千葉)千葉市、国より厳しい「禁煙条例」案検討

2018年6月1日03時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASL505DW6L50UDCB00Y.html 

 

 5月31日の「世界禁煙デー」から禁煙週間(6月6日まで)が始まった。2020年の東京五輪パラリンピックをとらえ、いま、人のたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」を防ごうという機運が高まっている。五輪・パラリンピックの競技会場がある千葉市では、子どもや働く人を守ろうと、国の法案より厳しい条例案の検討や禁煙治療費の補助といった取り組みが進む。一方、千葉県は「国の推移を見守る段階だ」としている。

 東京五輪パラリンピックでは、千葉市美浜区幕張メッセで、レスリングフェンシング、ゴールボールなど7競技が開催される。千葉県内では他に、一宮町東浪見(とらみ)の釣ケ崎海岸でサーフィンが予定されている。

 千葉市熊谷俊人市長は昨年12月、「(世界中から観光客を迎える)競技会場都市として環境を整備し、市民の健康を守る」として、受動喫煙防止条例の制定を検討する方針を明らかにした。

 今国会に提出された厚生労働省の健康増進法改正案、東京都が6月開会の都議会に提出予定の受動喫煙防止条例案を参考に、年内に市議会に条例案を出し、20年までに施行を目指す。

 議論が分かれている飲食店の取り扱いについて、熊谷市長は「そこで働く人の視点を大事にしたい」と発言している。客席面積が100平方メートル以下の既存店には喫煙を認める厚労省案より厳しく、「従業員がいれば原則屋内禁煙」とする東京都の観点に、熊谷氏は賛同している。

 規制対象の飲食店は、厚労省案では全体の45%程度だが、都の案では約84%に上る。加熱式たばこの取り扱いについては、熊谷氏は「検討中」としている。

 千葉市は今月から、妊婦や子どもと同居する人を対象に、禁煙治療費の一部を助成する取り組みも始めた。受動喫煙の健康被害から家族を守ろうという取り組みだ。(熊井洋美)

県「推移見守る段階」

 県は10年10月、受動喫煙防止対策検討会を立ち上げた。千葉大や県医師会の医師、県PTA連合会のほか、旅館・ホテルの組合、遊技業の組合などの代表も参加し、12年2月に報告書をまとめた。基本方針で「県民の健康維持増進のため、受動喫煙の防止を一層推進する必要性があることで意見が合致した」「(普及啓発などの)自主的・勧奨的な事業の効果を評価しつつ、条例等による規制に向かうべきである」としている。

 「特に子どもと妊婦については保護を徹底すべき」との視点で施設を5分類し、学校・大学や児童館、医療機関、図書館、官公庁、運動施設は「敷地内禁煙」、スーパーやデパート、宿泊施設、飲食店、喫茶店、料亭・居酒屋風俗営業法の適用を受けない施設)などは「建物内禁煙」、公園や通学路、テーマパークなどは「区域内禁煙」といった原則を示し、対策の推進を求めた。

 しかし、その後、県で条例化する動きは見られない。検討会の委員を務めた呼吸器外科医の藤澤武彦・ちば県民保健予防財団理事長は「報告書の内容は検討会の委員で一致したもので、今でもポイントは外れていない。県で条例化に向けた具体的な手続きが進まないのは残念だ」と話す。

 森田健作知事は、5月31日の定例記者会見で、受動喫煙対策についての県の考えや独自の取り組みの質問に「今国会で(健康増進法改正案が)議論されているが、国の指針を出してもらい、それを見極めて千葉県として考えたい。今は国の推移を見守る段階だ」と述べるにとどまった。

学校の敷地内禁煙まだ9割

 文部科学省は今年3月、全国の学校などでの受動喫煙防止対策の状況調査の結果を発表した。県内計1992校のうち、「対策を講じていない」は2・1%(42校)で、97・9%(1950校)は「対策を講じている」と答えた。

 対策の内容をみると、「敷地内全面禁煙」は全体の92・6%にとどまる。「建物内全面禁煙」が5・2%、「建物内に喫煙場を設け分煙」が2・2%だった。

 敷地内全面禁煙を実施している割合を種別にみると、▽幼稚園92・5%(433校)▽認定こども園97・9%(46校)▽小学校95・2%(760校)▽中学校89・5%(358校)▽高校86・4%(159校)▽特別支援学校97・7%(42校)。中学校と高校では9割を切った。

 千葉県教委は、県立学校について、06年から「学校の敷地内は全面禁煙、喫煙する場合は敷地外で」としている。市町村立学校にも敷地内での全面禁煙を求めており、未実施の市町村教委には一層の推進を求める通知を出した。ただ、国立と私立学校は対象外だ。(寺崎省子)

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 〈千葉県の喫煙者〉 国民生活基礎調査(2016年)では、20歳以上の県内の男性で「毎日吸う」「時々吸う日がある」は31・8%で、全国平均(31・1%)を少し上回る。女性は10・8%と全国平均を1・3ポイント上回り、全都道府県で上から5番目に高かった。

 一方、県の昨年度の「生活習慣に関するアンケート調査」では、15~19歳の男性の1・2%、女性の0・9%が、たばこを「現在吸っている」と答えた。

 吸い始めた年齢では、16~19歳は男性25・3%、女性15・4%、15歳未満は男性3・3%、女性3・7%だった。