2003年3月制作の新作紙芝居・絵本  紙芝居「タバコのない星のピコからのメッセージ」(大阪市,主婦,小原美知子)  紙芝居「モク星への旅」(香川県立高松工芸高校,王尾裕子)  絵本「ぼくのきらいなもの」(香川県立高松工芸高校,近藤早苗)     以下,本文を紹介します。 紙芝居「タバコのない星のピコからのメッセージ」(大阪市,主婦,小原美知子) 12場面 1. ぼくの名前はひろき。 いつもは仕事で忙しいパパもそろって、今日は久々にみんなそろって夕食を食べた。 ごはんが終わったあと、おばあちゃんはテレビの歌番組に夢中で、パパはタバコをふかしながら新聞を読みだした。 ママは、もうすぐ産まれる赤ちゃんのために、一所懸命編み物をしていて、おじいちゃんだけがぼくの遊び相手になって本を読んでくれていた。 時計の針が9時をまわって、もうそろそろ寝ようかなって思った時のこと― 突然「ガッチャーン」という大きな音がして、何やら奇妙な格好をした人らしい物が窓からとびこんできた。 ・ さっと、ぬく ・ 2. ひろき 「あなたは誰?」 びっくりしてぼくが聞いた。 ピコ 「アイタタ…。私の名前はピコ。 となりの星にいく途中、つい居眠りしておっこちちゃったんだ。ごめんね。」 ひろき 「となりの星?。じゃあ、もしかして…あなたは宇宙人!? ほんものの宇宙人!?」 突然の思わぬお客に、みんなは驚くやら喜ぶやら、家中もう大さわぎ。 ・ ぬ く ・ 3. おじいちゃん 「さぁさぁ、遠い星から来られた珍しいお客様だ。おばあさんや、ピコさんに熱いお茶を。いやいや、あなたはもう大人だよねぇ? そう、それならお酒の方が、あったまるだろうか。」 パパ 「それより、まずタバコを一服。」 おじいちゃんとパパが持ってきたお酒とタバコを見て、ピコは驚いたように言った。 ピコ 「ええっ、タバコ!? この星では、まだタバコを吸っている人がいるの!?」 ・ ぬ く ・ 4. ピコ 「ねぇ、君たちは、タバコにどんな害があるかってこと、知っている?」 ピコがぼく達に聞いた。 おじいちゃん 「そりゃぁ身体にはよくないだろうけど…、わしゃ、これがないとどうも落ちつかなくて…」 パパとおじいちゃんは、気まずそうに顔を見合わせた。 ピコ 「じゃあ、みんなにこれを見せてあげる。」 そう言うと、ピコの人さし指から不思議な光が出て、ぼくとパパはその光につつまれたかと思うと、みるみる小さくなって、おじいちゃんの身体の中に、あっという間に吸いこまれていった。 ・ さっと、ぬく ・ 5. ひろき・パパ 「わぁー、汚いY」 「なっ、なんだ、こりゃ!?」 黒くてドロドロしたものが、そこらじゅういっぱいへばりついていて、足もとにも、どっぷりたまっていた。 ピコ 「そこは、おじいさんの肺の中だよ。 1日に20本のタバコを吸っていると、1年間でコップ1杯分のタールがたまるんだよ。」 外の方からピコの声が聞こえてきた。 ぼくとパパは、肺の中がこんなにまっ黒だなんて、とても信じられなかった。 ドロドロしたタールを見ていたら、なんだか気持ちが悪くなってきた。 ・ ぬ く ・ 6. ピコ 「もう、出ておいで。」 ピコが、ぼく達を肺の中から出してくれた。 ピコ 「タバコを吸っている人の肺の中って、すごいだろ。」 ひろき 「うん、びっくりした。」 ピコ 「でもね、タバコを吸ってなくても、そばで煙を吸わされるだけでも、害があるんだよ。 ホラ、今度はママのお腹を見てごらん。」 ・ ぬきながら ・ そう言って、ピコはまた人さし指から不思議な光を出して、ママのお腹を指さした。 ・ ゆっくりと、ぬく ・ 7. ひろき 「あっ、お腹の赤ちゃんが見えたよ」 赤ちゃんの姿が見えて喜んでいたひろきの顔が、急にかわった。 ひろき 「パパ、パパ、見て。赤ちゃんがへんだよ。」 ママ 「まぁ、大変。とっても苦しがってるわ。」 ピコ 「さっき、君のパパが吸ってたタバコの煙を、ママと一緒に、お腹の赤ちゃんまで吸わされてしまったからなんだよ。 タバコの煙には、一酸化炭素がたくさんあって、成長にたいせつな酸素が血液で運ばれるのを、じゃましているからなんだ。それ以外にも、害のあるアンモニアや、タールや、ニコチンなどが、たくさん含まれているんだよ。」 とピコが言った。 ひろき 「パパ、早く助けてあげて。赤ちゃんがかわいそうだよ。」 みんな、お腹の中の赤ちゃんを心配そうにのぞきこんだ。 ・ ぬ く ・ 8. ピコ 「タバコの煙を吸わされるだけで、子どもたちは、肺炎や気管支炎になりやすいし、鼻や耳も悪くなりやすいんだ。 大人は、肺がんなどのがんになったり、心臓や脳の血管がつまってしまうなど、いろんな病気になりやすくなるんだよ。」 とピコは説明してくれた。 ひろき 「へぇー、ピコはよく知ってるんだなぁ。」 ピコ 「うん、私は、医者だから、健康について、いろんなこと知っているんだ。」 ・ ゆっくりと、ぬく ・ 9. ピコ 「もうずいぶん昔の話らしいけど、私達の星でも、タバコを吸っている人がいたことがあるんだ。 最初は、仕事のあいまや、気分転換に吸っていたらしいんだけど、だんだん吸う人も量も増えてきて、そのために、身体をこわす子どもや、病気で死んだりする大人がたくさん出てきたんだ。 おまけに空気まで濁ってしまって、これじゃいけないと思ったみんなが、力を合わせ、有害なタバコを、私達の星から追い出してしまったんだ。 今ではすっかり星はきれいになって、生まれかわってるよ。」 ・ ゆっくりと、ぬく ・ 10. ひろき 「ピコのおかげで、ずいぶんタバコのことがわかったね。」 パパ 「身体によくないとわかっていても、なかなかやめられなくて…。」 ピコ 「そうだね。自分の努力ももちろんだけど、家族の協力も、とっても大切なんだよ。」 ひろき 「じゃあ、タバコをやめれるように、ぼくがお手伝いしてあげるY」 ぼくがそう言うと、おじいちゃんとパパは顔を見合わせて苦笑いした。 ピコ 「そうだ。窓ガラスをこわしたおわびに、このタネをあげる。すてきなにおいのする、きれいな花を咲かせてくれるよ。 タバコが吸いたくなったら、その花の香をかぐといいよ。きっとタバコを吸いたくなくなるよ。」 ピコはぼくに、ちっちゃなブルーのタネを渡してくれた。 ・ ぬ く ・ 11. ピコ 「私は、となりの星にこのタネを持って行くところだったんだ。みんな待ってるから、早く行かなくっちゃ。」 ピコは庭におっこちていた小さな宇宙船にとびのりながら言った。 ピコ 「今度来る時は、タバコのない星に生まれ変わってるといいね。」 ひろき 「うん。ぼく達みんなで、タバコをなくすよう、がんばるよ。」 ピコ 「楽しみにしているよ。じゃあ、また。」 ニッコリ笑ってピコと宇宙船は、星空のかなたに消えて行った。 ・ ぬ く ・ 12. ピコのくれたタネはすぐに芽を出した。やがてきれいな青い花を咲かせ、何ともいえないさわやかなにおいを、部屋にただよわせてくれた。 ママのお腹も順調で、今にもパンクしそうなほど大きくなった。おじいちゃんもパパも、あれからすぐタバコをやめた。 時々、タバコが吸いたくてイライラしてる時があるけど、あの花をそっとそばに置いてあげると、おじいちゃんもパパもホッとひと息ついて、ニッコリ笑ってくれるんだ。 ―ピコとの約束は時間がかかるかもしれないけど、きっと守るから、ずっと見ててよね― 花を見るたび、みんな心の中でそう思った。 ぼくは優しく小さな声で呼びかけた。 ひろき 「おーい、お腹の赤ちゃん、早く元気に出ておいでー。」                おわり 紙芝居「モク星への旅」(香川県立高松工芸高校,王尾裕子) 14場面 1. ナレーター ロケットで地球を飛びだした僕たち。 エンジントラブルで、とある灰色の星へ不時着した。 ・ ぬ く ・ 2. 僕 「ゴホッゴホッ、何だいここは? 目が痛いし、せきも止まらない。」 私 「ゲホ、ゲホ、何なのかしら? 煙? いやなにおいがするわね。」 宇宙人 「こんにちは。ようこそ、モク星へ。 わたくし達は、この星に住むモク星人です。 歓迎します。どうぞ、こちらへ…」 ナレーター モク星人たちが、ぞろぞろとやってきた。 ・ ぬ く ・ 3. ナレーター 彼らの手にはゴーグルのようなものが…。 私 「ゲホ、ゲホ、ゲホ」 モク星人 「どうぞ、これをつけてください。」 ナレーター 言われるままに、そのゴーグルをつけると、目も、のども楽になった。 それから、何かがさっきと違うことに気づいた。 僕たちは声をそろえて言った。 私・僕 「色が違うY」 ・ さっと、ぬく ・ 4. モク星人 「そうです。この緑のきれいな世界が、本当のモク星なのです。 昔は、緑の山々に、青い空、色とりどりの花に囲まれて、皆で平和に暮らしていたのです。」 「ある時、とある宇宙船が、このモク星に、とんでもないものを落として行ったのです。」 ナレーター モク星人たちは、白い大きな丸太のようなものの前で止まった。 このゴーグルをしていても、目の前が…少しにごっている。 モク星人 「これです。」 僕・私 「これは…?」 ナレーター 少し変なにおいがする。 ・ ゆっくりと、ぬく ・ 5. ナレーター いままで見たこともないくらい大きな、もしかしたら、僕らのロケットより大きな…。 私・僕 「タバコ…?」 モク星人 「タバコ、というのですか。」 ナレーター 僕らはうなずいた。 モク星人 「この″タバコ が落とされてからというもの、この星は、煙だらけになってしまいました。 さぁ、こちらへどうぞ。」 ・ ぬ く ・ 6. ナレーター 僕たちは、大きな大きなタバコの火の側に連れてこられた。 僕・私 「熱い…。」 ナレーター モク星人たちは口ぐちに続ける。 モク星人 「皆、目や、のどの痛みに耐えています。 ぜん息や気管支炎になって、ずっと入院したままの子どももいます。 肺がんや心臓のぐあいが悪くなった大人もたくさんいます。 この煙をなんとかしようと、わたし達はいろいろと考えました。 この″スモーキングメガネ も、そうしてできたものです。 このおかげで、生活もだいぶ楽になりました。 ・ ぬきながら ・ けれど、この星は…ますます灰色に、きたなくなっていくのです。」 7. ナレーター いきなりモク星人たちの表情がかわった。 モク星人 「それもこれも、あなた達のせいなのでは…  ″タバコ を落としていったロケットは、あなた達のロケットと同じ形だったけど…」 ナレーター そう言いながら、僕たちを、タバコの炎の方へと追いやってゆく…。熱い…。 僕 「やめてくれよY 僕たち、そんなことはしていないよY」 私 「私たち、そんなことしていないわ。でも、このタバコ、どうにかしてあげたいわ…。 だってタバコの煙には、体に悪いアンモニアや、一酸化炭素、がんを引き起こすタールや、ニコチンなどが、たくさん含まれているのよ。 きれいなはずのこの星を、こんなに…こんなに汚いままにしておきたくないから…。」 ナレーター 熱さに耐えながら、僕たちは言った。 ・ ぬ く ・ 8. ナレーター 不意に、モク星人たちの動きが止まった。 モク星人 「あなた達、これをどうにかする方法、わからないかい?」 僕 「わからないけれど、手伝ってみるよ。」 ナレーター その時、僕のほほを、風が優しくなでていった。 僕 「風だY 風で吹き消してみよう。」 ナレーター 大きなうちわを用意して、モク星人と僕らでいっせいにあおいだ。 ・ ぬきながら ・ 全員 「せーのY」 9. 効果音 ビュゥゥゥゥー。バサバサバサ… ビュゥゥゥゥー。バサバサバサ… ビュゥゥゥゥー。バサバサバサ… ビュゥゥゥゥー。バサバサバサ… ビュゥゥゥゥー。バサバサバサ… ・ ぬ く ・ 10. 効果音 ボォッ ボォッ 全員 「わぁぁぁぁぁぁY」 モク星人 「だめじゃないかY さっきより煙がひどくなった…。」 僕 「おっかしいなァ…。火も大きくなっちゃった…Y そうだY 火だよY」 私 「火を消すのは…水Y みんな急いで、たくさん水を用意してY」 効果音 しゅるしゅるしゅる… ナレーター 川から、長い長いホースをつないで、水の準備が完了した。 モク星人 「ほんとにこれで、だいじょうぶか?」 私 「わかんないけど、今よりは、きっとよくなるはずよ。」 僕 「こんなタバコなんて、なくなっちゃえー、いけェーY」 ・ ぬきながら ・ 全員 「3・2・1、それー」 11. 効果音 シュウゥゥーじゅっ シュウゥゥーじゅっ シュウゥゥーじゅっ ナレーター 白くて何にも見えない…。 炎が少しずつ消え、煙も少しずつ、なくなっていった…。 ・ ゆっくりと、ぬく ・ 12. ナレーター スモーキングメガネがなくても、 もうまわりは少しずつ緑色に。 空気は少しずつさわやかに…。 空は少しずつ青く…。 ・ ゆっくりと、ぬく ・ 13. ナレーター いろんな色の花が咲いて、止まらなかったせきや、のどの痛みも、目の痛みも、なくなっていった。 子どもたちも楽しそうに、はらっぱをかけめぐるようになった。 モク星は生まれかわったんだ。 全員 「わぁぁぁぁーい、やったぁY」 ・ ゆっくり、ゆっくり、ぬく ・ 14. モク星人 「もう行くのか? また来いよ。」 「ぼくらの星の名前、キンモク星、とでも変えようかと思っているんだ…。」 互いに 「元気でねY」 ナレーター ロケットも直って、僕たちはまた出発だ。 みんなが見送ってくれた。別れはつらいけど…また会いにくるよ。じゃ、またね。                おわり ・ ぬ く ・ 絵本「ぼくのきらいなもの」(香川県立高松工芸高校,近藤早苗) 36頁 1. 僕のお父さんも おじさんも 2. 道ばたでは お兄ちゃん達が お話ししながら 吸っている 3. カフェでは お姉ちゃん達が お茶を飲みながら 吸っている 4. 大人は いっぱい タバコを吸う タバコには 身体に悪いものが たくさん含まれてる っていうのに 知らないのかなぁ 一酸化炭素とか アンモニアとか タールとか ニコチンとか… 5. 家の中では お父さんは テレビを見ながら 吸う 6. 公園では おじさんが 新聞を読みながら 吸う 7. 車に乗って 運転しながら  おばさんも 吸う 8. 庭で犬小屋を作りながら つりをしながら 音楽を聞きながら バスを待ちながら 歩きながら タバコを吸う… 9. どこに行っても 僕らは煙たい いっそのこと タバコなんて  なくなってしまえばいいのに… 10. 「タバコやめてよ。」 と言っても タバコを吸う大人達は ただひたすら 無視をする 聞こえないのかなぁ… 11. 大きなそうじ機で 吸いこんでしまおうか 12. 恐竜に乗って 追いかけまわそうか 13. それとも 洪水で 流してしまおうか 14. 僕は 怒ってるんだ 15. 目が痛くなって 赤くなったり  のどがチクチクして 風邪をひいたり ゴホゴホ セキがでて 止まらなくなったり 頭が痛くなって 気分が悪くなったり… 16. タバコって ほんとうに 嫌だなぁ……