タバコなんてけっとばせ! 

 

 


絵と文  千葉倫子     

 

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カバー

 

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1)表紙

ぼく、サッカーボール。

ぼくの大親友のトオルくんは、高校二年生のサッカー大好きっ子なんだ。ぼくらは、トオルくんが小さいころからずっといっしょ。

だからぼく、トオルくんのことは何でもわかっちゃうんだ。

 

最近のトオルくんは、何だか変なんだよなぁ。

みょうに元気がなくて、ぼくのこともまるで忘れちゃったみたいに、全然いっしょに遊んでくれないんだもん。

 

何でだろう?

       −ぬ く−

 

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2

「ガチャッ」

あっ、トオルくん帰ってきたみたい。

 

あれれ? やっぱり元気ないなあ。

−ぬ く− 

 

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3

うわぁー

    トオルくんが、タバコを吸ってるじゃないか

 

そうか。

    タバコのせいで、なんだか最近、元気がなかったんだな。


どっ、どうしよう。トオルくんがタバコを吸ってたなんて。

                   − ぬ く− 

 

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4

よぉーし。 おろおろしててもダメだ。 ぼくがトオルくんのタバコをやめさせなきゃ。

 

    うーん。

でもどうやればトオルくんはタバコをやめるのかなぁ。

− 少しの間 −

!?

だれ  ぼくをつつくのは

さっと、ぬく− 

 

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ああ  おまえはもしかしてっ。

 

ケムリ
「そうだ。オイラはトオルの吸ったタバコから生まれたケムリだ。ガハハハハ。」

 

おまえがこのぼくに一体何の用だ

 

ケムリ
「何の用だと? 決まってるじゃないか。 トオルがタバコを吸わなくなったら、オイラは消えてしまう。
トオルのタバコをやめさせようなんて言うやつは、目ざわりでしょうがないのさ。
だからおまえが二度とそんなことしないように、チョット注意しにきたんだよ。」

ぬ く− 

 

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(6)

何だと!?  ぼくをどうする気だ

ぼくはそんなおどしなんかちっとも怖くないぞ。
 

ケムリ 
「むむっ、いいのかそんな事言っても。
後で後悔しても知らないぞ。
おまえのそのピカピカの肌に、丸いコゲをつけちゃうぞ」

 

ぼくはトオルくんの大親友なんだ。 トオルくんが元気がないのはおまえのせいだ

ぼくは何がなんでもタバコをやめさせるつもりなんだ。

 

ケムリ
「ほほぉーう。おまえのようなサッカーボールがトオルの親友?
いーや、ちがうね。トオルの親友はこのオイラ、タバコさ。
オイラはいつもトオルといっしょだ」

           −ぬ く− 

 

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7

なにー!? トオルくんの元気をなくす親友なんて、親友なんかじゃないやい。

ぼくは知ってるんだぞ。タバコがどんなにいけないものかを。

 

    タバコを吸ったら、肺が真っ黒になっちゃうんだ。そして病気になって死ぬ人だって、おおぜいいるんだぞ。

タバコは、一度吸い始めるとやめられなくなり、吸えないときはイライラしてくるんだ。

 

    それにトオルくんはまだ17歳なんだ。今が伸びざかりなのに、身長だって伸びなくなっちゃうじゃないか。

運動してもすぐ疲れたりして、弱い体になってしまうんだ。

わかったか

           − ぬ く− 

 

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8

ケムリ
「くそぉ  おまえはなんだか手ごわそうだな。まあいい。トオルがタバコを吸いつづける限り、オイラは生き続けるからな。
それに、トオルはタバコをやめることはできないだろうよ。もうアイツは、タバコ好き好き人間になってしまったからなあ。
イッヒッヒッヒッ。」

 

そっ、そんなことあるもんか。トオルくんは絶対、タバコをやめるぞ。

 

ケムリ
「ムリ、ムリ。タバコをやめる勇気があいつにあるもんか。サッカーのレギュラーをはずされて落ちこんでいたから、オイラが友だちになってやったんだからな。
さぁて、お前をぶっこわしてやることにするか。覚悟しな」

 

わー。もうだめだ  助けて  助けて、トオルくん

 

ケムリ
「あれ? 何だか力が入らないぞ? ど、どうしたんだぁ」

 

チャンスだ

      − さっと、ぬく− 

 

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おまえなんかどっかへ行ってしまえー

えーい  ぼくのスペシャルキックをおみまいしてやる。

 

    「ドーン !!

ケムリ
「あわわわわー」

−息を整えてゆっくりぬく−  

 

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よかった。ケムリの怪物はいなくなった。

 

うーん。

でもどうしてトオルくんはタバコなんか吸い始めたんだろう?

わかんないなぁ。

 

      −少しの間−

 

トオルくん。

タバコやめられるよね。

今のまま吸いつづけたらダメだよ、トオルくん。

 − ぬ く− 

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そうだ。せめてお星さまに願いをかけよう。

 

お星さま、お星さま、どうかトオルくんを元の元気なトオルくんに戻してください。そしてぼくともう一度、遊べるようにしてください。お願いします…。

 

あっ、流れ星だ。

 

明日、トオルくん元気になるかなぁ。

          − ゆっくり、ぬく − 

 

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もう朝か。

     ぼく、あれから寝ちゃったんだな。

 

「がばっ

あ、トオルくんが起きた。

− ぬきながら −

 

トオル
「あっ、おまえ、そこにいてくれたのか…。
ふしぎな夢を見たんだ、オレ…

ぬ く− 

 

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トオル
「オレがタバコを吸っていると、変なケムリの怪物が出てきた。
そいつは『オレはおまえの友だちだ。なかよくしようぜ』って言うんだ。
なのに、オレの体は動かない。
ほんとうにこわかった…。
すると、おまえが出てきて、ケムリの怪物と戦い始めた。うれしかった。
小さな体で、戦うお前を見て、オレも必死で、『がんばれ』って応援したんだ。
でも、ヤツは強くて、お前は押しつぶされそうになった。
そこで、オレは勇気を出して、持っていたタバコを消したんだ。
すると、とたんにケムリの怪物は元気がなくなって、お前のスーパーキックで、どっかへ飛んで行ってしまった。
それでわかった。

オレ、タバコやめることにするよ。


今、サッカーのレギュラーはずされてて、つらくてタバコでくやしさをまぎらわしてた。だけどそんなんじゃ、どんどん悪い方にしか行かないってわかったよ。
オレ、タバコをやめて、もう一度レギュラーになれるようにがんばる。おまえもつきあってくれるよな。」

 

 − ゆっくりとぬく− 

 

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14

もちろんさ、トオルくん。
タバコなんてなくっても、トオルくんとぼくなら何だってできるよ。

 

だってぼくたち、大親友だもん。

そうだろ トオルくん

 

                       おわり

制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 (20008月発刊