北海道議会、全面禁煙の対象外 行政機関ではないとの見解に疑問の声

2019/05/31 18:04 更新  北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/310513

 

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法に基づき、7月から学校や行政機関の敷地内が全面禁煙となる中、道議会庁舎(札幌市中央区)が今回の規制対象に入っていない。議会庁舎は「議決機関」で、行政機関ではないとの国の見解があるためだ。しかし、一般の傍聴者が出入りする公共施設であるにもかかわらず、分煙すら徹底されていないのが現状で、専門家などから疑問の声が出ている。5月31日は「世界禁煙デー」―。

 道の施設は大半が禁煙となっており、道庁本庁舎は2008年に建物内を全面禁煙とした。これに対し、道議会庁舎内には3カ所の喫煙所がある。11年に各会派が「庁舎内の全面禁煙に向け、当面分煙する」と合意したものの、一部議員は会派の控室などで公然と喫煙を続け、これまでも批判を浴びてきた。

 改正法の施行を控え、道庁本庁舎と地下通路でつながる道議会庁舎について、道の担当者が厚生労働省に確認したところ、議決機関であり、7月1日から敷地内禁煙となる「第1種施設」には当たらないことを確認したという。

 改正法では行政機関や病院などの第1種施設は7月から原則、敷地内禁煙となる。道内の大半の市町村議会は市役所や役場庁舎の一部となっており、第1種の規制が適用される。第1種は建物内は認めないが、受動喫煙を防止する措置をとった屋外の喫煙所の設置は認める。道も本庁舎近くにあるプレハブの喫煙所は、来庁者が通常立ち入らないとして、当面存続させる。

 一方、飲食店など多数の人が利用する「第2種施設」は来年4月から原則禁煙となる。第1種施設より規制は緩く、煙が外に漏れないなどの対策を施し、国の基準をクリアすれば建物内に「喫煙専用室」を設置することができる。道議会庁舎は第2種に含まれる。

 道議会庁舎は建て替え工事中で、来春完成する新庁舎内に喫煙所が設置される可能性がある。村田憲俊議長は20日の就任記者会見で「新庁舎ができるので(分煙のあり方を)議論しなければいけない」と述べた。

 過去には道議会全会派で受動喫煙防止条例の制定を目指したが、愛煙家の道議らが難色を示したことなどで見送った経緯がある。現在は道が条例制定を検討しており、4月に受動喫煙について関係団体から聴取した意見の中に「道議会も第1種施設とするべきだ」との声があった。

 東北大の黒沢一教授(産業医学)は改正法について「そもそも規制対象を行政機関ではなく、『すべての公共機関』とすべきだった」と指摘。「分煙すらできていない議会は、とんでもない。受動喫煙対策の旗振り役を担い、議会自ら全面禁煙を判断すべきだ」と話している。