<社説>受動喫煙対策に例外 健康守る意思あるのか

2018年2月3日 06:01 琉球新報 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-658360.html 

 

 たばこを吸わない人の健康を守るためには、万全な受動喫煙対策を講じねばならない。厚生労働省が発表した新たな受動喫煙防止のための対策案はその基本に反し、国民の健康を守る強い意思が見えない。

 新たな対策案はファミリーレストランなどの大手チェーン店や新規開業の飲食店を原則禁煙とした。その一方で、経営規模の小さな既存店で一定の面積以下の場合、例外的に喫煙を認める。
 世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会は2010年、「たばこのない五輪」の推進を掲げた。日本政府も20年の東京五輪・パラリンピックまでに喫煙規制を始めることにしている。だが、対策案は中途半端なもので、このままでは東京五輪は「たばこのない五輪」にはなり得ない。
 10年以降の全ての五輪開催地で、罰則のある受動喫煙対策がとられてきた。WHOの17年の資料によると、学校や医療施設、飲食店など人が集まる8種類の施設全てを屋内全面禁煙としている国は55カ国に及ぶ。
 日本は今回の対策が導入されても、禁煙施設は病院や学校、大学、官公庁など4種類にとどまる。遅れて対策をとる日本が対策面で先行する国よりも劣った対策しかとらないならば、受動喫煙対策後進国のそしりを免れない。国際社会から五輪開催の資格があるのか問われかねない。
 厚労省は当初、面積30平方メートル以下の店は例外として喫煙を認める方針だった。だが、自民党議員らからの反発を受けて、例外を150平方メートル以下に拡大する方向で検討している。
 民間シンクタンク「日本医療政策機構」の調査によると、20歳以上の男女の49・9%が店舗面積に関係なく全面禁煙を求めている。半数が全面禁煙を支持している状況を無視してはならない。
 東京都が昨年、都内の3千店以上の飲食店を対象に実施した調査で、150平方メートル以下の店舗が9割以上を占めた。ほとんどの飲食店が全面禁煙の対象にはならないのである。これで受動喫煙対策と呼ぶのは無理がある。
 厚労省案は経営規模の小さな店舗では店頭に「喫煙可」などと示すことを条件に喫煙を認める。たばこの煙が嫌な人は「入らないだろう」との発想である。だが、非喫煙者が顧客に喫煙可能な飲食店に連れていかれることなど、入らざるを得ない状況に立たされることは十分あり得る。
 一部の自民党議員からは「吸う権利を認めるべきだ」との声がある。だが、喫煙者のたばこの煙を吸わない権利もある。厚労省研究班の推計によると、受動喫煙が原因で年に1万5千人が亡くなっている。喫煙者も他人の健康を害することは望んでいまい。
 完全禁煙でなければ、受動喫煙は防げない。例外なき対策に改めるべきだ。