2017/1/30掲載、2/21更新 pdf版報告
タバコ業界からの政治献金の実態調査(第四報)(2010〜2015年)
子どもに無煙環境を推進協議会/日本禁煙学会FCTC監視委員会プロジェクト
【目的】
1.政治家や政党へ政治献金がなされ、政治資金規正法により、総務省や都道府県の選挙管理委員会に報告することが義務付けられている。
2.タバコ業界は政治連盟などを通して献金や寄附をしていて、それが我が国のタバコ対策の進展を阻害していると考えられるが、その実態を明らかにするため、前年に続き、公表されている6年間のデータを集計し解析した。
【方法】
1.総務省、及び都道府県の選挙管理委員会のホームページに掲載されている2010〜15年の政治資金収支報告書(1件5万円以上が報告を義務付け;毎年11月末までに公表される)を閲覧し、また領収書の開示請求をした。
2.タバコ業界の販売政治連盟及び耕作者政治連盟の収支の概要を集計した。
3.政治家及び政党・政治資金団体へのタバコ業界からの献金集計を試みた。
【結果】
(1)2010〜15年の全国たばこ販売政治連盟と支部の合計支出額は、概ね各々79、59、77、68、55、46百万円で(収入もほぼ同額に近い)、6年間で383百万円、年平均で64百万円あった。(表3−1(1))
(2)同年の全国たばこ耕作者政治連盟と支部の合計支出額は、概ね各々109、123、80、76、82、76百万円で、6年間で546百万円、年平均91百万円で、販売側より約1.4倍多かった。(表3−1(2))
(3)これら両者の連盟から国会議員(特定される自民党議員)への献金は、同年で各々10、4、15、15、20、3百万円、
6年間の累計で65百万円、年平均11百万円で、
・耕作者側(6年計48百万円)の方が販売側(同17百万円)より約2.8倍多く、
・国政選挙年の2010年と2013年(7月,参議院)、2012年と2014年(12月,衆議院)に
多かった。(表3−2)
(4)これら両者の連盟から特定される自民党議員を含めての自民党への献金は、同年で各々14、8、21、27、29、6百万円で、
6年間の累計で105百万円、年平均18百万円で、
・販売側(6年計54百万円)と耕作者側(同51百万円)はほとんど差はなく、
上記と同じく、国政選挙年の2010年と2013年(7月,参議院)、2012年と2014年(12
月,衆議院)に多かった。(表3−3)
(5)6年間で100万円を超える国会議員(いずれも自民党)が少なくとも10人はいて(元税制調査会長やタバコ族議員が多い;他に地方議員2人)、総額で少なくとも63百
万円はあった。(表4に献金を受けた議員名と献金額を額の多い順に記載した)
(議員数167人、国会議員は140人)
また、表4−2に、2010年〜2015年の年別の献金額を、6年間の合計金額の多い順に記載し、表4−3に、地域別(北から順に)及び年別に記載した。
(6)この内、自民党たばこ特別委員会の現委員(2016/11/15党の名簿掲載)の合計は、上記総額の少なくとも約32%(1,595万円)で、多くの現・旧委員が上位を占めていて(表4に黄の網目入れ)、野田毅・前党税調会長(現顧問)は305万円と突出額であった。(下記に再掲)
合計1,595万円 約32% 委員長 鈴木俊一 125 委員長代理 江渡聡徳 176 顧問 野田 毅 305 森山 裕 80 山口俊一 95 |
(7)自民党たばこ議員連盟の役員については、2014/2/20に公表された役員(その後公開されていない)に限って集計すると、
下記及び表4の下段に示すように、合計1,757万円(約35%)で、献金の上位を占めていた(表4に赤太罫線□□□センタリング)。
「自民党たばこ議員連盟」役員 (2014/2/20現在、その後公開されていない)
への6年間の献金額(万円) 合計1,757万円 約35%
会長 |
野田 毅 305 |
顧問 |
保利耕輔 26(引退) 麻生太郎 8 高村正彦
5 谷垣禎一 - 町村信孝(故人) - 伊吹文明 – 衛藤征士郎 50 |
副会長 |
石破 茂 60 石原伸晃
70 山口俊一 95 岸田文雄 97 坂本剛二 70(落選) 塩谷 立 - 高市早苗 30 田中和徳 - 金田勝年 70 宮腰光寛 50 江渡聡徳
176 西川公也 70 宮沢洋一 – |
幹事長 |
山田俊男 215 |
幹事長代理 |
金子恭之 122 長島忠美 60 |
幹事 |
竹下 亘 21 谷 公一 - 大塚高司 - 塚田一郎 20 中川雅治 5 |
事務局長 |
坂本哲志 50 |
(8)また、タバコ政策に関係の深い、衆議院・参議院の厚生労働委員会、及び財務(or財政)金融委員会に属する表4の議員は以下で、これら委員会でタバコ対策推進にブレーキをかける可能性が払拭できないことが懸念される。
(これら委員会所属は2017/1月末現在)
委員への6年間の献金額(万円) ※ は「自民党たばこ特別委員会」委員でもある(3人) 衆議院 厚生労働委員会 委員 江渡聡徳※ 176 高橋ひなこ 27 福山 守 26.6 冨岡 勉 20 穴見陽一 5 衆議院 財務金融委員会 委員 大野敬太郎※ 25 参議院 厚生労働委員会 委員 馬場成志 20 参議院 財政金融委員会 委員 大家敏志 15 三宅伸吾 15 三木 亨 15 藤川政人 10 愛知治郎※ 10 長峯
誠 10 |
(なおタバコ労組から民進党(旧民主党)議員への献金も見受けられたが、額は多くはなく、今回は未記載。)
【考察】
1.収支報告書では、全国たばこ販売政治連盟と全国たばこ耕作者政治連盟の両連盟の年間支出合計は6年で929百万円、年平均は155百万円で(表3−1)、
特定される自民党国会議員への年間献金合計は、6年で65百万円、年平均は11百万円(表3−2)
国会議員を含めた自民党への年間献金合計は、6年で105百万円、年平均は18百万円(表3−3)であった。
※6年間で100万円を超える国会議員(いずれも自民党)が少なくとも10人はいて(元税制調査会長やタバコ族議員、及びたばこ議員連盟役員が多い;他に地方議員2人)、総額で少なくとも63百万円はあった。(表4)(国会議員数140人)
※自民党たばこ特別委員会の現・旧委員、及び自民党たばこ議員連盟の役員への献金額は、多額を占めた(上記(5)〜(7)、表4)。献金を通して、タバコ税率の引き上げや喫煙率の数値目標設定、また受動喫煙防止の法制定の阻止などに議員を動か
し、国民の健康づくりの政策の進展を妨げている実態の背景が露わになったと考える。
※例えば、2017/2/15の自民党・厚生労働部会で、飲食店などの建物の中を原則とし
て禁煙にする法案について、関係団体から初めてのヒアリングを行ったが、
・朝日新聞報道(http://notobacco.jp/pslaw/asahi170216.htm)によれば、
「質疑の最終盤に発言したのは分煙派の重鎮、野田毅・前党税制調査会長。「たたき台は大幅に修正される前提だ。厚労相が言ったからといって通る自民党じゃない」とクギを刺した。」(野田毅議員(衆熊本二区)は6年間で305万円の献金あり)
・上記朝日新聞に分煙派として紹介されている石破茂議員(衆鳥取一区)は「受動喫煙防止強化に反対する緊急集会でも「人にはそれぞれの楽しみや価値観がある」と、喫煙派の立場からの意見を表明するなど」と紹介されているが(http://blogos.com/article/208444/)、6年間で60万円の献金ある。
・ブログ「受動喫煙対策法の厚生労働部会の各議員の発言に突っ込んでみた」(http://blogos.com/article/210543/)によれば、
「衛藤晟一(衆大分一区):「病院や学校の敷地内完全禁煙はいかがなものか。分煙の例外規定も必要ではないか。公道上の喫煙場所の確保も重要。小規模店舗の選択式、分煙、略式禁煙も検討すべき。」(衛藤晟一議員は6年間で143万円の献金あり)
など、献金を受けている国会議員の反対発言が少なくなかったように思われる。(献金を受けていても賛成している方はいるが)
※タバコ政策に関係の深い、衆議院・参議院の厚生労働委員会、及び財務(or財政)金融委員会に属する議員は13人はいて
(この内「自民党たばこ特別委員会」委員は3人)(表4)、これら衆・参委員会でタバコ対策推進にブレーキをかける可能性が払拭できないことが懸念される。
2.ただ収支報告書及び領収書では、両連盟ともに各本部と支部の間で資金交付や上納があり、また領収書の記載不備も散見され、献金の実態判明に至っていない。
3.議員パーティについて20万円以内は報告の義務付けがなく、またタバコ産業や関係者などからの献金の有無については把握出来ていない。
4.タバコの販売額が漸減していっているにも関わらず、タバコ税率上げや受動喫煙防止の法制定などで反対勢力が政党及び国会議員を動かす政治力の分析(党費納入や選挙動員などを含め)を、タバコ業界以外からの政治献金を含め、継続調査したい。
5.タバコ販売及び耕作の政治連盟から、タバコ族議員(及び政党)に献金がされているが、タバコ及び受動喫煙が国民の健康を害し、病気と早死の原因になっていることが医学的・科学的に明らかにされていることから、国民の健康や福祉の増進施策を負託されている国会議員は、タバコに関わる業界から献金や物的人的援助を受けるべきでなく、タバコ規制枠組条約(WHO-FCTC)第5条3項のガイドラインでもその旨が指摘されている*(下記に抜粋引用)。(業界・企業・団体等からの政治献金については早期の法的規制が望まれる)
*WHO
たばこ規制枠組条約第5条3項の実施のためのガイドライン
抜粋
「たばこ規制に関する公衆衛生政策をたばこ産業の商業上及び他の既存の利益から保護すること」 http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/dl/fctc_5-3_guideline_120506.pdf
(4) 政府関係者や職員における利益相反を避ける。
勧告
4.10 締約国は、政府又は準政府機関の関係者又は職員がたばこ産業から金銭又は現物による報酬、贈与又はサービスを受け取ることを許してはならない。
4.11 国内法及び憲法原則を考慮し、締約国はたばこ産業又はその利益促進を図っている組織から、政党、候補者、選挙運動に対する献金を阻止する又は当該献金を全面的に開示することを義務付ける効果的な措置を講じるべきである。
(6)「企業の社会責任」と称される活動等を含め、たばこ産業による「社会的責任」と称する活動を非正規化し、可能な範囲で規制する。
勧告
6.4 締約国は、政府又は公共セクターの政治、社会、経済、教育、あるいは地域関連等のいかなる部門に対しても、たばこ産業又はたばこ産業の利益の増進のために活動している者から献金を受け取ることを許可してはならない。(法律又は法的拘束力・強制力がある協定によって合法的に合意又は定められている補償金を除く)
《この調査報告は、日本禁煙学会学術総会で毎年してきている。》
この件の連絡・問い合わせ先 muen@silver.ocn.ne.jp