屋内禁煙、都議選で各党前のめり 実現化は不透明

2017/7/1 1:49
日本経済新聞 電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18370770R00C17A7CC1000/ 

 

 

 五輪を3年後に控え、開催地の大きな課題となっている受動喫煙対策。2日投開票の東京都議選では主要政党がそろって「公共施設などを全面禁煙にすべきだ」とする公約を掲げる。

 国政レベルでは受動喫煙対策を強化する厚生労働省の健康増進法改正案に自民党が反発し、通常国会での改正法案提出は先送りになった。都議選では、国会の足踏みを尻目に都民ファーストの会、公明、自民や民進、共産、日本維新の会の各党が飲食店を含む公共施設などの原則禁煙化を訴える。

 ただ、現状の受動喫煙対策をみると、各党の公約通りに実態が動くかは不透明。足立区は2012年、庁舎や小中学校など区内の公共施設千カ所の敷地を全面禁煙化した。その結果、区庁舎では敷地外でたばこを吸う人が急増。路上喫煙への苦情が区に相次いだ。結局、14年、区庁舎に喫煙スペースを再設置することになった。

 禁煙条例を議論する都議会。議事堂内の食堂は禁煙席30席に対し、喫煙席は130席。議員控室がある5階に2カ所、事務部門が入る4階に1カ所の喫煙所がある。

 規制対象となる飲食店の反応も割れる。大手外食チェーンで全面禁煙の動きが強まる一方、個人経営の小規模店の不安は根強い。目黒区にある「炉ばた焼 大関」の店主、田中耕治さん(77)は「ただでさえ客足が減っているのに(禁煙にしたら)倒産する」。17席の小体な店の常連は半分が喫煙者だという。

 神奈川県の条例制定に携わった東海大の玉巻弘光名誉教授(行政法)は「受動喫煙の議論は、どれだけ周囲に影響を及ぼすかという検証をせず、感情的な内容になりがち。たばこを吸う自由もある。都議会には健康被害の程度を科学的に検証する冷静な議論が求められる」と指摘する。