2008.2.10開催の日本禁煙推進医師歯科医師連盟・学術総会(横浜市)で発表した。

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タバコ税率を段階的に引き上げる施策のシミュレーション試算と論考

 

野上浩志(NPO法人 子どもに無煙環境を推進協議会)

 

【目的】ここ10年の男性喫煙率及びタバコ販売本数は減少し続けていて、この減少推移を近似曲線で外挿推計すると、これらの対2000年の半減は2012年までには達成される可能性があり(既報)、あわせてタバコ販売金額も減少し続けると推計される。一方、タバコ値上げはタバコ消費を減らすために有効な施策であることは既に明らかとされているので(世界銀行など)、上記推計曲線にはこれまでの値上げも織り込まれていると仮定して税収の推移を試算し、タバコ値上げがなければタバコによる税収は急減していくので、タイミング的に早急に値上げし、抜本的なタバコ対策と規制政策を進めるべきことを明らかにする。

 

【方法】タバコ販売本数の年度(以後年と表記)推移のデータは、日本たばこ協会の公表データで、一貫して明らかな減少が見られ始めた1998年以降のデータを用いて減少の推計をした。現行のタバコ税率及びタバコの平均価格は財務省の公表データを用いた。タバコ値上げ幅は、これまでの実績を参考に、隔年毎に段階的に価格の上げ幅を10%及び15%、10年間に亘って値上げした場合のケースを例にして推計試算を行った。

 

【結果】2007年の定価が1箱平均304円、定価に占める税率が62.3%に対し、隔年毎に5回税を上げた場合の9年目(2016年)には、10%値上げの場合の定価は1箱490円で、定価に占める税率は71.2%、15%値上げの場合は1箱612円で、税率は74.1%となり、いずれであってもタバコ対策先進国並み(価格1箱5ドル以上、税率は70%以上)になった。タバコの値上げがなければ、5年後の2012年には2007年に比べて34%の税収減で、10%値上げした場合には6%減の試算にとどまり、15%値上げした場合には9%増の試算となった。また10年後の2017年には値上げのない場合の税収は66%減で、10%値上げした場合には37%減で、15%値上げした場合には18%減にとどまる試算であった。

 

【考察】タバコを財政物資と捉える観点からだけでなく、包括的タバコ対策の重要項目として「喫煙率とタバコ消費を中長期的に減らして国民の健康福祉向上をはかる」ための効果的方法としてこの段階的なタバコの値上げ施策は、有用かつ現実的で、タイミング的に喫緊に進めるべきと思われた。 

 

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