社説 受動喫煙法案 健康被害防止へ実効性あるか

2018年01月31日 06時00分 読売 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20180130-OYT1T50146.html 

 

 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙による健康被害をなくす。2020年東京五輪へ向けて、実効性ある対策を講じなければならない。

 厚生労働省が、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の骨格を公表した。今国会に法案を提出し、20年までの施行を目指す。

 飲食店について、原則禁煙としつつ、喫煙専用室の設置を認めている。既存の小規模店では当面、「喫煙可」「分煙」などの表示を条件に喫煙を認める。面積150平方メートル以下などが想定される。

 喫煙可能部分には従業員を含む20歳未満の立ち入りを禁じる。加熱式たばこも規制対象とする。

 学校や病院、行政機関は、屋内全面禁煙とし、敷地内も喫煙場所を除いて禁煙とする。

 法整備の動きが再開されたことは前進だ。防止策を義務化する意義は小さくない。問題は、健康被害がどれだけ解消されるかだ。

 厚労省は昨年公表した当初案で30平方メートル以下のバーやスナックに限って喫煙を認めた。小中高校や病院は敷地内全面禁煙とした。

 今回の内容は大幅な後退だ。飲食店の規制を巡って、自民党内から当初案に猛反対の声が上がり、法案化が頓挫した影響だろう。

 東京都の調査では、今回の面積要件なら都内の飲食店の9割が喫煙可能になる。喫煙表示があっても、仕事上の付き合いなどで入店を避けられない場合はあり得る。店舗従業員の受動喫煙も残る。

 世界保健機関(WHO)は、屋内全面禁煙以外は効果がないと指摘し、喫煙室の設置にも否定的だ。飲食店やバーを含めて屋内全面禁煙を法制化した国は約50に上る。医療関係者らは「規制が緩すぎる」と、今回案を強く批判する。

 国際オリンピック委員会とWHOは、「たばこのない五輪」を推進している。東京五輪を控え、日本が対策に消極的だと非難される事態は避けねばならない。

 厚労省の「たばこ白書」などによると、受動喫煙は肺がんや脳卒中になるリスクを1・3倍に高める。深刻な健康被害を考えれば、屋内全面禁煙の範囲を可能な限り拡大していくことが望ましい。

 飲食店には、全面禁煙による客離れを懸念する声が強い。政府は健康被害の実態を国民に周知し、防止策への理解を広めるべきだ。業界の自主的な対応を促しつつ、段階的に範囲拡大を進めたい。

 日本では、自治体の条例などにより、屋外の喫煙規制が先行してきた。屋内禁煙化と一体的な受動喫煙防止策が求められる。