受動喫煙対策 例外があまりに多すぎる

2019年7月19日 午前7時30分  福井新聞論説 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/897700

 

【論説】

   受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が今月1日一部施行され、役所や学校などの敷地内は原則禁煙となった。しかし役所などには法の例外規定を使い、屋外喫煙所を設ける事例が後を絶たない。改正法が目標とする健康被害防止は、まだ多くのハードルがある。

 改正法は、来年の東京五輪・パラリンピックをにらんでいる。一部施行では、学校、病院、行政機関、児童福祉施設の敷地内を原則、敷地内禁煙とした。受動喫煙の健康影響が大きい未成年者、病気の人、妊婦らの被害防止が目的である。ただ例外規定があり、間仕切りなどで明確に区分している場合は、屋外喫煙所を設けることが可能だ。

 それでも法の原則はあくまで敷地内全面禁煙。厚生労働省と人事院は屋外喫煙所を「推奨しない」と省庁や自治体に通知している。喫煙所を設ける以上、喫煙後の呼気に含まれる有毒物質による害や、清掃に当たる人への影響などが考えられるからだろう。

 ところが、原則をないがしろにしかねないこの例外規定を、行政機関が使っている事例が少なくない。共同通信の調べでは、国の11省の本庁舎のうち、改正法施行日の1日時点で、屋外喫煙所を設けず敷地内全面禁煙を実施したのは文部科学省、国土交通省の2省だけ。法を所管する厚労省ですら、屋外喫煙所を使い続けている実態がある。これでは、受動喫煙被害をゼロにしようとする法の趣旨の広まりを期待することは困難ではないか。

 幼稚園、小中高校、病院では比較的、敷地内全面禁煙は普及しているものの、都道府県の本庁舎では10都府県にとどまり、規模の大きい大学を対象にした調査でも、全面禁煙移行は少数との結果が出ている。

 屋外喫煙所を設けることは、やむを得ないとの指摘も根強い。完全禁煙にした場合、敷地外での路上喫煙や吸い殻投げ捨てが増加する懸念があるためだ。

 こうした課題に、政府は本腰を入れて取り組む必要がある。改正法は来年4月に全面施行となるが、現在以上に原則が顧みられない状況が想定されるからだ。飲食店や職場、公共交通機関などが屋内禁煙になるが、喫煙専用室は設置できることになっている。

 さらに規模の小さい飲食店は経過措置として喫煙が認められるが、厚労省はこうした店舗が55%と試算している。つまり例外の方が多いことになってしまう。

 規制強化に反発する声もあるだろう。だが、世界保健機関(WHO)によると2017年の段階で公共の場所全てが屋内全面禁煙の国は55カ国ある。厳しく感じられる規制も、世界の水準にはまだ届いていないことを忘れてはならない。