病院・学校・役所、全面禁煙に 屋外での喫煙増に懸念も

2019年7月1日05時00分  朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASM6X6TZQM6XULBJ013.html?iref=pc_ss_date

 

 多くの人が利用する施設での喫煙を規制する改正健康増進法が1日、一部施行され、病院や学校、行政機関などが敷地内禁煙になった。例外的に屋外喫煙所の設置は認められるが、一部の自治体や中央省庁では全面禁煙とし、より厳しい対応をとる。喫煙者が外の喫煙所に流れ、周囲に影響が出ると懸念する声もあがっている。

 約1万人が働き、観光客も多く訪れる東京都庁新宿区)では6月28日夕、本庁舎内や入り口近くにあった6カ所の喫煙所をすべて閉鎖した。今後、屋外喫煙所の整備はしない。

 このため隣接する新宿中央公園の屋外喫煙所は利用者が増えることが懸念される。だが、喫煙所はすでに「飽和状態」に近く、特に昼休みは近くで働く人らで混み合い囲いの外で吸う人もいる。新宿区の担当者は「都は都庁の喫煙所をゼロにすれば、周辺にどんなしわ寄せがいくか考えたのか」といぶかしがる。

 東京都板橋区は区役所敷地内の喫煙所を閉め、7月1日に隣の区有地にコンテナ型の喫煙所を開く予定だった。だが、医療機関や子どもが出入りする建物が近くにあることから、周辺住民が撤去を求め、約2500人の署名を添えた陳情書が区議会に提出された。

 板橋区は「喫煙所は密閉され、空気清浄機も備えている」とする。だが、住民との話し合いが必要として、開設時期を白紙に戻し、当面庁舎敷地内の喫煙所を残すことにした。

 13の中央省庁で、敷地内全面禁煙にしたのは文部科学省国土交通省のみ。そのほかは屋外喫煙所を設ける。両省は、敷地内に十分なスペースがないことを理由に挙げる。国交省は廃止する10カ所の屋内喫煙所は倉庫などとして使う予定だ。

 担当者は「喫煙者がまだ多いが、勤務中は喫煙を我慢してもらう」という。路上喫煙を条例で禁止している千代田区が助成して設置された最寄りの喫煙所は400メートル以上離れている。国交省の30代男性職員は「近くの省庁に行って吸う人が出てくるかもしれない」と話す。

 自治体では、改正法よりも厳しい規制を盛り込んだ独自の条例を制定する動きも広がる。東京都は条例で9月1日から、幼稚園、保育所、小中学校、高校などは屋外を含めて敷地内の全面禁煙を求める。

 山形県も条例で、7月1日から小中高校、医療機関などでは屋外にも喫煙所を設置しないよう求める。来年4月からは美術館や図書館、体育館、駅などでも、改正法では認められている喫煙専用室も設置しないように求める。罰則はないが、県の担当者は「受動喫煙の機会を少しでも抑えられたらいい」と話す。

 受動喫煙対策に詳しい、大和浩・産業医科大教授は「屋外喫煙所はあくまで例外の措置。受動喫煙対策を推進する自治体は模範を示すべきだ。ハード面だけでなく、喫煙者への禁煙支援と両輪で進めなくてはならない」と話す。

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(改正健康増進法) 望まない受動喫煙をなくすことが目的。7月1日の一部施行で学校や病院、行政機関、児童福祉施設が敷地全体禁煙となる。ただ、受動喫煙が起きない屋外の決められた場所には喫煙所の設置が認められる。全面施行は2020年4月。住宅や旅館、ホテルの客室を除くすべての施設や公共交通機関で原則屋内禁煙となる。飲食店は経過措置として、客席面積が100平方メートル以下で、個人または中小企業の既存店なら喫煙を認める。

 禁煙エリアに灰皿などを設置した場合は、都道府県知事らの指導や勧告、命令が出される。従わない場合には施設管理者に50万円以下、喫煙した人に30万円以下の罰金が科される。

写真・図版 厚生労働省の入る合同庁舎の屋外喫煙所。2022年4月の廃止を目指している=東京・霞が関

写真・図版 都庁の喫煙所に「閉鎖中」の紙を貼る職員たち=6月28日夕、東京都新宿区