スライド1
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表紙
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スライド2
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中表紙
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スライド3
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あるところに、
それはそれはタバコをよく吸う王さまがおりました。
暇さえあればタバコを吸って、
タバコを吸うために暇をつくっておりました。
ある日、王さまは言いました。
「タバコは全てわしのものである。
タバコは全てわしが吸う。
他の者は、タバコ作りに精を出しなさい。」
タバコが、王さまのためだけに作られました。
王さまは、ますますタバコを吸うようになり、
だんだん吸う量も多くなっていきました。
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スライド4
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一本ゆっくり吸っちゃいられぬ
二本で吸うともっと いい
二本のんびり吸っちゃいられぬ
三本で吸うともっっともっっと いい
三本でしっかり吸っちゃいられぬ
四本で吸うともっっっともっっっと いい…
短いタバコは吸っちゃいられぬ
なが〜いタバコはなんとも いい
小っちゃいタバコは吸っちゃいられぬ
大っきなタバコはかくべつ いい
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スライド5 
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とうとうお城の屋根がこわれてしまうほどの、
大きな大きなタバコを作らせてしまいました。
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スライド6
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王さまは、
この大きな
大きな
タバコを吸うために、
部屋にこもって
とにかく
スパスパすぱすぱと、
タバコを吸い続けました。
だから、お城のてっぺんからは、
タバコの煙がモクモクと出続けているのでした。
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スライド7
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タバコの煙は、
何にでも巻きついて、
どんなところにも
入り込んでしまうのでした。
スルリスルリと入り込み、
モクモクと巻きつき
着物も、家も、木や花も、雨や風まで、煙だらけになりました。
そうして…この国は
煙におおわれていきました。
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スライド8
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タバコの煙は、どんどんと広がって
この国の、もっとずっと遠くの緑の森までやってきました。
ここは、きれいな空気をつくり出している森です。
森には、たくさんの妖精たちが住んでおりました。
ところが、このところ、木や妖精たちがつぎつぎと
病気になってしまったのです。
それは、王さまの煙のせいのようでした。
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スライド9
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「このままでは、大変なことになる!!」
「仲間がみんな病気でたおれてしまう!!」
「そうしたら、きれいな空気が作れない…」
「この森がダメになってしまったら…
この国も、あの国も、どの国も…
ダメになってしまう…」
「大変だー!! この煙をなんとかしなければ…」
すると一人の妖精が言いました。
「ぼくが煙を止めに行ってきます。
どうやら、タバコをやめられない王さまの煙のようです。
タバコを吸うのをやめてくれるようお願いしてきます。」
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スライド10
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そんなある夜。
少年の姿をした妖精が、
緑の森からやって来て
煙の出ているお城にたどり着きました。
お城の中は、煙だらけで、ひっそりとしています。
門番も兵隊も、だ〜れもいないのでした。
ところが、ひとり、王さまだけは起きていました。
「王さま、王さま。」
「だれだっ、こんな時間に何事だ!」
煙のすきまから、王さまのガラガラ声がひびきわたりました。
「王さまにタバコのことでお話がございます。」
と少年は言いました。
「なになに、タバコの話か。ならば入ってまいれ。」
少年は煙をかき分け、王さまの部屋に入っていきました。
中には、大きな大きなタバコを吸っている
王さまが座っていました。
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スライド11
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「王さま!! このままでは、この国が大変なことになります。
タバコの煙でおおわれた空は、やがて太陽をかくし、お米も野菜も育たなくなります「なっ、なんとっっ!! この煙でか?」
「はい、そうでございます。
お米の稲も、野菜も、果物も、死んでしまいます…。
そして、ついには食べるものが
なくなってしまいます…。」
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スライド12
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「それから、王さまのお体も、悪くなっております。
タバコを吸い続けていると、いずれ病気になります。」
「なるほど、わしはこのごろ、息苦しくて、苦しくて…
体が思うようにならんのじゃ…。
だからよけいに、タバコを吸って気をまぎらわせておる。」
「それはタバコに含まれるニコチンのせいなのです。
ニコチン中毒になっているのです。
息苦しいのは、タバコに含まれる一酸化炭素のせいなのです。
煙は何にでも巻きつき、入り込み、ヤニ色に染めていきます。
人の体の中も、がんの病気を作る タバコのタールがヤニ色に染めて
ボロボロにしてしまうのです…。」
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スライド13
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「そして、本当に恐ろしいことに…
タバコを吸っていなくても、この煙に巻かれてしまった人は、
ヤニ色に染められ、体が悪くなっていきます。
王さまだけでなく、煙を吸わされてしまった人はみな
病気になってしまうのです…。」
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スライド14
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「なっ、なんとっ、恐ろしい…本当に?
それは知らなんだ!
わしとしたことが…
わしだけでなく、みんなの体の中が、ボロボロになってしまうなんて…
わしは、なんてことをしていたんだ…
自分一人のために、
好き勝手なことをしてしまって…
周りのみんなを… 国中のみんなを…
煙に巻き込んでいたなんて…
あぁ、どうしたらいいんだろう…。」
王さまは、頭を抱え込んでしまいました。
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スライド15
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「今から、タバコをおやめになることです。
吸っても、良いことなんて何もないのです。
吸わなくったって、どうってことないのです!
そうお気づきになれば、
きっとおやめになれるでしょう。
森の精たちも、お力になります!
お体も少しずつ、きっと良くなることでしょう。
この国のためにも、絶対にやめるべきです。」
「そうなのか…。しかし、タバコが吸えないなんて…。
そんなことができるのだろうか……。」
「王さま、タバコのニコチンの“とりこ”にならず、
どうぞ、本当のことをしっかり見て、
すばらしい国にして下さい。」
…と言ったかと思うと、少年は煙の中に消えていきました。
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スライド16
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翌日から、この国では大そうじがはじまりました。
今までヤニ色に染められてしまっていた何もかもが、
きゅっきゅっとふきとられ、
もとの色へもどっていきました。
もちろん、王さまはタバコを吸うのをやめ、
お城からあのモクモクの煙が出ることはなくなり、
空気はきれいになっていきました。
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スライド17
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スライド18
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そのせいか、
王さまの体は、しだいに元気になっていきました。
森の精が教えてくれたように、
タバコの煙がないことで、
自然の美しさが、
あらためて見えるようになりました。
すてきな香りも楽しめるようになりました。
いつもの食事も、
本当においしくておいしくて…。
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スライド19
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その後、王さまは、
大切なことがよぉくお見えになる、
立派な王さまになりました。
そして王さまの国は、
それはそれはすばらしい国になっていった
ということです。
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