絵と文 小原美知子 |
スライド1 |
表表紙 (カバー) |
スライド2 |
(1) ぼくのお母さんの仕事は、絵本をかいたり、 イラストをかいたりすることなんだ。 だから、お母さんは、ぼくなんかがかけない大きなトラックや 飛行機、それに怪獣や宇宙人の絵だって思いのまま、何でもか いちゃうんだ。 ね、すごいだろう。 |
スライド3 |
(2) お母さんは、仕事がひと息つくと、 ぼくと一緒に遊んでくれる。 積木をしたり、絵本を読んでくれるお母さんは、大好きだけど、 「ちょっと気分転換ね」 なんて言いながら、タバコを吸うお母さんは好きじゃないんだ。 お父さんも、よくタバコを吸うけど、 横にいるぼくは煙たくって、目やのどが痛くなって、 ものすごく迷惑している。 あんなのより、アイスクリームやケーキの方がう〜んと美味し いと思うのに、大人って変だなぁ。 |
スライド4 |
(3)
と病院へ行ったんだ。 お母さんは気分が悪いって言っているのに、 お医者さんは、 「おめでとうございます」 なんて言うのはどうしてかなぁ。 おまけに、ぼくがこんなに心配しているのに、お父さんも、 お母さんも、うれしそうに ニコニコしちゃって変なの…。 |
スライド5 |
(4) 実は、お母さんのお腹の中に、赤ちゃんがいたんだ。 ぼくに、もうすぐ弟か妹ができるなんて、 なんだかちょっと不思議な気分…。 でも、お医者さんが、 「タバコは、お腹の赤ちゃんに、よくないですよ」 って言っていたのに、 お母さんは、まだタバコを吸っている。 「お腹の赤ちゃん、煙たくないの?」って聞いたら、 「うふふ… 少しだから大丈夫よ…」って笑っていた。 でも… 本当に赤ちゃん、大丈夫なのかなぁ…。 |
スライド6 |
(5) ある晩、ぼくはとっても恐い夢を見たんだ。 緑色をした大きな怪獣が、 口いっぱいにタバコをくわえて、 ぼくとお母さんめがけて、追っかけてくるんだ。 うわあ、たいへんだぁ〜。 周りはあっという間に煙につつまれてしまった。 たいへんだぁ〜。 |
スライド7 |
(6) ぼくは、お母さんを守ろうと、必死で戦うんだけど、 怪獣は、すごい勢いで、お母さんめがけて、煙をどんどんはき 続けるんだ。 「キャーッ」 お母さんの悲鳴。 「お兄ちゃん、助けて 苦しいよ… 苦しいよ… 」 っていう赤ちゃんの泣き声。 だけど、ぼくも煙をいっぱい吸って、 苦しくなって倒れてしまったんだ。 |
スライド8 |
(7) びっくりして目が覚めたぼくは、 お父さんとお母さんが寝ている 部屋のふすまを開けたんだ。 お母さんは、苦しそうにお腹をおさえ、 お父さんは、心配そうに背中をさすっていた。 本当に怪獣が来たんだ!! ぼくはそう思った。 |
スライド9 |
(8) 次の日、お父さんは、お母さんを病院に連れて行った。 入院することになったお母さんに、 ぼくは昨日の怪獣の話をした。 「ごめんね… ぼくがお母さんと赤ちゃんを 助けられなかったから…」 泣きそうな声で言うと、お母さんは笑って言った。 「ううん、お母さんが赤ちゃんを守ってあげられなかったの…。 赤ちゃんがお母さんに、 お腹苦しいよ… タバコやめてよ… って言ってきたの… だから… お母さん もうタバコやめるね…。」 しばらくして、お母さんは元気に退院してきた。 もう、お母さんはタバコを吸わなくなっていた。 |
スライド10 |
(9) それからしばらくして、 元気な女の赤ちゃんが生まれたんだ。 ぼくがお兄ちゃんになったなんて、 なんだか、少し変な気分…。 お父さんは仕事から帰ると、 すぐ赤ちゃんのそばに来て 「いないいないバァー」って 面白い顔でずっとあやしている。 ぼくとお母さんは、そんなお父さんの顔を見て、 二人して、くすくす笑いどおし…。 |
スライド11 |
(10) お母さんはすっかりタバコをやめたけど、 お父さんは、まだ時々吸っている。 でも、お父さんがタバコを吸おうとすると、 ヨチヨチ歩きを始めた妹が、 「メッ! メッ!」と言いながら、 エイッとタバコを取りあげてしまうんだ。 そんな時、お父さんは、ちょっと残念そうな顔で 「もう、タバコやーめた」って言う。 ぼくたちみんな、お父さんが大好きなんだ。 だから、身体によくないタバコは、 本当に早くやめてほしいなぁ〜 って思っていたんだ。 |
スライド12 |
(11) 妹が、三歳になっても お父さんは、タバコをやめなかった。 そんなある日、妹の健診があったんだ。 そしたらお医者さんに、 「ちょっと、ぜんそく気味ですね」 って言われたらしい。 そういえば、よく妹はせきこんだ時に ゼーゼーと苦しそうにすることがあったっけ…。 |
スライド13 |
(12) お母さんは、お父さんが会社から帰ってくるなり、 今日の健診の話をはじめた。 「ぜんそく気味の子どもには、 よい環境ときれいな空気が大切なんだって…。 だから、お父さんのタバコの煙なんて、絶対によくないの。 タバコの煙は、健康な子どもたちにとっても気管支炎や肺炎を 起しやすいし、大人になってからもガンにかかりやすいそうよ。 ねえ、子どもたちの健康のためにも、 タバコをやめてほしいの……」 その話を聞いたお父さんは、 ぼくと妹の顔を、しばらくじっーと見ていたかと思うと、 決心したかのように、大きな声で言ったんだ。 「よーし、決めた! 今日からタバコはやめるぞ!!」 |
スライド14 |
(13) 今日はお父さんの誕生日。 お母さん自慢のお料理と手づくりケーキで、お祝いしたんだ。 お父さんが禁煙して、もう六ケ月。 そこでぼくたちは“禁煙感謝状”を渡したんだ。 『お父さん、ぼくたちのためにタバコをやめてくれてありがと う。いつまでも元気で長生きしてネ。』 思いがけないプレゼントに、お父さんはちょっと照れくさそう。 でもネ、そのあとに今度はお父さんから、ぼくたちに とっても素敵なプレゼントがあったんだよ。 吸わなくなったタバコ代が、貯金箱いっぱいになったら、 みんなでディズニーランドへ行こうな… だって。 やったあ〜!! ぼくも、妹も、お母さんも、大喜び。 今度の夏はディズニーランドだ。 お父さん、禁煙ありがとう。 お母さん、禁煙ありがとう。 みんなのために、いつまでも健康でいてね。 禁煙万歳!! 禁煙ありがとう!! (おわり) |
制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 (1995年10月発刊)