。 由美ちゃんのお父さんは、街のお医者さんです。 お父さんは、病院の出口まで患者さんを見送っていました。 「先生、お陰様で良くなりました。ありがとうございました。」 おばあさんは、笑顔であいさつをして、帰って行きました。 「お帰り、由美。どうした? 元気がないね。」 由美ちゃんに気付いたお父さんが、聞いて来ました。 −
ぬ く− |
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(8) 「由美、喉を見せてごらん。」 由美ちゃんは、大きく口を開けて、喉の痛みを見てもらいました。 由美ちゃんは、今日の大輔君の家の事を、話しました。 タバコの好きな大輔君のお父さんや、同じ部屋で過ごす、赤ちゃんの隼人君の話しを、じっと聞いていたお父さんは、由美ちゃんに大切な事を話し出しました。 −ぬ く− |
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スライド10
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(9)
「タバコは、身体にとっても害があるんだよ。肺ガンという病気へのリスクもあるし、お腹の大きなお母さんが、タバコを吸うと、お腹の中の赤ちゃんにも、悪い影響があるんだ。吸っている人は、もちろんだけど、傍でそのケムリを吸い込んでしまっても、身体にとても悪いんだよ。
お父さんも心配だ。明日、二人で大輔君のお父さんに会いに行こう。」 −ぬ く− |
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スライド11 |
(10) 次の日、由美ちゃんとお父さんは、大輔君の家へ出掛けました。 大輔君のお父さんは、ちょうど家で仕事をしていました。 由美ちゃんのお父さんは、お医者さんの立場から、タバコを止める事を勧めました。 「ご自分の健康の事もありますが、ご家族の皆さんにも、悪い影響があるんですよ。 大切な家族のために、タバコを止めてください。私も医者として協力しますから。」 −
ぬ く− |
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スライド12 |
(11) 大輔君のお父さんは、なかなか決心がつきません。 大輔君や、大輔君のお母さんが、止める様に頼んでも、ずっと考え込んだままです。 大輔君のお父さんも、悪いのは判っているのです。 でも、長い年月の習慣があるので、止めるという気持ちには、なかなか、なれませんでした。 − ぬ く− |
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スライド13 |
(12) 由美ちゃんは、悲しくなりました。 こらえきれずに、大粒の涙を流しながら、大輔君のお父さんに頼みました。 「おじさん、おじさんにとって、おばさんや、大輔君や、隼人ちゃんは、大切な家族じゃないんですか?!。おじさんは、家族の笑顔を守っていますか? お部屋の壁みたいに、隼人ちゃんの肺の中も汚れていっちゃうのは、とってもとっても悲しいです。」 −ぬ く− |
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スライド14 |
(13) 由美ちゃんの涙に、大輔君のお父さんの心は、動きました。 自分は、大人なのだ。 大人なのに、こんな小さな由美ちゃんから、大切な事を教わった。 家族を守らなければいけない自分が、家族を危険にさらしていたんだ。 今なら、タバコを止められそうです。 いえ、止めなくてはいけません。 大輔君のお父さんは、そう決心しました。 −
ぬ く− |
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スライド15 |
(14) 「私も、医者として、アドバイスして行きますからね。」 由美ちゃんのお父さんも、笑顔で見守っています。 大輔君のお父さんは、隼人ちゃんを抱き上げると、こう言いました。 「これからは、タバコを止めて、健康第一で頑張るぞ!。隼人の笑顔を守っていくからね。」 隼人ちゃんが、嬉しそうに笑い声を上げました。 − 完
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制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
(2012年12月発刊) |