吸ってもばれない? 通報で保健所急行 都条例Q&A 家族営業の飲食店も同居していなければ禁煙に

2018/6/30 日本経済新聞 朝刊 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO32307470X20C18A6L83001?n_cid=LMNST020 

 

 従業員を雇う飲食店を原則屋内禁煙にする東京都の受動喫煙防止条例が6月27日、都議会本会議で可決、成立した。罰則の適用を含め、2020年の東京五輪前に全面施行する。煙のない大会を目指し、国会で審議中の国の健康増進法改正案に規制を上乗せする。飲食店、消費者、取り締まりを担当する区市の保健所にどのような変化を与えるのか。詳しくまとめた。

■加熱式なら専用室で飲食が可能

 Q 飲食店はどんな対応が必要になるのか。

 A 従業員を雇っているなら、店の面積にかかわらず原則屋内禁煙にしなければならない。ただ、煙の漏れない喫煙専用室を設ければ、その中で飲食はできないが喫煙はできる。火を使わない加熱式たばこは健康への影響が明らかでないため規制を緩くし、専用室を設けて完全分煙にすれば飲食もできる。一方、従業員がいない店は禁煙、喫煙のいずれにするか選べる。都内飲食店の84%にあたる15万近くの店が規制対象になる。

 Q 家族で経営する店も多いが、規制の基準となる従業員の定義は。

 A 経営者と同居している家族は従業員に当てはまらない。同居していない家族や親戚が店で働く場合は従業員を雇っていることになる。

 Q 客には禁煙などの対応をどう伝えるのか。

 A 条例を一部施行する19年9月からはステッカーを店頭などに掲示する必要がある。主に3種類あり、禁煙か、喫煙可能か、喫煙と飲食が可能な加熱式たばこの専用室があるかどうかも示す。

 Q 中小規模の飲食店にとっては喫煙専用室の設置費の負担が重い。

 A 小池百合子知事は議会答弁で、喫煙専用室を設ける飲食店への支援を充実させる考えを示している。原則屋内禁煙の飲食店が専用室を設ける際、300万円を上限に費用の10分の9を助成する方針だ。ただ、都内には狭い飲食店が多く、喫煙室を設けるスペースがそもそもないとの懸念も業界から聞かれる。

■「シガーバー」は対象から除外も

 Q 飲食店以外に規制対象となる施設は。

 A 条例は自ら受動喫煙を防ぎにくい従業員とともに、子供の健康被害を守ることを主眼にしている。このため小中高校や保育所、幼稚園は敷地内禁煙にし、屋外の喫煙場所の設置も認めない厳しい内容にしたのが特徴だ。大学や病院、行政機関なども敷地内禁煙だが、屋外の喫煙場所は設置可能にした。ホテルや職場のオフィス、老人福祉施設などは原則屋内禁煙で、喫煙専用室があれば喫煙が可能だ。

 Q 屋外の喫煙場所とはどんなものか。

 A 国の法案と同様、屋外の一部の場所を区画し標識を掲示したものになる。国は詳細な基準を省令で示す方針だが、飲食店の喫煙専用室のように煙を完全に遮断する個室の必要はなく、天井などのない施設も対象にする方向で検討している。

 Q シガーバーも規制対象になるのか。

 A 喫煙場所を提供することを主目的とする施設は喫煙を認める。シガーバーのほか、たばこ販売店も想定している。

 Q シガーバーと居酒屋などの違いは。

 A 施設がたばこを対面販売しているかどうかが一つの基準になる。国は「喫煙目的施設」の基準についても、政令で詳細を別途定める。飲食サービスの有無や比重も検討材料になるとみられる。

■通報受けて保健所が駆け付け

 Q 罰則の適用を含め条例違反の監視、摘発はどう進めるのか。

 A 23区と町田、八王子両市は各区市の保健所が担当し、それ以外の市町村は都の保健所が対応する。客が飲食店などの喫煙できない場所で喫煙を続け、管理者が注意しても聞かない場合、保健所に通報する。駆けつけた保健所の職員が命令しても改善がなければ罰則を適用する。喫煙を禁じる場所に喫煙器具を設置したり、喫煙室に20歳未満を立ち入らせたりした施設管理者も対象になる。客、施設管理者のいずれも違反者には5万円以下の過料を科す。

 Q 都内には飲食店がたくさんあるが、保健所は対応できるのか。

 A 都議会の審議で、保健所は人材、財源に限りがあり、規制がどこまで実効性を持つのか疑問視する指摘もあった。国の法案は客席面積100平方メートル以下の飲食店を規制から外し、全国の飲食店の45%が規制の対象になる。一方、都の条例は都内飲食店の84%が対象で、規制する店舗が大幅に増える。従業員の有無の監視だけでなく、夜に通報があっても対応が可能かなど今後詰めるべき点も多い。

 Q 屋外の喫煙やポイ捨てを規制する自治体も増えている。

 A 五輪に向けて分煙施設の普及を後押しするため、都は区市町村による屋外の公衆喫煙所などの整備費も全額補助する計画だ。住民から条例の規制内容の相談に応じる窓口の設置費用も全額支給し、保健所の設置区市だけでなく、幅広く自治体の取り組みを支援するという。