スライド 1
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表 表紙(カバー)
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スライド 2
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(1)
こんにちはー。
僕は“タバコ”です。
僕は、
「あぁー、体には悪いが、これが止められないんだよねぇー。」
などと言われて、吸われています。
<ぬく>
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スライド 3
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(2)
ある春のことでした。
僕は、ある駅のホームで吸われていました。
いつものように吸われていて、とても体が軽くなった時でした。
僕は、周りから聞こえてくる、冷たい声に気づきました。
買い物帰りのおばさん、中学生、小学生の下校途中の人がいました。
その中には、幼稚園児くらいの子供と手をつないでいる親子もいました。
<ぬく>
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スライド 4
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(3)
僕は、不思議なことに気づきました。
みんな、僕の方を見ては、
「まぁ、あんな子供が…。」とか、
「お母さん、なんか臭いよー。」とか、
「うん。臭いねー、いそごうか。」とか
言っていました。
中には口にハンカチをあてて、こっちをちらちら見ながら行く人もいました。
僕は、初めて周りの人の表情に気がつきました。
みんな、口を「ヘ」の字に曲げて、しかめっつらをしていました。
僕は、ふっと、いったい僕を吸っている人は誰なんだろう、と思い、見てみると、まだ中学生くらいの人でした。
僕は今まで、吸っている人は見なかったのですが、さすがに中学生が吸っているとは驚きました。
<ぬく>
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スライド 5
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(4)
周りの人が嫌がっているのだったら、吸っている人の体にも何か起きていないだろうか、迷惑がかかっていないだろうか、
など、僕は知りたい!!と思いました。
そこで、僕は、旅に出よう!!
と決心したんです。
旅に出る前に、まずある程度、僕自身のことを知っておくために、本を読んで学ぼうと思いました。
そこで図書館へ行きました。
<ぬく>
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スライド 6
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(5)
大きい本があって、開けると「たばこ」という文字が目につきました。
タバコには、主な成分のニコチンの他に、発ガン物質のタールや、大切な酸素のじゃまをする一酸化炭素がたくさん含まれていて、タバコを吸っている人は、吸わない人よりも、ガンや心臓病になったり、早死にしやすい、と書いてありました。
他にも写真があって、タバコを吸う人の肺は真っ黒でした。
あと、タバコは、吸う人だけじゃなく、周りの人にも害がある、と書いてありました。
タバコの先から立ちのぼる煙は「副流煙」といって、
タバコを吸う人が吸う「主流煙」よりも刺激性がずーっと強く、
発ガン物質なども数倍も多く含まれている、と書いてありました。
そしてその煙で、タバコを吸わない人も、咳が出たり、風邪や、肺炎、気管支炎、あるいは、アレルギーや、鼻炎、中耳炎、ぜん息などの原因になったりする、とも書いてありました。
そこで僕は、なっとくがいったことがあります。それは、さっき僕の前を通って行った人が、嫌そうな顔をしていたことです。
僕たちは、周りに迷惑をかけていたんだ!!
僕は、大きなショックを受けました。
<ぬく>
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スライド 7
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(6)
そして、となりのぺージを見ると、ガン、特に肺ガンで死亡する人が増えてきている、と書いてありました。ガンとは、人間の体の中に出てくる病原体なんだと思いました。
そして自分は吸わないのに、周りのタバコの煙で肺ガンになる場合がある、と書いてありました。
ガンで亡くなった人の中には、タバコを吸った人だけでなく、吸わされてガンになった人もいるんだなぁ、と、またまたショックを受けました。
自分はタバコを吸わないのに、周りの人の吸うタバコで、ガン細胞がだんだん大きくなり、本当にガンになってしまうなんて……。
僕は、気力なく図書館を出ました。
・ ぬきながら ・
僕は、「本当に人の体であんなことが起きているのだろうか、自分の目で確かめて見たい!!」と思いました。
<ぬく>
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スライド 8
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(7)
そこで僕は、
まずタバコを吸っている人を見つけて、そして、ビー玉ぐらいの大きさになって飛びこもう、と思いました。
ちょうどその時、
その人は、口をカバのように開けて、ワッハッハッ、と笑っていました。
僕はとっさに飛びこみました。
<すばやくぬく>
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スライド 9
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(8)
真っ暗でした。
まるで谷底に突き落とされたようでした。僕は、「ドスン」という大きな音と共にようやく地面につきました。
僕がついた所は、
真っ暗で、電気もついていない所でした。
<ゆっくりとぬく>
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スライド 10
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(9)
そんな暗い所に、人かげが見えました。
僕は、おびえながらも、そのかげに一歩二歩と近づいて行きました。
「君はー?」と僕が聞くと、
「あぁ、おれかぁー。おれは、タバコを吸って、自分を大事にしないやつらの体の中に出てくる、ガン細胞ってものさー。」
僕は、タバコとガンと聞いてドキンとしました。
「まったく、人間ってもんは、自分を大切にできねえのかよぉー。」
「…………。」
「あのよぅー。お前はタバコなんて吸うなよ、ただ早死にの元なんだからよぅー。
それにタバコってもんはよぅー、ニコチンのせいで、一度吸い始めたら、いざ止めようと思ってもなかなか止められねえんだぜぇー。
最初っから吸わなきゃー、どうーってことないのによぅー。
じゃあ、まぁ、がんばれよー。」と言って去って行きました。
あわてて僕は、「あっ、あのー、ありがとうございました。」と言ってまた進みました。そしたらふっと淋しくなって、涙が出そうになりました。
・ ぬきながら ・
人間は、なぜ害をもたらすタバコを吸うんだ、何にも役に立ちはしないじゃないか。
<ゆっくりとぬく>
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スライド 11
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(10)
気がつくと外に出ていました。
ふと見ると、赤ちゃんがいました。
笑った小さなその顔は、まるで天使のようでした。どうかこの天使はタバコなんて吸いませんように……。
でも、さっき図書館で見た本には、お母さんやお父さんがタバコを吸うと、流産したり、生まれた赤ちゃんが小さかったり、弱かったり、大きくなってガンにかかりやすくなる場合がある、って書いていたけど…、
この赤ちゃんは、きっと大丈夫だよねぇ……。
<ゆっくりとぬく>
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スライド 12
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(11)
僕はどんどん歩いた。
会う人、行く人、僕を見ると嫌そうな顔をしたり、見て見ぬふりをして行く人もいました。
仲間の臭いがしたので、見上げるとタバコを吸っている人がいました。その体の中から声が聞こえてきました。
「やぁねぇー。まったくタバコ吸うのは勝手でもさぁ、体のことを考えてぇ!、って言いたいわよー、わたし。」
「おれだって言いたいさ。こらっ、止めろYお前の体にもよくないし、周りにも迷惑なんだぞぉー、って。」
「かっこうをつけて、未成年の若い時から吸って、若い体には害もそれだけ大きいってのにさぁー。少しは先のことも考えろってんだ。」
「私たちがしゃべれたらなぁー。言ってあげるのになぁー。」
「ホントにもう、嫌だなぁー。」という声でした。
・ ぬきながら ・
僕は、その声から逃げるようにして走り続けました。そして僕は自分が情けなくなりました。
<ぬく>
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スライド 13
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(12)
気がつくと山に囲まれた泉に出ていました。
そこにも人間がいました。
僕は人間にあわす顔がないと思って、さっと木の後ろにかくれました。
<ゆっくりとぬく >
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スライド 14
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(13)
一台の車が走ってきたと同時に、車から何かが投げ捨てられました。
僕がその場所に行くと、まだ火のついた僕の仲間が枯れ草の上に一人いました。
僕は、こわくなって逃げてしまいました。
このままでは何かが起こりそうな気がして……。
しばらくすると、後ろで炎が上がっていました……。
<ゆっくりとぬく >
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スライド 15
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(14)
僕は数々の探検から学びました。
僕なんかいない方がいいんだ。何の役にも立っていない。ただ吸っている人が止めるに止められず、とりこになっているだけだ!!
自分の体が悲しんでいることを知らずに……。しかもその体は自分一人のものでもないのに……。
それに、僕がいると、人に害が及び、森が焼け、地球が涙を流す、それだけだ。
こんなことがあっていいのだろうか…。
僕さえいなければ……。
< ゆっくりとぬく >
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スライド 16
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(15)
僕は、好きこのんでみんなを苦しめているんじゃないんです。
でも原因は僕たち以外の誰でもない、ということは確かです。
僕たちは人間に、
『吸わないでくれ!!』
って口では言えません。
だから人間の皆さんが、悪いと気づき止めるまで、タバコの害はたえないでしょう。
・ 間 ・
僕たちが、もし本当に良くない、と思われる日が来れば…、
僕たちは、本当に光栄です!!……。
< ぬ く >
(おわり)
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