絵と文 福与 みちよ (2012.3コンクール優秀作品) |
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表 表紙 (カバー) |
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(1) おばあちゃん子だったタケシは、学校帰りに、おばあちゃんの家に行くのが、楽しみでした。 そこで、お友達の話や勉強の事を、色々とおばあちゃんに、話していました。 「僕、大きくなったら、おばあちゃんを困らせない大人になるよ。」 そんなタケシが、おばあちゃんは大好きでした。 「タケシが、健康で元気で居れば、おばあちゃんは、何にも言うことはないよ。いつまでも、元気でいておくれ。」 それが、おばあちゃんの、一番の願いだからね。 −ぬ く− |
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(2) やがて、タケシは、中学・高校へと進学し、社会人になりました。 社会人になると、様々な好奇心が、わいて来ました。 「ちょっと、吸ってみろよ。」 友達に、そう、けし掛けられて、タケシは生まれて初めて、タバコを吸いました。 ノドが、いがらっぽくなって、思わずむせてしまいました。 一本だけ・・、もう一本だけ。 そうしているうちに、だんだんタバコが、止められなくなっていったのです。 −ぬ く− |
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スライド4 |
(3) タケシの喫煙に気付いたおばあちゃんは、タケシに言いました。 「タケシ、お願いだから、タバコは止めておくれ。身体にとっても悪いのよ。」 タケシは、タバコを吸いながら言いました。 「おれも、二十歳を過ぎたし、吸ったって構わないだろう!。」 「タケシ、せっかく元気な身体で育って来たのに。お願いだから、おばあちゃんの言うことを聞いてちょうだい。」 おばあちゃんは、タケシの身体が、とても心配でした。 − ぬ く− |
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(4) 会うたびに、タバコを注意されていたタケシは、次第に、おばあちゃんに会いに行かなくなりました。 そして、一ヵ月ほど経ったある日、タケシの元に母親から、おばあちゃんが入院したとの電話が、ありました。 「タケシ、おばあちゃんが、病気で入院したのよ。」 「えっ、おばあちゃんが?。」 タケシはびっくりしました。 「タケシの事を、いつも心配していたのよ。おばあちゃんね、おじいちゃんがタバコが好きで、最後は肺ガンで亡くなったから、タケシの身体が、とても心配なのよ。」 −ぬ く− |
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スライド6 |
(5) その夜、タケシは、なかなか眠れませんでした。 タケシが小さい頃に、おじいちゃんは亡くなっていたので、肺ガンで亡くなった事は、知りませんでした。 「だから、おばあちゃんは、あんなに真剣にタバコは駄目だと言ったんだな・・。」 でも、気がつくと、すぐにタバコを手にしているのです。 「どうしよう、おばあちゃん・・。」 窓際に飾ってある、おばあちゃんと撮った二人の写真に問いかけます。 知らない間に、タケシは、タバコを止められない身体に、なっていました。 −ぬ く− |
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スライド7 |
(6) その夜、タケシが眠りについていると、 「タケシ、タケシ・・。」 タケシを呼ぶ声が、聞こえて来ました。 寝ぼけながら、目をさますと、ベットの横に、おばあちゃんの姿がありました。 「ええ!、おばあちゃん?。」 病気で入院しているはずのおばあちゃんが、タケシに語りかけているのです。 そうか、これは夢なんだ。僕は、夢を見ているんだ。 タケシは、そう思いました。 「タケシ、あなたに見せたいものが、あるのよ。私と一緒に来てちょうだい。」 − ぬ く− |
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スライド8 |
(7) 夢の中のおばあちゃんは、タケシの手を取ると、窓を開けて、夜の空へ飛び出しました。 タケシは、自分の身体が、フワッと浮いたので、びっくりしました。 「う、うわーっ!。」 みるみる、タケシのアパートは、遠ざかって行きます。 「これは、夢なんだ、夢を見ているんだ。」 タケシは、自分に言い聞かせています。 おばあちゃんは、タケシの手を握り、どこかを目指して、飛び続けました。 − ぬ く− |
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スライド9 |
(8) 「さあ、タケシ。あなたの未来の姿を見にいくわよ。」 びゆーん。 おばあちゃんは、タケシの手を取り、さらに先に進みます。 何やら、大きな建物が見えて来ました。 白いコンクリートの、その建物には、窓がいくつもありました。 その窓の一つに、二人はすうーっと、入って行きました。 「おばあちゃん、ここは何処なの?。」 −ぬ く− |
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スライド10
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(9)
そこは、病室の中でした。 ベットの上には、一人の男が寝ていました。 目は、ギョロリとしていて、頬は痩せこけ、その姿は、とても恐ろしく見えました。 ベットの上の男は、タケシを悲しそうに見つめていました。 「あれは、未来のタケシだよ。まだ、若いのに、肺ガンになって、後いく日も、命がもたないのよ。」 「ええー、僕の未来?。なんでだよ!、僕は、こんなに元気じゃないか!。」 「あなたも、おじいちゃんと同じ肺ガンに掛かったのよ。タバコを吸うということは、他の人よりずっと、病気になる確率が高くなるのよ。」 おばあちゃんは、言いました。 −ぬ く−
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スライド11 |
(10) その時、ハット目が覚めました。 「夢だったんだ。怖い夢だったなぁ・・。」 夢から覚めて、タケシは、ホット胸を撫で下ろしました。 けれども、夢の中のベットの男の姿が、目に焼きついてしまいました、 タケシは、恐ろしくなりました。 何気なく、毎日吸っているタバコは、肺の奥深くまで、ニコチンやタールを運び、肺の機能を失わせるのです。 あれが、自分の未来の姿なのか。 夢とはいえ、あまりにショックな姿でした。 − ぬ く− |
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スライド12 |
(11) タケシは、ベットの横の写真を見て、驚きました。 小さい頃、おばあちゃんと撮った写真が、病院の男の顔に、変わっていたのです。 「タケシ、おじいちゃんもタバコが止められなくて、肺を悪くしたのよ。大事なタケシに、もしもの事があったら、おばあちゃんは、悲しいよ。」 夢の中で、おばあちゃんは、泣いていました。 タケシは、胸が締めつけられる様な、悲しみを覚えました。 − ぬ く− |
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スライド13 |
(12)
「お、おばあちゃん、判ったよ。もう、タバコは止めるよ!。」 タケシは、そばにあったタバコの箱を、ゴミ箱に投げ込みました。 大切な人を悲しませてまで、タバコを続ける事は、タケシには出来ませんでした。 ましてや、タバコの煙は、周りの人にまで、悪い影響を及ぼすのです。 −ぬ く− |
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スライド14 |
(13) 次の朝、タケシは、おばあちゃんの入院している病院へ、お見舞いに行きました。 「おばあちゃん。ぼくね、タバコを止めたんだよ。」 おばあちゃんは、ビックリし、そして、嬉し涙を流しました。 「おばあちゃんが、夢に現れて、僕の未来を教えてくれたからだよ。」 タケシにとって、不思議な出来事でした。 でも、タケシは思います。 おばあちゃんが、タケシを思って、夢に現れてくれたんだと。 そして、おばあちゃんとタケシの思い出の写真も、いつの間にか、元通りになっていました。 「元気なタケシに、戻れるね。」 おばあちゃんは、嬉しそうでした。 − 完 − |
制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
(2012年12月発刊) |