喫煙率とタバコ販売(消費)本数の対2000年の半減は,2010年より少し遅れて達成するでしょう

2007.8.19(2007.11.10 改訂)

日本禁煙学会雑誌2007年12月号に,この内容の投稿文が掲載されました。2007.12.1
  
「健康日本21」等の喫煙率と消費量の半減目標達成の推計試算
  −対2000年の10年後の半減は少し遅れても達成する可能性−
  http://www.nosmoke55.jp/gakkaisi/200712/index.html#nogami
 

JTから公表されている男性喫煙率 http://www.jti.co.jp/News/2006/11/20061122_01.html
http://www.jti.co.jp/News/2007/10/20071017_01.html  と,
日本たばこ協会から公表されているタバコ販売本数 http://www.tioj.or.jp/info/info18.html
を基に,過去9〜17年間のデータを近似曲線に当てはめて検討した結果,後述のように
ロジスティック近似曲線が最も推計外挿(予測,限定範囲で)に適しているように思われました。

参考データ 喫煙率推移 http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
        タバコ販売本数 http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd070000.html

1.
1999年〜2000年の健康日本21では,当初,喫煙率とタバコ消費量の半減目標が掲げられ
ましたが,JT・タバコ産業・業界の族議員を使った猛反対により,半減目標は見送りになり
ました。→ http://www3.ocn.ne.jp/~muen/kenkounihon21/kenkounihon21.htm

2.
2006年秋には,健康日本21の中間評価報告のパブコメがあり,喫煙率の低減目標を含め,
意見募集が行われた結果,低減目標は賛成多数でした。しかしJTはまたも猛反対をし,
裏舞台は不明ですが,厚生労働省側は,低減目標を見送り「やめたい人がやめる」という,
訳の分からない目標にしてしまいました。
http://muen2.cool.ne.jp/jyoho/jyoho.cgi?log=&v=64&e=res&lp=64&st=20 とツリー

3.
2007年4月1日の「がん対策基本法」の施行を受け,国の「がん対策推進協議会」は,「がん
対策推進基本計画」を策定し,当初,がん予防のために「喫煙率半減目標」が委員の提案
で盛り込まれる動きで,パブコメでも賛同の意見が多数寄せられました。
しかし,JTなどがまたも反対し,厚生労働省側は,委員の盛り込むべきとの意見を 封じ込め
て,喫煙率の半減目標を見送り,委員提案にあったタバコ税上げも消し去られてしま いまし
た。
http://muen2.cool.ne.jp/jyoho/jyoho.cgi?log=&v=75&e=res&lp=75&st=0 とツリー

4.
では,この「半減目標」の実態(実際の年推移の推計解析)はどうなのでしょうか?

結論1 男性喫煙率は,下の図1,及び表 1のように,
    健康日本21の2000年の男性喫煙率は53.5%だったので,
    減少推移を近似曲線に外挿推計すると,2012年までには 26〜27% くらいで,
    2年遅れくらいで男性喫煙率の半減は達成できそうです!!!
    ・これは厚生労働省の喫煙率調査(国民健康栄養調査)
     http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd100000.html
     で推計解析してもほぼ同様の結果で,2000年の男性喫煙率47.4%が,2012〜2013年には
     24%くらいで,2〜3年遅れで喫煙率は半減となりそうです。
   ・実際には禁煙推進は社会的に加速されているので,もっと早まる可能性は十分にあ
    ります。

結論2 タバコ の販売(消費)本数は,下の図3,及び表4のように,
    健康日本21の2000年のタバコ販売本数は 3,245億本だったので,この時の半減目標
    の2010年には,近似曲線に外挿推計すると,2,047億本くらいで,約37%の減少です
    が,2年遅れくらいでタバコ消費本数の半減(1,620億本)は達成できそうです!!!
   ・ただし,国産タバコの販売本数については,ここ2年間は急減していて,2000年の国産
    タバコの販売本数は2,431億本で,2006年には1,749億本の実績で,近似曲線に外挿
    推計すると,2008年には,1,290億本前後くらいとなり,2010年以前に半減となりそうな
    試算推移です。


5.
これら現実を冷静に眺めれば,JTなどタバコ業界や販売側が,半減の数値目標阻止にどんなに動
き,抵抗しても,現実の動きは止めようがないわけです
彼らの,健康日本21のときの大反対,中間評価の時の執拗な反対,がん対策推進基本計画にお
ける 猛反対,そしてそれらに何ら抗することなく,手をこまねいて受け容れた厚生労働省と日本政府
の有り様は何だったのでしょうか?
これからも同じことを繰り返し,2000年をベースにした半減が現実に 達せられた時,彼らはどのよう
なコメントを公表することになるのでしょうか?

6.
一方で,喫煙率とタバコ販売本数の漸減(特に国産タバコの急減)の現実を見れば,JTが半減目標
阻止に血まなこになるのも,「そうなんだ〜」ということだったのかも。
それでなくても急減しているのに,JTにすれば「半減目標を掲げて,国は傷口に塩を塗る気か」とい
う狼狽・怒りなのでしょう?(下記のギャラハー買収も必死の一手なのでしょう)

7.
JTが海外のギャラハー買収などに走り,財務省がそれを追認するのは,上記の現実ゆえでしょう
が,株価が一時的に上がっても,国際的にタバコ消費は加速的に減じていくでしょうから,破綻は
時間の問題でしょうし,泥沼にはまり込む前にJTは撤退を考えるのが真の企業責任でしょうし,
国もJT株を手放すのなら,今の内と思って,意見を申しあげているのですが…
 → http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku0610.htm#RANGE!A59


表1 男性喫煙率の減少と外挿推計(1)
(2007年までのJTデータによる、2017年まで、%)
男性喫煙率 推計中央値 95%下限値 95%上限値
1991 61.2      
1992 60.4      
1993 59.8      
1994 59.0      
1995 58.8      
1996 57.5      
1997 56.1      
1998 55.2      
1999 54.0      
2000 53.5      
2001 52.0      
2002 49.1      
2003 48.3      
2004 46.9      
2005 45.8      
2006 41.3      
2007 40.2      
2008   36.9 35.5 38.3
2009   34.3 32.8 35.8
2010   31.7 30.0 33.3
2011   29.0 27.3 30.8
2012   26.4 24.6 28.3
男性喫煙率の半減達成推計(対2000年比)
2013   23.9 22.0 25.9
2014   21.5 19.6 23.5
2015   19.2 17.3 21.2

「がん対策推進基本計画」における
男性喫煙率の半減達成推計(対2007年比)

2016   17.0 15.2 19.0
2017   15.0 13.3 17.0



表4 タバコ販売本数の減少と外挿推計
(2017年まで、JTは2010年まで、億本)
タバコ販売本数 推計中央値 95%下限値 95%上限値 JTタバコ販売本数 JT推計中央値 JT95%下限値 JT95%上限値
1998 3,366 3,361 3,308 3,403 2,576 2,598 2,531 2,644
1999 3,322 3,316 3,262 3,360 2,501 2,552 2,478 2,605
2000 3,245 3,261 3,205 3,309 2,431 2,491 2,407 2,555
2001 3,193 3,196 3,133 3,251 2,372 2,412 2,310 2,491
2002 3,126 3,120 3,042 3,188 2,290 2,310 2,177 2,416
2003 2,994 3,030 2,927 3,119 2,183 2,184 2,000 2,331
2004 2,926 2,926 2,787 3,044 2,133 2,031 1,778 2,235
2005 2,852 2,806 2,621 2,964 1,895 1,852 1,521 2,128
2006 2,700 2,671 2,430 2,875 1,749 1,651 1,247 2,009
2007   2,546 2,485 2,605   1,507 1,329 1,678
2008   2,390 2,313 2,464   1,290 1,085 1,497

JTタバコ販売本数の半減達成推計(対2000年比)

2009   2,223 2,130 2,313   1,076 856 1,310
2010   2,047 1,939 2,153   874 655 1,124
2011   1,866 1,745 1,987
2012   1,684 1,551 1,818 タバコ販売本数の半減達成推計
(対2000年比)
2013   1,504 1,362 1,648
2014   1,329 1,183 1,481
2015   1,163 1,017 1,319
2016   1,009 866 1,166
2017   868 730 1,021


2007.8.19 文責・解析:NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 理事 野上浩志
(2007.11.10 改訂)                     (NPO法人 日本禁煙学会 理事)

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