ずいぶん後退した健康増進法改正案、いや喫煙容認法案ではないか

2018/2/1付  日本経済新聞 春秋 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26399650R00C18A2MM8000/  

 

 

 飲食店を開業するとき、まず知っておくべき「方程式」があるそうだ。この広さなら何席できるか。店舗面積と席数の関係である。盛り場の不動産屋によれば、ふつうの居酒屋だと厨房を除いた坪数×1.5が無理のない席の数だ。高級店は乗数を1以下にするらしい。

▼この式にならうと、厚生労働省が喫煙を認める店の上限として示した「150平方メートル」のイメージがよくわかる。厨房が3割としてホール部分は100平方メートルほど、つまり30坪だから45席は取れる。4人がけテーブル8卓に10人あまり座れるカウンター。そこそこの広さだ。東京都内の店の9割がこれ以下に収まるという。

▼星の数ほどある、こういう店を「小規模店」と見なして受動喫煙対策の対象外にするとは恐れ入る。既存店のみ、しかも「喫煙」「分煙」などの表示が前提というが、許容される店がこれだけ多いのではどこまで歯止めになろう。当初の30平方メートル以下からずいぶん後退した健康増進法改正案、いや喫煙容認法案ではないか。

▼かくも手ぬるくなったのは、もちろん自民党のせいだ。もっとも厚労省も高い理想を掲げておいてあっけなく転んだのだから、相当な無責任官庁である。ひょっとするとさらに緩めるために、店舗面積には厨房を含まず、などと言いだすやもしれぬ。永田町と霞が関の、骨抜きの方程式は常人の想像の及ぶところではない。