2013年(平成25年)3月4日 大阪府議会議員 様 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 理事 野上浩志 〒540-0004 大阪市中央区玉造1-21-1-702 NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学 〒162-0063東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201 大阪府・受動喫煙防止条例の制定にお力をお願いします 謹啓、大阪府政への日頃のご尽力、誠にご苦労様です。お礼申しあげます。 現府議会において提案されております、標記の受動喫煙防止条例について、大阪府民、及び大阪府内で働く人たち、訪れる人たち、また海外からの観光客の大部分は(9割前後以上)、その制定を期待し、待ち望んでいます。大阪府民及び上記の人たちの健康を守っていただくことを託されておいでの大阪府議会議員におかれましては、大多数の期待に是非にお応えいただけますよう、お願い申しあげます。 1.府議会での、代表質問、及び一般質問をお聞きした限りでは、飲食店や宿泊施設の売上げ・利益減や、受動喫煙防止とはなり得ない「分煙」、また府の掲げる観光都市の外国からの客650万人目標に禁煙化はマイナスになる、など正しくない・事実誤認・誤解と思われるご発言など、とても残念に思っております。 2.喫煙及び受動喫煙が、早期死亡(損失寿命は数年以上)、健康寿命の短縮(数年以上;認知症などの要因ともなっている)など、健康破壊に第一の要因になっているエビデンスは既に蓄積していて、大阪府で現在策定中の「大阪府健康増進計画(案)」及び「大阪府がん対策推進計画(案)」、「大阪府医療費適正化計画(案)」でも、全般・随所にわたって、「喫煙が起因となるがんや循環器疾患、糖尿病、慢性腎臓病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、歯周病等による死亡を減らし、その減少により経済的損失や過剰な医療費を抑制でき医療費適正化の観点からもたばこ対策は重要です。影響が大きいたばこ対策と高血圧対策を特に重点化しつつ、他の取組とともに総合的に推進することとします。」とされているとおりです。 3.日本の喫煙者は、2012年で約2,200万人(男女計の喫煙率は21.1%)で、日本国民12,800万人の約17%で1/6に過ぎません(大阪府内においてもほぼ同様の割合です)。この10年間で、喫煙率(JT調査)は、男52.0%→32.7%と19.3%減、女14.7%→10.4%と4.3%減と、成人(男女計10,500万)に限っても、喫煙者は約20%で1/5に過ぎません。タバコの販売本数も、3193億本→1975億本と、1218億本(38%)も減ってきているのが現実です。 一方で多くの国民・府民が公共の場の禁煙を望んでいる(90%、非喫煙者に限れば96%)のは府の資料に示されているとおりです。意に反して、少数者の喫煙により日常的に受動喫煙の危害を被り、健康を損ない、そのリスクに曝され続けていることは誠に理不尽なことですし、とりわけ、日本産業衛生学会は2010年5月に、「タバコ煙」が発がん物質第1類=ヒトに対する発がん物質、として分類に追加しています。この発がんだけでも今回の条例制定は理に叶っているのではないでしょうか。 4.WHO-FCTC(タバコ規制枠組条約)の第8条ガイドラインは「技術工学的方法や「分煙」では受動喫煙は防止できない」ことを科学的根拠でもって明言しています。(その25.受動喫煙に安全レベルはない。また、第1回FCTC締約国会議で承認されたように、換気、空気清浄装置、喫煙区域の限定、などの工学的対策は、受動喫煙防止対策にならない。)空間分煙、時間分煙は全く対策とはなり得ないのです。 (禁煙でない飲食店内のPM2.5は、数百㎍/㎥に達しています⇒下記に追伸) 5.受動喫煙がなくなることによって、それまで利用を控えていた人たちや家族づれなどのレストラン・飲食店の利用増で、客は増加すると思われ、諸外国でその実績報告が数多くありますし、受動喫煙防止法・条例の施行で、心筋梗塞など受動喫煙や喫煙による急性疾患が直ちに減少したという海外報告も相次いでいます(その一例として、「禁煙法の施行後、早産リスクが有意に減少」を同封しました)。このことはガンやCOPDなど慢性諸疾患の減少でも期待されるところで、医療費の軽減だけでなく、国民・府民の健康増進と福祉に大きく寄与することとなります。 6.小規模な宿泊施設・飲食店で、既に自主的に「完全禁煙」にしている所が少なくありません。例えば「禁煙スタイル」サイトには、大阪府内で2000近くの飲食店が登録されていて(未登録を含めればもっと多い)、多くの店が繁盛している実態があります。 今回の条例案では、飲食店や宿泊施設は、ガイドラインにより自主的な禁煙を推奨されるのですから、それら民間の自主性、また利用客の選択動向を尊重し、世の動向を見守ることで、条例に賛同いただいてはいかがでしょうか。 7.松井知事も答弁で述べられているように「健康づくりの専門家集団(大阪府衛生対策審議会)が条例化を答申している、適切に運営していく」とのことですので、「公共性の高い施設と子ども・妊産婦を守ることを最優先に全面禁煙ルールを確立する」条例制定に、ご理解・ご協力、及びご賛同をよろしくお願い申しあげます。 受動喫煙防止条例の制定のお願いへの追伸(2013年3月6日) 禁煙でない飲食店内のPM2.5は、数百㎍/㎥に達しています 1.「PM2.5が70㎍/㎥ を越えたら外出を控えるように」と環境省が指針を公表しました。現にこれを越えた地域(注意喚起発令;熊本県)が3/5に報道されていましたが、完全分煙のファストフード店でも、タバコ煙粉塵(微粒子)でこれを越える例はいくらでもあり、正にタバコ煙粉塵(微粒子)は「危険」です〜 受動喫煙をなくすことが、私たちの健康を守るために最優先で実行しなければならないいことなのです。 2.PM2.5が多いと、心臓病や喘息、肺ガンなどが増え、死亡率が高まります。アメリカなどでの調査によると、PM2.5が10㎍/㎥増えると、心臓や肺の病気の死亡率が9%、肺ガン死亡率が14%、全死亡率が6% 増えます。大気汚染はすべての住民に影響しますから、PM2.5 がわずか10㎍/㎥増えるだけで、その地域の住民の死亡率が6% 増えるという深刻な事態が起きますし、受動喫煙のPM2.5の方が屋外のPM2.5より毒性が高い可能性が指摘されています。 3.多くの国では、下の表のガイドラインに沿って、大気汚染の評価と必要な警報を出しています。(右2列は、前に述べた世界保健機関のリスク評価に基づいた死亡率の増加度を示しました) 緑なら良好、黄色は弱者に影響のおそれ、赤は多くの
人々に危険というレベルです。北京周辺のPM2.5は最下段のHazardous(緊急事態)のレベルです。
4.全面禁煙の店舗以外は、ほとんどすべてでPM2.5が100㎍/㎥を越えており、自由喫煙の居酒屋などは、北京の最悪汚染時に匹敵するPM2.5レベルとなっています。日本では屋外の空気がだいぶきれいになったのに、生活の大半の時間を過ごす屋内では、タバコの煙で汚された空気を吸うことを強いられる利用客と従業員の方が沢山おられるのです。飲食サービス業における受動喫煙問題こそ、一刻も早く解決しなければならない日本の空気汚染問題です。日本のPM2.5問題の最大焦点は、毎日の大半を過ごす屋内で受動喫煙をどうなくすかにあります。
日本の様々な飲食サービス業店内(車内)のPM2.5濃度 以上の出典:日本では国内の受動喫煙が最大のPM2.5問題です
以 上 |