平成25年(2013年)2月25日 内閣総理大臣 安倍晋三 様 財務大臣 麻生太郎 様 厚生労働大臣 田村憲久 様 衆議院議長様 参議院議長様 政党代表者様 国民の健康を受動喫煙及び喫煙から守る抜本的施策についての要請・政策提言 NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学 http://www.nosmoke55.jp/ 〒162-0063東京都新宿区市谷薬王寺町30-5-201 Tel 03-5360-8233 desk@nosmoke55.jp 謹啓、私たちの団体は、非喫煙者の健康をタバコの危害から守る啓発と禁煙推進事業、また喫煙者の禁煙支援とサポートを全国的に行っているNPOの学術団体で、3000人を超える医師、歯科医師、看護師、薬剤師、弁護士など多職種の会で禁煙推進に取り組んでおります。 今回2012/12/16投票の衆議院議員選挙で政党宛てにタバコ対策の公開アンケートを行い、政権与党を含む各政党から前向きのご回答をいただき(参照→ http://www.eonet.ne.jp/~tobaccofree/syuinsentoi1212.htm
)、今後のタバコ対策の進展に期待しているところです。 「WHOタバコ規制枠組条約」(FCTC)が2005年2月に発効し、締約国会議(FCTC-COP2〜COP5)で、関連するガイドラインが我が国政府を含む全会一致で採択されているにも関わらず、 (参考→ http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/index.html ) わが国のタバコ対策は国際的に大きく遅れをとってますます取り残されてきております。 例えば、政府には「たばこ対策関係省庁連絡会議」が設置されていますが(平成16年6月15日)これもほとんど機能していない状態にあります。http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kaigi/ タバコ対策・禁煙推進施策には新たな財源はほとんど必要でなく、かえって国民の健康増進や健康寿命の延伸などにより豊かな国民生活を招来し、国民医療費や人的・社会的損失の大きく減少することは周知のことです。 この10年間で、喫煙率(JT調査)は、男52.0%→32.7%と19.3%減、女14.7%→10.4%と4.3%減と、日本の喫煙者は、2012年で約2,200万人(男女計の喫煙率は21.1%)で、日本国民12,800万人の約17%で1/6に過ぎません。成人(男女計10,500万)に限っても、喫煙者は約20%で1/5に過ぎません。タバコの販売本数も、3193億本→1975億本と、1218億本(38%)も減ってきているのが現実です。 私たちはこれまでも政府及び省庁等に繰り返し抜本的なタバコ対策を要請・提案してきたところですが、政治主導により、これまで滞ってきたタバコ対策の抜本的な転換と施策のために、特に以下の点を重点的かつ至急案件として要請・政策提言いたしたく、ご高配をお願い申しあげます。 記 A【タバコ対策の抜本的施策の要請・政策提言の概要】(下記Bの内容概要) (1) 至急に「受動喫煙防止法」を制定し、屋内等の全面禁煙を順次進め、受動喫煙の危害から国民の健康を保護してください。 (2) 国・政府関係機関(出先・外郭機関を含む)、及び国会・議員会館の「屋内禁煙」を周知徹底してください。 (3) タバコ税率と価格を順次大幅に引き上げる施策を税制予算に組み入れるよう至急の対応を進めてください。 (4) WHO-FCTC(タバコ規制枠組条約)をわが国も遵守するために、「たばこ事業法」の改廃(所管替えを含め)を進め、包括的な“たばこ法制(たばこ対策法)”を策定してください。 (5) 財務省の財政制度等審議会たばこ事業等分科会は即刻に廃止または改廃を進めてください。 (6) タバコのパッケージ等に健康警告のビジュアル(画像)表示と50〜75%以上の面積での表示などCOP3(2008年11月開催)のガイドラインに沿った抜本的な施策を進めてください。 (7) 若者向けのメントール(メンソール)や果実風味等添加をCOP4(2010年11月開催)のガイドラインに沿って禁止してください。 (8) 禁煙治療の保険適用の要件を、若年層や歯周疾患対応可能なように緩和してください。 (9) 昨年(2012年)11月に韓国ソウルで開催されたWHO-FCTCの第5回締約国会議(COP5)で全会一致で採択された「たばこ製品の不正取引廃絶のための議定書」を、日本も早期の署名・批准を進めてください。 B【タバコ対策の抜本的施策の要請・政策提言の9つの具体的内容】 1.WHOタバコ規制枠組条約(FCTC)のCOP2での受動喫煙防止ガイドライン(2010年2月までに「屋内完全禁煙」が定められ日本政府を含む全会一致で採択された;2007年7月開催)に沿って、日本でも至急に「受動喫煙防止法」を制定し、受動喫煙の危害から国民の健康を保護してください。 ・この「受動喫煙防止法」においては、例外のない「屋内完全禁煙」の義務づけを基本的方向として、先ず公共性の高い施設、及び子どもや妊産婦を受動喫煙から守ることを最優先に全面禁煙を推進し、受動喫煙の危害防止とはなり得ない「分煙」の義務化はせずに、段階的に全面禁煙義務化の対象施設を広げることとし、並行してこの危害についての店頭表示の義務化を進めてください(過料・罰金で担保し)。 ・この受動喫煙防止法が制定された各国において、直後から約20%の心筋梗塞死あるいは新入院が減少しています。逆に言えば、立法が遅れることで、多くの人命があたら失われているのです。またサービス産業でもこの義務化により、売上げは減ることなく反って増えることが示されています。 ・ロシア、中国、韓国、タイなどアジア諸国、中東や西欧諸国など、既に多くの国が「屋内全面禁煙」の法制定を実現してきています。 2.国・政府関係機関(出先・外郭機関を含む)、及び国会・議員会館については、上記と同様に、職員、国会議員、訪問者等の健康のために、率先垂範して「屋内禁煙」を周知徹底するよう(受動喫煙の危害防止とはならない「分煙」不可)、政府として至急に決定していただくようお願いします。 3.タバコ税率と価格を順次大幅に引き上げる施策を税制予算に組み入れるよう至急の対応を進めてください。 ・2010年10月からの1箱110円程度のタバコ税率と価格の引き上げにより、2011年度の税収、及びタバコ関連業界の販売収益は、前年度に比べ、14〜15%増えたことが公表されています(財務省及び総務省公表データによる)。 ・タバコ税率上げによる税収の一部を、タバコ耕作の転作支援やタバコ販売店の転業支援、喫煙者の禁煙促進・支援、未成年者・妊産婦の喫煙防止、受動喫煙防止、がん対策やタバコの健康対策費、国民医療費への充当等に充てる施策が我が国でも求められています。 (例えば、葉タバコ作付転換緊急対策事業として、2012年度に国から50.92億円の補助事業(補助率1/2)が実施されています http://www.maff.go.jp/j/budget/2011/pdf/hosei4_pr_p22.pdf ) ・2012/6/8に閣議決定された「がん対策推進基本計画」、及び2012/7/10の厚生労働大臣告示「健康日本21計画」の喫煙率の低減目標(10年で12%へ)や受動喫煙防止のゼロ目標等の実現のためにも、「タバコ税率の大幅な引き上げ」を盛り込むことは上記の施策の要になるものです。 4.「たばこ事業法」を改廃し、国民の健康を重視したタバコ行政を日本政府として抜本的に進めるために、第三十九条(健康注意表示)、第四十条(広告に関する勧告等)なども含め厚生労働省等への所管替えを進めてください。 ・本法は、第1条(目的)で「我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする」と唱っており、「たばこ事業法」を財務省が所管し、2002年10月の財政制度等審議会たばこ事業等分科会「喫煙と健康の問題等に関する中間報告」が受動喫煙の健康危害を否定していて、未だにこれを根拠にしてタバコ行政を進めている時代錯誤も甚だしいところです。 ・WHO-FCTC(タバコ規制枠組条約)をわが国も誠実に遵守するために、「たばこ事業法」の改廃(所管替えを含め)を進め、包括的な“たばこ法制(たばこ対策法)”を策定することは避けることのできない施策です。 5.財務省の財政制度等審議会たばこ事業等分科会は、即刻に廃止または改廃してください。 ・たばこ事業等分科会の委員には、タバコ製造・耕作・販売など利益関係者が入っていて(利害相反原則に反する)、中立性が無いだけでなく、タバコ業界と癒着の審議を続けています。例えば、上記4項で指摘した2002年10月(10年以上も前の)財政制度等審議会たばこ事業等分科会「喫煙と健康の問題等に関する中間報告」が受動喫煙の健康危害を否定して、未だにこれを根拠にしてタバコ行政が進めていることからも一目瞭然です。 6.以下のタバコのパッケージ等に健康警告のビジュアル(画像)表示などFCTC-COP3(2008年11月開催)で採択されたガイドラインに沿った抜本的な施策を進めてください。 ・タバコのパッケージ等に健康警告のビジュアル(画像)表示と50%以上の面積での表示、及びロゴや色の制限(簡略な包装と白黒パッケージ) ・タバコ銘柄名にライト・マイルド等は禁止する ・タバコの店頭展示を制限する ・タバコの販売促進手段の自動販売機は禁止する ・コンビニ等タバコ販売店での年齢証明提示の義務づけ ・未成年者へのタバコ販売の禁止 ・タバコ会社のスポンサーシップ・後援・広告販売促進の制限・禁止 ・タバコのインターネット販売の禁止、など (参考→ http://www.nosmoke55.jp/data/0811cop3.html
) ・喫煙者に喫煙のリスクを正しく伝える有効な方法として、また間違った販売情報・方法を遮断するために上記の義務化は必要不可欠です。 7.タバコ規制枠組条約(FCTC)前文の「…年少の女子その他女子による喫煙その他の形態のタバコの消費が世界的規模で増大していることを危険な事態として受け止め…」に則り、最近タバコ会社が製造・販売促進広告している若い女性向けタバコの製造・販売・広告、及びメントール(メンソール)や果実風味等添加は禁止すべきです。 ・男性喫煙率が減少してきているにも関わらず、特に若い女性の喫煙は漸増が危惧されており、母性保護の観点からも、また胎児・乳幼児の健康からも深く憂慮され、かつ女性の離煙・禁煙は男性に比べて難しいケースが多いとされています(医学的エビデンスがあります)。しかるに若い女性をターゲットとしたタバコ(果実やキャンデー風味、メンソール添加、銘柄名やイメージ広告等)の製造・販売促進が大々的になされていて、特にメントール(メンソール)や果実風味等はニコチン依存性を強めるので、若い男性も含め依存が深く憂慮されるところで、早急な対処が必要とされ、2010年11月開催のCOP4のガイドラインでも採択されたところで(参考→ http://www.nosmoke55.jp/data/1011cop4.html
)、アメリカなどでも禁止・規制する動きが国際的に広がってきています。 8.3項でも述べたように、「がん対策推進基本計画」、及び厚生労働大臣告示「健康日本21計画」の喫煙率の低減目標(10年で12%へ)や受動喫煙防止のゼロ目標等の実現のためにも、若年層(未成年者を含む)の禁煙治療のためにブリンクマン指数(喫煙指数)による制限(200以上)を撤廃し、歯科(歯周疾患対応)の禁煙治療の保険適用の新設する、1年を経過していない再治療にも保険適用を認める、治療成績向上のため受診回数・期間の制限を撤廃する、など、禁煙希望者を強力にサポートしてください。 9.COP5では、「たばこ製品の不正取引廃絶のための議定書」が全会一致で採択され、今後40か国の締結で発効することになっており、 以 上 |