社説:飲食店での喫煙 当初案の後退許されぬ

2017/11/18() 京都新聞 http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20171118_3.html  関連社説11/5

 

 受動喫煙防止策として、厚生労働省が店舗面積150平方メートル以下の飲食店で喫煙を認める新たな案を自民党と検討している。今春、厚労省が示した「30平方メートル以下」から大幅に緩和する内容だ。
 東京都の調査では、都内の飲食店の7割以上が店舗面積100平方メートル以下だという。都内では150平方メートル以下が大半を占める可能性がある。これでは、ほとんどの飲食店で喫煙可能となり、喫煙抑制の実がないことは明らかだ。当初案の後退はあってはならない。
 たばこを吸うことでの本人の健康被害や周囲のたばこを吸わない人の受動喫煙被害を考えて、喫煙者は減り続けている。習慣的に喫煙している人の割合は男性で約30%、女性で8%だという。喫煙率の下がっている今こそ、禁煙場所を拡大する好機ではないか。
 政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックまでの全面施行に向け、来年の通常国会に健康増進法の改正案を提出したい意向という。厚労省側の譲歩に対し、医師会や肺がんなどの患者のほか、より厳しい防止策を求める自民内から反発が予想される。
 受動喫煙の防止については、今年3月、原則屋内禁煙を主張する塩崎恭久前厚労相が30平方メートル以下のバーやスナックなどに限り、例外的に喫煙可とする厚労省案を提示した。これに反発した自民党が異論を示して協議が物別れに終わった。8月に就任した加藤勝信厚労相が調整に当たっている。
 新たな案では、飲食店は原則禁煙とするものの、店舗面積150平方メートル以下であれば、飲食店側の判断で喫煙を認める。喫煙専用室を設置でき、店への20歳未満の客や従業員の立ち入りを禁止する。
 新規開業店や大手チェーン店は喫煙を認めない方向だという。専用室の工事期間として1年半程度の周知期間を設け、20年4月からの施行を検討している。
 海外では、飲食店を含む公共の場所を室内禁煙とし、04年以降の五輪開催都市では罰則付きの受動喫煙対策が取られているという。
 東京都では、小池百合子知事が面積にかかわらず、バーなどを禁煙とする都条例案を提案する考えを示し、「屋内を全面禁煙するのが五輪開催都市の基本的な流れだ」と述べている。国と都が同じ方向に進むのが妥当なのではないか。
 東京五輪という目標があればこその健康増進策である。政府は、自民党との協議を急ぎ、より実効性のある成案を得る努力を重ねてもらいたい。