本会は以下の要請・政策提言を政府に提出しました。問い合わせは→ muen@silver.ocn.ne.jp 

NPO法人 日本禁煙学会も同趣旨の要請・政策提言を提出しています(pdf)

                       平成21年(2009年)10月1日

 

内閣総理大臣 鳩山由紀夫 様

国家戦略担当大臣 管 直人 様

厚生労働大臣 長妻 昭 様

財務大臣、税制調査会長  藤井裕久 様

行政刷新担当大臣 仙石由人 様、行政刷新会議 御中

 

 

国民の健康を受動喫煙及び喫煙から守る

抜本的施策についての要請・政策提言

 

                  

              NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会

                  会長  若林  明

                   540-0004 大阪市中央区玉造1-21-1-702

                   TelFax 06-6765-5020 http://www3.ocn.ne.jp/~muen/

                                  たばこれす  代表 春本常雄  住所:同上

 

 謹啓、私たちの団体は、非喫煙者の健康をタバコの危害から守る啓発と禁煙推進事業、また喫煙者の禁煙支援とサポートを全国的に行っているNPO団体です。

 今回2009/8/30投票の衆議院議員選挙で政党宛てにタバコ対策の公開アンケートを行い、政権与党となられた民主党、社会民主党、国民新党からも前向きのご回答をいただき

(参照→http://www.eonet.ne.jp/~tobaccofree/shuinsentoi0908.htm (A)、今後のタバコ対策の進展に期待しているところです。

新政権は政治主導の施策を進めることを唱っておられ、このことは国際的に大きく遅れをとってしまっている我が国タバコ対策においても必要不可欠のことかと存じます。

特に「WHOタバコ規制枠組条約」(FCTC)が2005年2月に発効し、関連するガイドラインが我が国政府を含む全会一致で採択されている(COP2COP3で)にも関わらず、旧政府(財務省、厚生労働省)は「ガイドラインには法的拘束力はない。」と頑なに強弁して、これらに対応した施策は殆ど静観(あるいは無視・無策・怠慢)状態が続いて、独り我が国が取り残されてきております政府には「たばこ対策関係省庁連絡会議」が設置されていますが(平成16615日)これもほとんど全く機能していません。

タバコ対策・禁煙推進施策には新たな財源はほとんど必要でなく、かえって国民の健康増進や健康寿命の延伸などにより豊かな国民生活を招来することは周知のところです。

私たちは旧政府及び省庁等に繰り返し抜本的なタバコ対策を要請・提案してきたところですが、政治主導により、これまで滞ってきた現状のタバコ対策の抜本的な転換と施策のために、特に以下の点を重点的かつ至急案件として要請・政策提言いたしたく、ご高配をお願い申しあげます。

A【タバコ対策の抜本的施策の要請・政策提言の概要】下記Bの内容概要

(1) 至急に「受動喫煙防止法」を制定し、受動喫煙の危害から国民の健康を保護してください。

(2) 国・政府関係機関(出先・外郭機関を含む)、及び国会・議員会館の「屋内禁煙」を周知徹底し、調整してください。

(3) タバコ税・価格を順次大幅に引き上げる施策を来年度税制予算に組み入れるよう至急の対応を進めてください。

(4)「たばこ事業法」を廃止し厚生労働省等への所管替えを進めてください。

(5) 財務省の財政制度等審議会たばこ事業等分科会は即刻に廃止してください。

(6) タバコのパッケージ等に健康警告のビジュアル(画像)表示と50%以上の面積での表示などCOP3で採択されたガイドラインに沿った抜本的な施策を進めてください。

(7) 若い女性向けタバコの製造・販売・広告、及びメントール(メンソール)や果実風味等添加は禁止してください。

(8) 以上のタバコ対策の諸施策・立案について政府に政策提言・協議の窓口を設けてください。

 

 

B【タバコ対策の抜本的施策の要請・政策提言の8つの具体的内容】

1.WHOタバコ規制枠組条約(FCTC)の受動喫煙防止ガイドライン(20102月までに「屋内完全禁煙」が定められ日本政府を含む全会一致で採択された)に沿って、日本でも至急に「受動喫煙防止法」を制定し、受動喫煙の危害から国民の健康を保護してください

・この「受動喫煙防止法」においては、例外のない「屋内完全禁煙」を義務づけ(過料・罰金で担保し)、「分煙」は不可とすべきと考えます。

2003年5月施行の「健康増進法」(第25条で受動喫煙防止の努力義務が定められている)は努力規定なので、特にレストラン・飲食店、職場、公道などの受動喫煙対策がなされていないか不十分である問題が残されています。

・この受動喫煙防止法が制定された各国において、直後から約20%の心筋梗塞死あるいは新入院が減少しています。逆に言えば、立法が遅れることで、多くの人命があたら失われているのです。

(参考文献:松崎道幸、受動喫煙とおとなの健康−:ファクトシート、禁煙学会誌20094月号

http://www.nosmoke55.jp/gakkaisi/200904/index.html#matuzaki

 

2.国・政府関係機関(出先・外郭機関を含む)、及び国会・議員会館については、上記と同様に、職員、国会議員、訪問者等の健康のために、率先垂範して「屋内禁煙」を周知徹底するよう(分煙不可)、政府として至急に決定し、また調整・要請いただくようお願いします。

 

3.タバコ税・価格を順次大幅に引き上げる施策を来年度税制予算に組み入れるよう至急の対応を進めてください。

・未成年者の喫煙防止、喫煙者の禁煙促進と喫煙人口の減少、がん対策とタバコの健康対策費(禁煙教育や啓発等)への充当、タバコ耕作農家の転作支援やタバコ販売店の転業支援充当などのために、タバコ税・価格を順次大幅に引き上げる施策が諸外国で実効性をあげており、タバコ規制枠組条約でも提案されています。

我が国のタバコ価格と税率は先進諸外国(1箱600円〜千数百円、税率は7080%前後)に比べて低く(1箱300円余、63%)、タバコ税収も減収・減益の一途をたどっています。

・本会の衆議院議員選挙での公開アンケート(A)に対し、民主党からのご回答は「タバコ税の位置づけを財源確保から、喫煙率を下げ、健康増進をはかるための価格施策に変えます。喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置付けます。具体的には現行の「一本あたりいくら」といった課税方法ではなく、より健康への影響を考えた基準で、国民が納得できるような課税方法を検討します。」とのことですが、この検討には時間がかかると思われますので、2010年度予算として暫定的に先進諸外国を参考に大幅に引き上げる施策を提案・提言します(昨年12月には20067月から3年ぶりに2009年度予算でタバコ税が引き上げられる決定直前まで行ったものの官邸サイドでNOとなった経緯が報道されました)。

 

「たばこ事業法」を廃止し国民の健康を重視したタバコ行政を日本政府として抜本的に進めるために、第三十九条(健康注意表示)、第四十条(広告に関する勧告等)なども含め厚生労働省等への所管替えを進めてください。

・本法は、第1条(目的)で「我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする」と唱っており、予算と徴税を所管する財務省下の法律であることもあって、タバコ規制枠組条約関連会議にも財務省が出席し主導するなど、我が国のタバコ対策の阻害要因となっております。

・健康日本21の中間評価やがん対策推進基本計画で、喫煙率の低減目標の設定がJTの強い反対や意見陳述で見送られ(20067年)、マスコミも批判的な報道をしましたが、このようなことが起こる基本要因は、「たばこ事業法」を財務省が所管し、200210月の財政制度等審議会たばこ事業等分科会「喫煙と健康の問題等に関する中間報告」が受動喫煙の健康危害を否定していて(国際的にも過去の遺物)未だにこれを根拠にしてタバコ行政を進め、JTの後ろ盾になっていることが指摘されるところです。

・本会の衆議院議員選挙での公開アンケート(A)に対し、民主党からのご回答は「たばこ税については財源確保の目的で規定されている現行の「たばこ事業法」を廃止して、健康増進目的の法律を新たに創設します。「たばこ規制枠組み条約」の締約国として、かねてから国際約束として求められている喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置付けます。…その際には日本たばこ産業株式会社(JT)に対するさまざまな事業規制や政府保有株式のあり方、葉たばこ農家への対応を同時に行います。」とのことですので、至急の対応をよろしくお願いします。

 

5.財務省の財政制度等審議会たばこ事業等分科会は、即刻に廃止してください。

・たばこ事業等分科会は、本会でも繰り返しこの公開を求めましたが、未だに非公開審議を続けており、かつ委員にはタバコ製造・耕作・販売など利益関係者が入っていて(利害相反原則に反する)、中立性が全く無いだけでなく、タバコ業界と癒着の審議を続けており、かつ財務省の御用・追認機関としてタバコ対策の阻害機関となっております。それは上記4項で指摘した200210月の財政制度等審議会たばこ事業等分科会「喫煙と健康の問題等に関する中間報告」が受動喫煙の健康危害を否定して未だにこれを根拠にしてタバコ行政が進めていることからも一目瞭然で、「FCTCを批准した日本政府の立場やWHO等の国際的知見(エビデンス)や国立がんセンターの疫学知見(エビデンス)と相容れないので、国際的にも確立している受動喫煙の危害を是認修正し、かつJTを指導すべき。」との本会などの是正の繰り返しの指摘要請を無視し続けています。

(参考→ http://www.eonet.ne.jp/~shiryo/kiseikaikaku906.htm

 

6.以下のタバコのパッケージ等に健康警告のビジュアル(画像)表示などFCTC-COP3で採択されたガイドラインに沿った抜本的な施策を進めてください。

・タバコのパッケージ等に健康警告のビジュアル(画像)表示と50%以上の面積での表示、及びロゴや色の制限(簡略な包装と白黒パッケージ)

・タバコ銘柄名にライト・マイルド等は禁止する

・タバコの店頭展示を制限する

・タバコの販売促進手段の自動販売機は禁止する

・コンビニ等タバコ販売店での年齢証明提示の義務づけ

・未成年者へのタバコ販売の禁止

・タバコ会社のスポンサーシップ・後援・広告販売促進の制限・禁止

・タバコのインターネット販売の禁止、など

(参考→ http://www.nosmoke55.jp/data/0811cop3.html

・喫煙者に喫煙のリスクを正しく伝える有効な方法として、また間違った販売情報・方法を遮断するために上記の義務化は必要不可欠です。

 

7.タバコ規制枠組条約(FCTC)前文の「…年少の女子その他女子による喫煙その他の形態のタバコの消費が世界的規模で増大していることを危険な事態として受け止め…」に則り、最近タバコ会社が製造・販売促進広告している若い女性向けタバコの製造・販売・広告、及びメントール(メンソール)や果実風味等添加は禁止すべきです。

・男性喫煙率が減少してきているにも関わらず、特に若い女性の喫煙は漸増が危惧されており、母性保護の観点からも、また胎児・乳幼児の健康からも深く憂慮され、かつ女性の離煙・禁煙は男性に比べて難しいケースが多いとされています(医学的エビデンスがあります)。しかるに若い女性をターゲットとしたタバコ(果実やキャンデー風味、メンソール添加、銘柄名やイメージ広告等)の製造・販売促進が大々的になされていて、特にメントール(メンソール)や果実風味等はニコチン依存性を強めるので、若い男性も含め依存が深く憂慮されるところで、早急な対処が必要とされ、アメリカなどでも禁止・規制する動きが国際的に広がってきています。

 

8.以上のタバコ対策の諸施策・立案については、本会としても詳細な資料を提供する用意がありますので、政府に政策提言・協議の窓口を設けていただくようお願いします。(タバコ問題以外の他の諸課題についても協議窓口が設けられることでしょうが)

 

以 上

 

追記:

NPO法人 日本禁煙学会からも同趣旨の要請・政策提言書が出されるかと存じますので、お取り計らいをよろしくお願いいたします。

 

 

参考1:【健康増進法2003年5月1日施行)

第五章 第二節 受動喫煙の防止

第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

 

参考2:【たばこ規制枠組条約2005227日発効)

第八条 たばこの煙にさらされることからの保護

1 締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する。

2 締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるたばこの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する。

 

参考3:【たばこ事業法】 1984年(昭和59年)810日公布
第一条(目的)
この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原材料としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

本法には、第三十九条(健康注意表示)、
第四十条(広告に関する勧告等)なども含まれている。

 

 

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