タバコフリーのオリンピックは実現するのか 屋内全面禁煙を巡って、自民党内は大混乱…

 

 国会では安倍総理が成立させなければ、オリンピックが開催出来ないと言い出して強行に審議入りした共謀罪に注目が集まっています。こんな根拠もない安倍総理のこじつけでは無く、本当にオリンピックの開催前に法整備が国際社会から求められている課題があります。

 それは、タバコフリーのオリンピックを実現するための受動喫煙対策の法整備です。

 喫煙がガンや心筋梗塞の発症リスクを高めることはご承知の通りですが、自分で吸っていなくても他の人のタバコの煙を吸い込む受動喫煙でもガンのリスクが高まるという認識が我が国では十分でありません。そのため、日本の受動喫煙対策はG7諸国で最低レベルだと世界保健機関(WHO)からも指摘を受けている程です。

 国際オリンピック委員会(IOC)はWHOとの間でタバコフリーのオリンピックを推進することで合意しており、2000年のシドニー五輪以降のオリンピックで実施されてきています。

 タバコフリーというと自由にタバコを吸っていいと勘違いする方がいるかもしれませんが、そうではなくて、タバコの煙から解放された環境のことで、つまりは、受動喫煙のない環境を作ることがタバコフリーということです。つまり、オリンピック開催国には完全な受動喫煙対策が求められているのです。具体的には公衆の集まる場所での喫煙の禁止であり、屋内完全禁煙、しかも、違反した場合の罰則によって実効性を担保することを求めているのです。

 実際に過去の開催都市を見ると、シドニーから始まり、北京もロンドンもリオも、飲食店を含む屋内完全禁煙、罰則付きの法整備をしています。

 我が国は「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に加盟していますが、国際社会からは先述した通り、たばこの煙に寛容な国だと見られており、東京オリンピックに向けてタバコフリーのオリンピックを継続出来るのか注目が集まっています。このような国際社会の厳しい視線を尻目に与党、特に自民党は法整備に非常に後ろ向きな対応を取っています。

 その理由として、主に2点あります。

 ひとつは、たばこの規制を強めると喫煙者が減少し、たばこ農家が苦しくなることに加えて、地方自治体の主要な税収であるタバコ税が減少してしまうということ。

 もうひとつは、たばこを規制すると飲食店の売り上げが減少する。特に、小規模店舗の客足が鈍り、打撃が大きいということ。

 たばこの規制については、議員自身が喫煙者か否かにより考えが左右され、規制強化に反対の議員はたばこの耕作地が選挙区内にある議員に限られる訳ではないことが問題を複雑にしています。

 このような党内の事情を配慮してか、厚生労働省内で検討がされている法案では、飲食店は原則禁煙にするものの30平米以下の小規模のスナックやバーは例外とすることとしています。一方、居酒屋や焼き鳥屋さんなどの調理したものを提供する店舗については子ども連れが来店する可能性もあるため禁煙としています。

 この厚労省案では、WHOのランクでは4段階のうち上から3番目の水準にしかならないものなのですが、これでも、自民党内のタバコ議員の反発は強く、法案の内容を審議する厚生労働部会で厚生労働省が法案の説明をすることが許されておりません。

 このような状況に対して、塩崎厚生労働大臣が、記者会見の場で「(自民党)部会で説明する機会をいただきたい。一度もしていなので、しっかり聞いてもらいたい」と党の厚労部会の開催を求めるという異例の事態に陥っています。自民党の厚労部会の議員によると、「党内で6割位の賛成がないと部会は開けない。現状では賛成は3~4割」だとのことで、政府案がまとまって今国会に提出されるのか未だ不透明な状況にあります。

 このような与党の情けない状況に対して、WHOの部長が来日し、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会で、長い伝統であるタバコフリーという政策を維持するよう」「屋内の公衆の集まる場での喫煙の完全禁止を全国レベルで実施するよう」日本国政府に要請をするWHOの実質的なトップであるマーガレット・チャン事務局長の書簡を持ってきました。また、この書簡では、タバコフリーという政策は、レストランやバーなどにマイナスの影響はないとされていることを留意するように求めています。

 WHOと米国の国立がん研究所の報告書によると、公衆の集まる場での喫煙を禁止する法律は、売り上げ、雇用、店舗数に、平均的にマイナスの影響を与えないとされています。

 反対派の議員はこの報告書をまずはしっかりと読み込む必要があると思います。

 私は厚生労働委員会に所属し、国民の健康を守る立場で政策を考える立場であり、自身も喫煙してないので、屋内全面禁煙、罰則付きの法律を作るべきだと考えています。

 妥協案として飲食を伴わないバーやスナック等の小規模店舗のみ例外を認めることはあり得るとも思います。しかし、例外を認めるとギリギリ例外の対象にならない店舗を喫煙者が避けるようになり、例外を設けた方がむしろ経営に影響が出る店舗が増加すると思うので、規制するなら例外を設けない方が良いと考えています。

 恐らく法律でそう決まれば、慣れてくるものではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

我が党でも禁煙でなく、分煙で対応しようという議員連盟が設立され、自民党と同じような状況が生まれています。

 いずれにしても、海外では屋内全面禁煙が定着している国が多く、その国の方々を今後、観光客として呼び込もうというのであれば、国際社会から笑われないような法律にして欲しいものです。

 まずは、自民党がどのような結論を導くのか見ものです。