「たばこ休憩」なくし生産性向上へ 佐賀共栄銀行、全面禁煙導入

2019/4/19(金) 15:23配信 西日本新聞 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190419-00010013-nishinpc-soci 

 

 佐賀共栄銀行(二宮洋二頭取)が今月から、全ての店舗を全面禁煙にしている。行員の健康増進を図るためだけでなく、「たばこ休憩」をなくすことで生産性向上につなげるのが狙い。専門家は「全面禁煙の企業は全国で増えつつあるが、県内では一歩踏み込んだ試み」と評価している。就業中の全面禁煙は県内でも広がるのか。

 同行は1日から、佐賀、福岡、長崎の3県の全25店舗で全面禁煙を開始。建物内や敷地内だけでなく、社有車に乗車中も喫煙ができない。佐賀市の本店近くには、喫煙スペースがあるコンビニがあるが、「喫煙を目的としてコンビニ等の施設へ勤務中に出向くことを厳禁とする」との通知まで出す徹底ぶりだ。

 全面禁煙に踏み込んだ背景の一つに、昨年成立した改正健康増進法がある。受動喫煙対策を強化し、今夏から学校や病院などは「敷地内禁煙」となる。銀行の事務所などは来年4月から「原則屋内禁煙」だが、敷地内も禁煙としている佐賀共栄銀行は学校や病院並みの対応だ。

 残業時間の上限を規制する働き方改革関連法が今月1日に施行されたことも全面禁煙を後押しした。同行の冨永健司人事部長は「喫煙者はたばこを吸うために何度も離席するので生産性はどうしても落ちていた。『たばこ休憩』をなくせば残業も減る。社会的な嫌煙ムードもあり、思い切って導入した」と話す。

 愛煙家は全行員約300人の3割ほどという。肩身が狭くなっていそうだが、受け止めは意外にも前向きだ。喫煙歴約30年になる50代の男性部長は1日3回のたばこ休憩を屋外の喫煙スペースで取っていたが、「今はなくても平気」と言う。「吸わなくてもいいのに、単なるルーティンになっていたのかな」

 多い時には1日2箱を吸っていた50代の男性課長は、マイカーでの通勤時間が貴重な紫煙タイムに。「帰りの車で早くたばこを吸うために仕事の効率化を求めるようになった」と苦笑い。「いつか、やめようと思っていたので良いきっかけになった」と、これを機に喫煙をやめた行員もいた。

 全国の企業の禁煙状況を調べた帝国データバンクによると、全国約1万社から回答があった2017年の調査で、社内を全面禁煙とした企業は約22%に上った。「職場内がきれいになった」「業務の改善・効率化につながった」などの効果が報告された。

 受動喫煙の影響を研究している佐賀大の松尾正幸名誉教授は「従業員の健康管理や能率アップのための職場環境の改善は企業にとって避けられないテーマ」と指摘。「社員が健康になれば、社会保障費の負担低減になり、企業にもメリットがある。就業中の禁煙は今後さらに進むだろう」と話している。