自民 受動喫煙対策法案 今国会成立に向け政府と調整へ

 

自民党の厚生労働部会は幹部会合を開き、2年後の東京オリンピック・パラリンピックを控え、受動喫煙対策を強化する法案を今の国会で成立させる必要があるとして、法案の取りまとめに向けて、政府との調整を進めていくことで一致しました。

厚生労働省は、受動喫煙対策を強化するため、今の国会に健康増進法の改正案を提出する方針で、一定の規模以上の飲食店は原則として禁煙とする一方、既存の小規模な飲食店では、喫煙や分煙を表示すれば喫煙を可能にするなどとした素案を公表しました。

これを受けて、自民党の厚生労働部会は30日、党本部で幹部会合を開いて意見を交わし、出席者からは、素案の内容に理解を示す声が相次いだ一方、「去年3月に厚生労働省が示したたたき台の内容から後退している」という指摘や、「小規模な飲食店の定義などを速やかに示すべきだ」といった意見も出されました。

そして、会合では、2年後の東京オリンピック・パラリンピックを控え、受動喫煙対策を強化する法案を今の国会で成立させる必要があるとして、法案の取りまとめに向けて、政府との調整を進めていくことで一致しました。

 

大規模飲食店は原則禁煙に 受動喫煙の新対策案公表 厚労省

 

他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙を防ぐため、厚生労働省は30日、規模の大きな飲食店などで原則、屋内を禁煙とする新たな対策案を公表しました。一方で、小規模な飲食店では表示すれば店内でも喫煙できるとしていて、厚生労働省は今後、自民党などと協議して法案をまとめることにしています。

厚生労働省は2年後の東京オリンピック・パラリンピックを前に受動喫煙対策を強化することを決め、30日、新たな対策案を公表しました。

それによりますと、大学を含めた学校や病院などでは屋内を完全に禁煙とし、屋外でも喫煙場所以外ではたばこを吸えなくするとしています。

また規模が大きかったり新たにオープンしたりする飲食店、それに会社の事務所などでは煙が漏れない喫煙専用室以外では屋内を禁煙にするとしています。

一方、小規模な飲食店では店の入り口などで「喫煙」などと表示すれば屋内でもたばこを吸うことができるとしていますが、20歳未満の客や従業員は喫煙スペースへの立ち入りを禁止するとしています。規模の大きい店と小さい店をどこで線引きするかについてはまだ決まっていません。

また火を使わない「加熱式たばこ」も規制の対象に含めるほか、違反した事業者などへの罰則を設ける方向で検討しています。

厚生労働省は今回の対策案を基に今後、自民党などと協議したうえで法案をまとめ、ことしの3月上旬をめどに国会に提出する予定です。

受動喫煙対策でどう変わるのか

厚生労働省が示した受動喫煙対策では、さまざまな施設で屋内を原則禁煙にするとしています。

まず大学を含めた学校や病院、それに保育所をはじめとした児童福祉施設などでは、屋内が完全に禁煙となり、屋外でも喫煙所以外ではたばこを吸うことはできなくなるとしています。

また、会社の事務所や規模が大きかったり、新たにオープンしたりする飲食店も屋内が原則禁煙となり、煙が漏れない「喫煙専用室」以外では、たばこを吸うことができなくなるとしています。
この喫煙専用室では飲食を提供することはできませんが、加熱式たばこについては専用の喫煙スペースの中でなら飲食が可能としています。

一方で、例外的に既存の小規模な飲食店は、「喫煙」などの表示を店の入り口に掲げるなどすれば、店内でもたばこを吸えるとしています。ただ、喫煙スペースでは、20歳未満の客と従業員の立ち入りを禁止するとしています。

屋内を原則禁煙とする規模の大きい店と、例外となる小規模な店をどこで線引きするかはまだ決まっていません。

厚生労働省は当初、30平方メートル以下の店を例外とすることを検討しましたが、その後、自民党の一部の議員から規制が厳しすぎるなどとして150平方メートル以下にすべきだという声が上がりました。
議論は今も続いていて、今回、厚生労働省が示した案には具体的な数値は盛り込まれていません。

加藤厚生労働大臣は「望まない受動喫煙を防ぐための対応は今、決して十分とは言えない。しっかりとした中身のある法案を提出したい」と話しています。

健康への影響は

受動喫煙による健康被害について厚生労働省の検討会は、おととし報告書をまとめています。

それによりますと、受動喫煙による死者は、国内で年間およそ1万5000人に上ると推計されています。

受動喫煙は肺がんや脳卒中などを引き起こすことが科学的に十分推定できるとしていて、とくに子どもの場合は、ぜんそくのほか、赤ちゃんが寝ている間に突然死亡する「乳幼児突然死症候群」のリスクも高めるとしています。

日本禁煙学会「諸外国に比べ対策遅れている」

日本禁煙学会の作田学理事長は「日本の受動喫煙対策は諸外国に比べて遅れている」と指摘したうえで、今回の対策案で小規模な飲食店などは例外的に屋内喫煙を認めるとしたことについて、「過去に一部の国が面積で区切ったものの、規制の対象があやふやになり禁煙化が失敗した例もある。喫煙スペースを出入りする人たちが煙を振りまき、周りの人が受動喫煙の被害を受けるおそれもある」として例外を設けたことを批判しています。

そのうえで、「国などは完全禁煙に踏み切ろうという店に対し補助金などの優遇措置を設け禁煙化にいざなう必要がある」と指摘しています。

対策を迫られる居酒屋は

規模の大きな飲食店は、今後、受動喫煙対策を迫られます。
東京・新宿区にある居酒屋はビルの1階から4階までに合わせて200席余りを設けていて、現在はどの客席でも喫煙できます。

新たな受動喫煙対策によって屋内が原則禁煙となる可能性が高く、店では煙が漏れない「喫煙専用室」を設けることを検討しています。
ただその場合、今のように食事を楽しみながらたばこを吸うことができなくなるため、利用客が減らないか心配しています。

また店内に喫煙専用室を設けるには客席を減らしてスペースを確保しなければなりません。

居酒屋を運営する会社の丸尾聡エリア長は「仕事が終わったあとに、たばこを吸いながら楽しくお酒を飲みたいというお客様にとってはわざわざ喫煙専用室に行ってもらう必要があり、店に来てもらえる頻度が減るかもしれないという懸念はあります」と話しています。

店を訪れていた30代の男性客は「居酒屋はファストフード店などと違い、長時間、お酒や会話を楽しむ所なので、座席でたばこを吸えないのはつらいです。喫煙専用室に行くとその間、話が途切れてしまうので、その場が盛り下がらないか心配です」と話していました。

禁煙のビアホールも登場

新たな受動喫煙対策が実施されるのを前に、飲食店業界では店内を禁煙にする動きがすでに広がっています。

東京・銀座のビアホールでは、去年から店内の飲食スペースすべてを禁煙としました。それまでは喫煙席と禁煙席を分ける分煙を行っていましたが、仕切りがなかったため禁煙席にも煙が流れていました。

たばこを吸わない客は「店内の空気がきれいでビールの味もじっくり楽しめます」と話していました。

この店では、たばこを吸う客のために、喫煙専用室を設置していて、密閉された3畳ほどの狭いスペースに、灰皿を用意しています。たばこを吸う客は、テーブルを離れて喫煙室に向かわなければならず、ビールや料理とともにたばこを楽しむことはできません。

喫煙室にいた客からは「酒とたばこはセットだと思っているので、本当はビールを飲みながら吸いたいです」といった声や「堂々とたばこが吸えず肩身が狭いです」といった声も聞かれました。

ビアホールの豊田雅弘店長は「ビールや料理の美味しさが煙で邪魔されないよう飲食スペースをすべて禁煙にしました。社会が禁煙に向かう時代なので、ビアホールもそれに合わせていかなければならないと思います」と話していました。