作・絵 中島 美ね子 |
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表表紙 (カバー) |
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ここは動物村、空気がきれいでおいしいのがじまんです。 ところが、最近なんだか少しヘンなんです。 いつも元気でお世話焼きのうさぎのミミさんは、けさも元気がありません。 ミミ 「エッヘン、エヘン! ウッウ、ウッウ…。ヘンねェ…そう、そう、こんな時はこれが一番!」 ……間…… 「ガラガラガラ、ペッペッペッ、アーアー、アーアーアー……だめだなぁ…。ほんとうにどうなってるのかしら? 一度、クマ先生にみてもらったほうがよさそうネ」 ミミさんは、いつも患者がいないことで有名なクマ先生のところに出かけて行きました。 <ぬきながら > ところが、クマ先生の診療所のドアを開けて、びっくり…… |
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ミミ 「ウワッ、先に待ってる人がいる。 あら! カエルちゃんも来てる。カエルちゃん、どうしたのかしら?」 ……間…… カエル 「ウッウン、ウッウン(せきばらいして)…クマ先生、まだ?」 クマ先生 「悪いけど、もう少し待ってくれるかナ」 <ぬ く
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ミミ 「カエルちゃん、どうしたの?」 カエル 「あれ ミミさん。ミミさんもみてもらいに来たの? ぼくはノドがイガイガしてヘンなんだ、ミミさんは?」 ミミ 「わたしも、同じ。ノドがヘンなの」 カエル 「えッ、ほんと? ここにいる人、みんなノドがヘンなんだってよ」 ミミ 「どうしてかなァ? ふしぎだね。みんな同じようにノドがヘンだなんて…。カエルちゃん、なんだか、おかしいと思わない?」 ……間…… 二人が考えていると、ちょうど順番になったので、クマ先が カエルちゃんを呼びました。 クマ先生 「カエルちゃん、どうぞ」 ミミ
「はーい」 <ぬきながら > 何かヘンだと思ったミミさんは、カエルちゃんより先に診察 室に、飛びこんで行きました。 |
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カエル 「ちょっと! ミミさん、ボクの番だよ」 ミミ 「いいの、いいの。いっしょに入らせて」 カエルちゃんの番なのに、ミミさんが入ってきたので、クマ先 生もびっくりです。 クマ先生 「カエルちゃんの番じゃないのかな? ミミさん、あわててど うした?」 ミミ 「ねェ、クマ先生。私ここ二、三日ノドがヘンだから、みても らいに来たんだけど…みーんな、同じらしいね。なんだか少し おかしいと思うんだけど…」 クマ先生 「うーん、たしかに二、三日前からみんなそう言って来る。こ のワシのノドも、少しヘンなんじゃ」 ミミ 「クマ先生も? みんな同時にカゼひくって…どうしてかし ら? この村は空気がきれいだから、カゼなんてだれもひかな かったのに…。村の中で何が起こってるのかしら? 一度、村 の中を調べに行ってみるわ。カエルちゃんもいっしょに行こ う!」 カエル 「えーっ!」 <ぬきながら > 驚くカエルちゃんを引っ張って、ミミさんは診察室を飛び出 して行きました。 |
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クマ先生 「おいおい、診察は……」 ミミ 「後にしまーす」 カエル 「ミミさん待ってよォ」 おおいそぎで待合室を走っていく二人に、野ネズミのお母さ んが驚いてたずねました。 野ネズミ 「あらッ、あなたたち。一体どうしたの、そんなにあわてて…」 ミミ 「動物村の点検! 何か起こってるかも知れないから」 ミミさんは、そのまま外へ走って行きました。野ネズミのお 母さんは、何かを思い出したようすです。 野ネズミ 「あっ! ちょっと待って」 <ぬきながら> ミミさんたちの後を追って、野ネズミのお母さんも出てきま した。 |
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野ネズミ 「ミミさん、ご近所のこと言うとつげ口するようで、いやなんだけど…」 ミミ 「なぁに、何なの。何かあるんだったら早く言って」 野ネズミ 「…実は、モグラさんのことなんだけど…。この間からモグラ さんの家から、ヘンな臭いがして、煙たくて…。 そのころからうちの赤ちゃんが、ゼーゼー言い出してるのよ。私のノドもヘンになったし…」 ミミ 「なんだろ、煙って? くんせいでも作ってるのかしら? めいわくな話だね。
カエルちゃん、ちょっとようすを見に行こう。 ホラ! そんなにこわい顔しないで」 カエル 「ゼーゼー、ノドがヘンなのに……」 <ぬ く
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ふたりは急いでモグラさんの家の近くまでやって来ました。 あたりはだんだんと煙たくなってきました。ヘンな臭いもしま す。 そして、モグラさんの家を見たふたりはびっくり! ミミ 「あ! えんとつからモクモク煙が出てて、いやな臭いがする よ。しかも、煙が、みんなこっちの方に流れて来てるじゃない の。たいへんだ!」 カエル 「ますます、ノドがヘンだ。 ひゅーひゅー」 ミミ 「カエルちゃん、だいじょうぶ? 苦しいのに悪いけど、ホー スをつないで、水が出るようにしてほしいの。もしも、火事だ ったら大変だもの…。私は中に入って、様子を見てくるから。 お願いね」 カエル 「ひゅあーい」 <ぬきながら> ミミさんは、あわててモグラさんの家に飛びこみました。 |
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ミミ 「うわぁ、煙たい。ゴホン! ゴホン! こりゃ、一体何なの! この煙は? ちょっと、モグラさんいるの? モグラさーん!」 ……間 …… ミミ 「あ! モグラさん、こんな煙の中で何してるの。あ! 子ど もがたおれてる。たいへんだっ!」 モグラ 「何なの、じゃましないでよ…ひふぁ…ひさしぶりのタバコ… …シビレルワァ。ファ…」 ミミ 「なにをバカなこと言ってるの! とにかく子どもたちを連れ 出さないと…」 ミミさんは、子どもたちをだきかかえると、家の外へと飛び 出しました。 <さっとぬく > |
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そこに、ホースを持ったカエルちゃんがかけつけました。 ミミ 「カエルちゃん、水、水。思い切り、いっぱいかけてやって! 私は大いそぎで、この子たちをクマ先生のところに連れて行く から、たのんだよ」 カエル 「オーケー! 引き受けたッ、それ!」 <さっとぬく> |
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カエル 「ジャージャー。それっ! まだまだ、ジャージャー」 カエルちゃんは、はりきって、モグラさんのタバコめがけて水をかけました。 モグラ 「何するのよ! 部屋じゅう、水びたしじゃないの。あっ、い やだ! 大事なタバコがびしゃびしゃになってるじゃない! どうしてくれるのよぉ」 カエル 「知るもんか、ジャージャージャー…」 クマ先生もかけつけました。 クマ先生 「おーい、カエルちゃん。もう、そのくらいでいいじゃろう」 <ぬ く
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クマ先生 「コラ! モグラのかあちゃん、タバコがどうしたんじゃ! 子どものそばで、何でタバコを吸うんじゃっ。このおろか者! あんなに子どもが苦しがっているのに、気がつかないほど、吸 う親があるか! ミミさんのおかげで手おくれにならずにすんだが…危ないと ころじゃった。村のきれいな空気を、そんな物で汚してくれる な。みんな、迷惑している。タバコが水浸しになってよかった。 なぁ、みんな?」 動物村のみんなも、「うん、うん」とうなずいています。 モグラのお母さんも、クマ先生にしかられて、目がさめたよ うです。 モグラ 「……すみません…。ひさしぶりに町の友だちからもらったも ので…つい、つい、うれしかったものだから……。 それで…子どもたちは、今どこに……」 クマ先生 「ワシの病院じゃ。今ごろは、元気になってご飯を食べているだろう、早く会いに行ってやるといい」 <すこし間をおいて> 数日後、村には再びきれいなおいしい空気が戻ってきました。 <ゆっくり、ぬく > |
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モグラさんの家に向かう道をミミさんが大きなカゴをもって歩いて行きます。おや? ミミさんがくわえているのは何でしょう? ふしぎに思ったカエルちゃんが、たずねます。 カエル 「アレ? ミミさん、タバコ吸ってるの?」 ミミ 「えっ、これ? よーく見て。煙が出ていないでしょ。これは ね、私の畑の、ニ・ン・ジ・ン」 カエル 「そんなの どうするの?」 ミミ 「モグラさん、あれからタバコを吸うのやめて、ちょっとイラ イラしてるらしいの。だからこの特製のニンジン持って行って あげようと思ってネ。 タバコで弱った体には、ニンジンが一番。タバコをやめるの は、なかなか大変らしいから応援、応援。子どもたちのため、 きれいな空気のため、きっぱりやめてもらわないとね。どう、 カエルちゃんもいっしょに行こうよ」 カエル 「わかった! よし、ぼくもモグラさんに何かいいもの考える かな? 禁煙グッズ、禁煙グッズ、何かないかな?」 ミミさんとカエルちゃんはにぎやかにワイワイ言いながら、モグラさんの家に向かいます。 ミミさんの特製ニンジンを、モグラさんが気に入ってくれるといいですね。 (おしまい) |
制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 (2000年8月発刊)