<東京NEWS 2018> (3)受動喫煙防止条例

2018年12月25日  東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201812/CK2018122502000102.html 

 

 「エポックメーキング(画期的)」「時代のメルクマール(指標)」-。

 十一月末の定例記者会見で、小池百合子知事はこの一年を振り返り、従業員のいる飲食店を原則禁煙とする都独自の受動喫煙防止条例が、六月に成立した意義を熱く語った。

 七月に成立した国の改正健康増進法では、客席面積百平方メートル以下の既存の小規模飲食店は喫煙可能とした。このため、規制対象の飲食店は国の法律では全国の45%だが、都条例では都内の84%と都の方が厳しい。

 都が先鞭(せんべん)を付ける形で、法律より厳しい規制を上乗せする動きが広がっている。千葉市は都と同様に、従業員のいる飲食店は客席面積にかかわらず原則禁煙に。二〇二五年に万博の開催が決まった大阪府や、既に条例があった兵庫県でも、国より厳しい規制を設ける検討を進めている。

 都の条例は来年一月一日、都民の責務などを定めた部分が先行して施行される。喫煙者は周りの人が受動喫煙しないよう配慮し、保護者は子どもの受動喫煙の防止に努めることを求めている。来年夏には学校や病院、行政機関が敷地内禁煙になり、東京五輪・パラリンピック前の二〇年四月から全面施行される。

 今後の課題は、どう実効性を持たせるかだ。条例が議論された六月の都議会では「中小飲食店の雇用は流動的で、従業員の有無の確認が困難」などの指摘が出た。歓楽街の新宿・歌舞伎町には、営業許可がある飲食店が一万軒近くある。違反をどうチェックするかなど、詰める部分は多い。

 都条例は、世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)が進める「たばこのない五輪」を実現するために制定された。だが、「条例が施行されれば世界標準になるかというと、そうではない」と、日本禁煙学会の作田学理事長は話す。

 都条例は加熱式たばこについて「受動喫煙による健康被害の実態が明らかでない」として例外扱いにした。作田理事長は「たばこ規制枠組条約の締約国会議で、加熱式たばこも紙巻きたばこと同様に規制すべきだと十月に決議された」と指摘。将来的に扱いの見直しが必要だと訴える。

 愛知県豊橋市は今月公表した条例骨子案で、加熱式も紙巻きと同じように取り扱うことを努力義務とした。「健康に及ぼす影響が不確かであれば、紙巻きよりも緩和すべきではない」との考えからだ。

 都は受動喫煙防止の新たな時代を開いたが、さらなる取り組みを続けることにも期待したい。