全面禁煙か、分煙継続か…7月から「敷地内禁煙」原則の大学、割れる対応

2019年1月22日 読売 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190121-OYTET50020/?catname=news-kaisetsu_news_kenko-news 

 

 改正健康増進法の成立により「敷地内禁煙」が原則となった大学で、キャンパス内を全面禁煙にするか対応が分かれている。以前から全面実施している大学では学生の喫煙率を大幅に下げる効果が表れている一方、キャンパス周辺での喫煙が増えて苦情が寄せられたことなどから、分煙を継続せざるを得ないケースも出ている。

 同法は2020年4月までに段階的に施行され、大学を含む学校や公共施設などは前倒しの7月から「敷地内禁煙」となる。だが、屋外については「人が通らない場所に喫煙所を設ける」「喫煙所の表示をする」など厚生労働省が示す分煙対策をとれば、例外的に喫煙が認められる。

 大分大(大分市)は改正法成立前の11年4月、全3か所のキャンパスを屋外も含め全面禁煙とした。12年には北野正剛学長主導で「大分大学禁煙推進宣言」を出し、たばこの健康被害を伝え、「全学生が非喫煙者となることを目指す」とした。教職員の職務ハンドブックにも受動喫煙防止の規定を盛り込んでいる。

 中心となっているのは、同大の保健管理センター。春の健康診断で学生約5600人の喫煙状況を調査。喫煙者には医師である同センターの所長が一人一人面談し、「卒煙」を勧める。希望する学生には、14年秋から設置している「禁煙外来」でニコチンパッチの無料提供や専門知識を持った保健師による2か月間の指導を実施。新入生にも入学時に喫煙を始めないよう指導を行う。

 その結果、13年度は医学部をのぞく学生の喫煙率が7%に上っていたが、今年度は3・88%に減少。教職員も徐々に減っているという。禁煙外来は現在までに延べ約450人が利用した。

 無煙環境推進担当学長特別補佐の今戸啓二教授は「今後も取り組みを続けていくには、教職員を含め、高い意識をいかに継続していくかが課題だ」とする。

 九州大(福岡市)は昨年11月に全面禁煙を決定し、伊都キャンパスのほか北海道の実習施設などまで含めた計50か所の喫煙所を夏までに撤去する。例外を設けなかったことについて九大は「学ぶ場として環境を整備すべきだと考えた」と説明する。西南学院大(同)や福岡大(同)は現在検討中だという。

 一方、昨秋には全面禁煙に移行する予定だった中央大の多摩キャンパス(東京都八王子市)は、いったん計画を延期。2年間かけて喫煙所を15か所から2か所に減らしたが、学生約2万人の約5%が喫煙者であることや、大学周辺の路上喫煙や吸い殻のポイ捨てなどマナーへの苦情が寄せられたことを考慮し、喫煙所の設置を4月末まで延ばした。

 同キャンパスの学生課は「全面禁煙化を目指すことに変わりはない」としながらも、「喫煙所の撤去時期は未定」と説明する。

 3キャンパスのうち二つで分煙による喫煙を認めている鹿児島大(鹿児島市)も、「全面禁煙にした場合、周辺のコンビニ店やスーパーの喫煙所などでたばこを吸う学生が増えることが予想される」として、改正法施行後も分煙を継続する予定だという。同大人事課は「『学内にだけ禁煙環境を作ることができればいい』という考えをとらないようにしたい」とした。

 厚労省健康課は、「一番大切なのは、受動喫煙を防ぐということ。どちらを選ぶにしても、法にのっとった環境を確実に作ってほしい」としている。

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【改正健康増進法】  望まない受動喫煙の防止を図る目的で昨年7月に成立。学校、病院、行政機関などでは今年7月から敷地内禁煙となる。飲食店や多くの人が出入りする施設でも2020年4月から、専用の部屋のみで喫煙可能とする。ただし、既存の小規模飲食店は、店頭に「喫煙」などの標識を掲示すれば当面喫煙可とする。